司法書士は、高度な法律知識と実務スキルが求められる重要な資格です。
そのため、試験の難易度は非常に高く、毎年の合格率は3~5%程度です。
本記事では、司法書士試験の難易度が高い理由や、近年の合格率の推移、他の難関国家資格との難易度の違いを詳しく解説します。
また、司法書士試験の概要、司法書士の仕事内容や年収、将来性もあわせて紹介しています。
これから司法書士を目指す方は必見です。
司法試験・予備試験の通信講座・予備校おすすめランキング9選!料金費用の安さ・人気・評判を徹底比較【最新】
司法書士試験の難易度は高い
司法書士試験は、法律関係の資格試験の中でも特に難易度が高いとされています。
合格率は毎年3~5%を推移しており、他の国家資格と比べても非常に低いです。
ここでは、司法書士試験の難易度が高い主な理由を詳しく解説します。
- 合格基準点が3つあるから
- 相対評価だから
- 記念受験が多いから
【最新版】司法書士試験対策の予備校・通信講座おすすめランキング9選!料金や講座内容・合格実績を徹底比較
合格基準点が3つあるから
合格基準点が決められていることも、司法書士試験の特徴です。
司法書士試験は3つの問題に分かれており、それぞれに基準点が設けられています。
令和5年度(2023年)の司法試験のそれぞれの合格基準点は、以下の通りです。
問題 | 配点 | 合格基準点 |
---|---|---|
午前の択一問題 | 105点 | 78点 |
午後の択一問題 | 105点 | 75点 |
記述問題 | 70点 | 30.5点 |
参照元:法務省『令和5年度司法書士試験の最終結果について』
そして、1つでも基準点を満たしていなければ、不合格となってしまいます。
各分野を満遍なく勉強し、大きく分けて3つの問題をクリアしなければ司法書士にはなれません。
司法書士試験における「基準点」とは?合格点との違いも徹底解説!
相対評価だから
司法書士試験の判定は相対評価で合格者が決まることがポイントです。
受験者のうち高得点の上位者だけを合格にする方法を、相対評価といいます。
そのため、平均点や去年の合格点以上をとっていても安心できません。
受験する年によっては不合格となる可能性もあるでしょう。
記念受験が多いから
記念受験のために司法書士試験を受ける人も多くいます。
司法書士試験の受験には、特別な資格や学歴・経歴は必要ありません。
記念の受験者が多いことで、合格率が低く算出されることもあるでしょう。
司法書士を目指して勉強に力を入れている受験者だけを計算すれば、合格率はより高くなると予想できます。
司法書士試験の合格率は?
司法書士試験の合格率は非常に低く、毎年わずか3~5%にとどまります。
具体的な数値や傾向を知ることで、自身の対策を見直すきっかけとしましょう。
司法書士試験の合格率の推移
過去5年の司法書士試験の合格率は、以下のように推移しています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年度(2023年) | 13,372名 | 695名 | 5.2% |
令和4年度(2022年) | 12,727名 | 660名 | 5.2% |
令和3年度(2021年) | 11,925名 | 613名 | 5.1% |
令和2年度(2020年) | 11,494名 | 595名 | 5.2% |
平成31年度(2019年) | 13,683名 | 601名 | 4.4% |
参照元:法務省『司法書士試験』
直近の合格率は4~5%程度です。
それ以前の合格率は3~5%程度でしたので、合格率がやや上昇しています。
ただし、合格率は毎年推移するものです。
今後、3~5%程度に合格率が低くなることも想定されます。
そのため、司法書士試験の合格率は3~5%と考えて試験対策を進めておくと安心でしょう。
司法書士試験に独学で合格できる?難しい理由から独学合格に向けた勉強法を解説
司法書士試験の合格者の男女比率
司法書士試験の合格者数の内、男女比率は以下の通りでした。
年度 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
令和5年度(2023年) | 70.1% | 29.9% |
令和4年度(2022年) | 72.4% | 27.6% |
令和3年度(2021年) | 70.3% | 29.7% |
令和2年度(2020年) | 73.4% | 26.6% |
平成31年度(2019年) | 77.5% | 22.5% |
参照元:法務省『司法書士試験』
男性の割合は70~80%程度、女性の割合は20~30%程度です。
ただし近年の傾向では、女性の割合が上昇傾向にあります。
女性の社会進出やキャリア形成が進む中、司法書士試験の合格者は今後も女性の割合が増える可能性があります。
司法書士試験と他の国家資格の難易度を比較
司法書士試験は合格率が3~5%程度で、難易度が非常に高い難関国家資格です。
他の国家資格との難易度とも比較してみましょう。
国家資格 | 合格率 |
---|---|
司法書士 | 3~5% |
弁理士 | 6~9% |
社会保険労務士 | 4~6% |
土地家屋調査士 | 8~10% |
税理士 | 約20% |
行政書士 | 10%前後 |
司法試験予備試験 | 約4% |
司法試験 | 30~40% |
宅建士 | 15~17% |
各国家資格の合格率は、司法書士3~5%、社会保険労務士4~6%、税理士約20%、行政書士10%前後などです。
他の国家資格と比較しても、司法書士試験の合格率が非常に低いことがわかります。
国家資格によって試験形式や受験者数などは異なるため、合格率だけで難易度を図るのは難しいです。
しかし、司法書士の合格率を見るに入念な試験対策は必須と考えて良いでしょう。
司法試験と司法書士試験の違いとは?難易度や試験内容の比較・ダブルライセンスのメリットを解説
司法書士試験の概要
試験は午前の部と午後の部に分かれており、午前の部では憲法、民法、刑法、商法に関する筆記試験が出題されます。
午後の部は筆記験として不動産登記法、商業登記法、供託法、司法書士法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、不動産登記法記述式、商業登記法記述式が出題されます。
さらに筆記試験に受かると、別日程において口述試験が行われ、受験生の本人確認、司法書士の業務を行うための会話能力の確認が行われます。
司法書士試験筆記 午前の部(択一式)
司法書士試験の筆記試験のうち、午前の部(択一式)の出題内容は以下の通りです。
項目 | 問題数 |
---|---|
民法 | 20問 |
商法(会社法) | 9問 |
憲法 | 3問 |
刑法 | 3問 |
合計問題数 | 35問 |
以上の範囲から問題が出題され、多肢択一式で回答します。
試験時間は9:30~11:30の2時間なので、午前中に完了する試験です。
午前の部択一式は、全350点のうち105点を占めます。
司法書士試験筆記 午後の部(択一式)
司法書士試験の午後の部は、以下の範囲から問題が出題されます。
項目 | 問題数 |
---|---|
不動産登記法 | 16問 |
商業登記法 | 8問 |
民事訴訟法 | 5問 |
民事執行法 | 1問 |
民事保全法 | 1問 |
供託法 | 3問 |
司法書士法 | 1問 |
合計問題数 | 35問 |
問題のなかでも不動産登記法は多くの割合を占める傾向です。
試験時間は13:00~16:00の3時間で、記述式も同じ時間内で回答しなくてはなりません。
全350点のうち105点を占める配点です。
司法書士試験筆記 午後の部(記述式)
司法書士試験の記述式は、以下からそれぞれ1問ずつ出題されます。
項目 | 問題数 |
---|---|
不動産登記法 | 1問 |
商業登記法 | 1問 |
合計問題数 | 2問 |
午後の部択一式と同じ時間内で回答しなくてはなりません。
記述式は少ない問題数で、350点のうち140点と大きな割合を占めることが特徴です。
司法書士試験の受験資格とは
司法書士試験は受験資格がありません。
学歴・職業・性別・国籍にかかわらず、誰でも受験できる国家資格です。
そのため、記念受験をする方も多く、受験者数が多い傾向にあります。
試験の合格率は3~5%ですが、本気で司法書士試験合格を目指している方の合格率はもっと高いと言われています。
司法書士試験合格に必要な勉強時間は3,000時間
司法試験合格までに必要な勉強時間は3000時間程度と考えてください。
最低でも週6日、1日4時間の勉強を進めることをおすすめします。
ただし個人の勉強方法や、講座の受講などによって、必要な時間は左右されます。
効率よく勉強できる人であれば、2000時間程度で合格する人もいるでしょう。
司法書士試験の合格に必要な勉強時間は?勉強時間の作り方・合格する方法を解説
司法書士試験に合格するための勉強法
司法書士試験に合格するためには、効率的で効果的な勉強法が求められます。
以下のポイントを押さえた勉強法を実践することで、合格への道が開けるでしょう。
- 主要科目と時間配分を考える
- 過去問を解いて攻略法をつかむ
- 繰り返しの勉強法で記憶を定着させる
- 独学でも効率の良さにこだわる
- 通信講座を活用する
主要科目にかける時間配分を考える
主要科目にかける時間配分を考えましょう。
主要4科目と呼ばれる以下の点数配分もチェックしてください。
- 民法
- 不動産登記法
- 商法(会社法)
- 商業登記法
どれくらいの時間を1問にかけても問題ないのか、実際に計算することでペースが分かりやすくなります。
時間配分を設定したら、身に付くように時計を見ながら勉強を進めましょう。
過去問を解いて攻略法をつかむ
試験問題の攻略法は、過去問にヒントがあります。
まずは複数年分の過去問に繰り返し挑戦してみましょう。
試験の合格に必要な知識や出題傾向が分かりやすくなります。
どのような問題が出たのか過去問を洗い出しましょう。
過去問を繰り返し解くことで、問題文にも慣れが生まれます。
繰り返しの勉強法で記憶を定着させる
司法試験には、記憶を定着させる勉強もおすすめです。
理解力や記憶力を強くすれば、合格に近づけるでしょう。
覚える量や範囲が多いことも、司法試験を受験するときの注意点です。
知識に不備が無いように、まんべんなく勉強してください。
独学でも効率の良さにこだわる
独学で司法試験に挑むことも可能です。
ただし、効率の良い勉強をしましょう。
司法試験範囲の11科目をカバーするためには、計画的に進めることが重要です。
ある程度の時間を確保しつつ、理解や記憶するための勉強をしてください。
効率の良い勉強方法に悩んだら、講座を受けるといった対策をとってもいいですね。
通信講座を活用する
独学が不安な方は通信講座を活用してみましょう。
通信講座を活用することで、時間や場所にとらわれず自分のペースで学習できます。
また、体系的なカリキュラムが組まれているので、資格試験合格に必要な知識を体系的に学ぶことができます。
専門知識がない人でも理解しやすいよう、図や表を多用したり、わかりやすい言葉で解説された教材が用意されていることも多いです。
さらに通信講座の最大のメリットは、疑問点があれば、講師に質問できる体制が整っている点です。
講師や受講生同士の交流を通じて、モチベーションも維持しやすいでしょう。
おすすめの通信講座はアガルートです。
合格率は15.4%で、全国平均の約3倍を誇ります。
初学者向け・学習経験者向けどちらのカリキュラムもあるため、初受験の方も、2回目以降の受験者も自分のニーズに合わせて効率良く試験勉強できます。
合格したら全額返金される合格特典や、最大20%OFFになる割引制度があるので、リーズナブルに受講できる点も魅力です。
司法書士とはどんな仕事?
司法書士は私たちにとって最も身近な法律専門家であり、不動産登記・会社の登記・供託の手続代理・裁判所・検察庁・法務局への提出書類の作成・簡易裁判所における訴訟・調停・和解等の代理等の業務をおこなうための幅広い法律に関する専門的な知識が必要です。
司法書士の資格は「法務省」が運営管理を行っております。
法務省とは:
日本の行政機関の一つで、法務省設置法3条では法務省は基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護、国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図ることを任務とするとしています。
主な仕事内容
司法書士法に基づく国家資格であり、専門的な法律の知識に基づき主に登記手続き(不動産登記と法人登記)の代理業務を行っています。
登記手続きだけを行っている弁護士は少ないため、登記に関しては司法書士が専門性が高いです。
他にも裁判所に提出する公的な書類作成や、成年後見に関する手続きを行っており、また、認定司法書士に限り、目的の価額が140万円以下であれば簡易裁判所での手続きの代理が可能です。
共通して言えることは「国民の権利を保全する」業務を行うということです。
司法書士の平均年収・給料
司法書士の平均年収は約1,000万円程度です。
司法書士としてデビューした初年度は、年収240万~よくても360万程度。
その後、経験を重ねるごとに年収は右肩上がりに上昇します。
独立開業をした司法書士においても、499万以下が全体の70%程度を占めており、女性の場合199万円の年収を占める割合が最も多くなっています。
しかし、中には1,500万円以上稼いでいる人も1割ほど存在するため、努力次第ではあります。
司法書士の年収が低いのは本当?平均年収と独立開業の場合を徹底調査
司法書士に向いている人
重要な書類に関わることが多い為、仕事間違いをせずに正確に仕事をこなすことができる人、それだけでなく依頼された仕事を最後までちゃんとやり遂げるという責任感が持てる人が司法書士に向いていると言えるでしょう。
さらには相談者から「先生」と呼ばれる仕事となるので、お客様ありきのサービス業であり、顧客の要望、時には要望以上のものを形にして信頼を得るという意識を持つことが出来る人が向いているでしょう。
司法書士の現状と将来性
司法書士は試験の難易度と取得後の需要のバランスが良い部類に入るので、難関資格ではあるが取得後の就職環境は比較的恵まれているとされています。
また大手企業を中心に、社内に法務を専門に行う部署があるため、法律知識の豊富な社員、とりわけ司法書士資格を持っている人が欠かせないです。
そのため、企業法務などにおいては求人が多く、全体的に好条件です。
司法書士の資格があるからといって法曹界だけではなく、広い視野で活躍の場を探すのも一考の価値があります。
しかし近年はネットの普及等により仕事の減少もみられており、仕事の安売りも叫ばれています。
将来的には情報技術の進展により淘汰される?
最近はインターネットを調べれば、登記のやり方やひな形がいくらでも出てくるうえ、法務局に行けば、行政サービスの向上の一環として、登記の申請方法をていねいに教えてくれるため登記件数自体が減り仕事の減少がみられます。
さらにこの先の人口が減れば、不動産の動きも鈍くなり、会社も少なくなりと仕事の減少を加速させる将来も見えているため、生き残りが難しくなってくるかもしれないです。
司法書士としてのキャリアを長く続けるためには、専門性や独自性を高めたり、マーケティング戦略で顧客を掴むなど、様々な工夫や努力も必要となるでしょう。
司法書士試験の受験でよくある疑問
司法書士試験の受験には、多くの受験者が疑問を抱きます。
以下によくある疑問とその回答を紹介します。
- 司法書士試験の難易度はどれくらい?
- 司法書士試験の合格率はどれくらい?
- 司法書士試験の受験料はいくら?
- 司法書士試験は年何回開催される?
- 司法書士試験の合格発表はいつ?
司法書士試験の難易度はどれくらい?
司法書士試験の難易度は非常に高く、法律関係の資格試験の中でも最難関の一つです。
試験内容が複雑で広範な範囲をカバーしているため、受験者は幅広い法律知識と応用力を身につける必要があります。
また、合格率が低い理由には、合格基準点が3つあること、相対評価であること、記念受験者が多いことも挙げられます。
司法書士試験の合格率はどれくらい?
司法書士試験の合格率は例年約3~5%前後と非常に低いです。
合格率の低さを踏まえ、しっかりとした対策と準備を行うことが必要になります。
司法書士試験の受験料はいくら?
受験料は一律8,000円です。
申し込み時に、収入印紙で納付することが指定されています。
司法書士試験は年何回開催される?
毎年1回、例年七月の第一日曜日に筆記試験が行われ、筆記試験合格者のみ10月中旬に口述試験が行われます。
司法書士試験の合格発表はいつ?
筆記試験は試験から約三か月後にだいたい発表があり、その後の口述試験おいても試験から約一か月後に発表があります。
法務局または地方法務局での掲示、法務省ホームページ、合格者への郵送での通知により確認することができます。
司法書士の難易度は非常に高いため事前対策が必須!
司法書士試験は、多岐にわたる法律知識と実務スキルが求められるため、非常に難易度が高い試験です。
合格率は例年約3~5%前後と低く、多くの受験者が長期にわたり挑戦しています。
試験内容の複雑さや、膨大な勉強時間が必要なことから、計画的な事前対策が不可欠です。
効率的な勉強スケジュールを立て、重要な試験対策教材を活用し、模擬試験で実践力を養うことが合格への近道です。
また、各科目ごとの勉強法や過去問の活用も重要になります。
事前の徹底した準備で、難関試験を突破しましょう。