ワインやお酒が好きな方の中には「ソムリエ」「ソムリエール」という職業に憧れたことがある方もいるのではないでしょうか。
ソムリエとは、お客様の味の好みや料理に合わせワインを選び、最高のおもてなしを提供するのが仕事です。実際には、ワインの提供以外にも料理との組み合わせを考えたり、ワインの品質管理を行ったりすることもあります。
そんな魅力溢れるソムリエになるには、一体どのような資格が必要なのでしょうか。また、資格取得のための試験はどれくらいの難易度なのでしょうか。
今回は、ソムリエとはどのような仕事なのか、ソムリエになるにはどうすれば良いのかなど、試験の合格率や難易度を踏まえて解説します。
- この記事でわかること
- ソムリエとは?
- ソムリエの仕事内容
- ソムリエになるために必要な資格
- ソムリエ資格の難易度と合格率
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ソムリエとは?
まずは、ソムリエとは具体的にどのような仕事なのか、類似のワインエキスパートやワインアドバイザーとの違いを解説します。
ソムリエとは、お客様の好みや料理に合わせてワインを提供する、飲食店やバーなどで活躍している職業です。
ソムリエになるには、ただワインを提供するだけではなくワインの買い付け・仕入れからワインの在庫の品質管理にいたるまで、幅広い知識が必要になります。
ワインの産地や品種の知識はもちろん、ワイン以外の飲み物や料理に関する知識まで幅広く知っていなければなりません。また、ホテルなどの一流店にふさわしい接客技術も求められます。
ソムリエとワインエキスパート・ワインアドバイザーとの違い
ソムリエと類似する資格として、ワインエキスパートやワインアドバイザーがあります。
具体的な違いは、以下の点です。
名称 | ソムリエとの違い | 難易度 |
---|---|---|
ワインエキスパート | 実技能力審査の有無 | 同等 |
ワインアドバイザー | ソムリエの旧名称 | 同等 |
それぞれ詳しく解説します。
ソムリエとワインエキスパートの違い
ソムリエとワインエキスパートの違いは、実技能力審査を受けているか否かです。
ワインエキスパートの資格試験では筆記試験とテイスティング試験が実施されますが、ソムリエの場合はさらにサービス実践の能力も問われます。
どちらの資格も一般社団法人日本ソムリエ協会が認定しているものです。そのため、ワインエキスパートよりも実践的な資格がソムリエであると言えます。
ただし、ソムリエとワインエキスパートの試験内容には難易度の差がないため、実務経験は足りないがワインの知識を証明する資格が欲しいと言うプロが、ワインエキスパートを取得することもあるようです。
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ソムリエとワインアドバイザーの違い
ソムリエとワインアドバイザーの違いは、名称の違いのみです。ワインアドバイザーは、2016年からワインソムリエに名称変更が行われました。
どちらも同じ資格であり、資格試験の内容や難易度に違いはありません。
また、名称変更が行われて以降、ワインアドバイザーの資格認定は行われなくなっているため、資格取得を検討している場合は注意しましょう。
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ソムリエの仕事内容
ソムリエの仕事は、お客様の好みや料理に合わせてワインを提案・提供することだけではありません。
ソムリエが担っているのは、おもに以下のような業務です。
- ワインの入荷と品質管理
- お客様への提案・サーブ
- グラスの管理・新調
それぞれ具体的にどのような働きをするのか、ソムリエに求められる仕事内容や役割について解説します。
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ワインの入荷と品質管理
ワインの入荷と品質管理も、ソムリエの重要な仕事です。料理に合わせたワインを発注し、最適な温度・湿度で保管して最高の状態でお客様の元へ届けます。
ワインは、非常にデリケートなものです。
高価で希少価値の高いワインを提供しているお店の中には、温度を一定に保つために、ワインセラー(保管庫)への人の立ち入りを最小限に抑えるほど徹底しているところもあります。
ワインのプロであるソムリエは、ワインの提供のみならず、入荷から品質管理までを一貫して行う仕事です。
お客様への提案・サーブ
ソムリエは、お客様の好みや要望を踏まえ、料理とのマリアージュを楽しめるワインを提案・サーブする仕事です。
ワインの知識のみならず、食材や調味料、調理方法なども加味して提案を行います。また、「甘口」「〇〇年製のワイン」「リーズナブル」などの要望を受けることもあるでしょう。
膨大なワインの中から最適な1本を提案し、お客様に最高の時間を提供することがソムリエのもっとも大切な仕事です。
グラスの管理・新調
ワイングラスの管理やメンテナンス、新調も、ソムリエが行う仕事の1つです。
ワインは、香りや風味を損なわないよう、ワインの銘柄ごとにマッチするグラスの形状やサイズが異なります。
シャンパーニュは、細身のフルート型グラスで提供することが一般的です。赤ワインの中でもブルゴーニュワインには丸みの多きなブルゴーニュ型グラス、香り豊かな白ワインにはモンラッシェ型グラスを使用します。
ワインの風味を損なわないようにグラスを磨き上げ、最高のワインを最高の状態でサーブできるように準備しておくのも、ソムリエに欠かせない役割です。
ソムリエになるために必要な資格を紹介
ソムリエになるには、必ずしも資格や免許は必要ありません。しかし、無資格・未経験で採用してくれるところは、まずないと言っても良いでしょう。
そのため、ソムリエになるには、幅広いワインの知識やスキルがあることを証明するために、資格取得を目指す必要があります。
海外ではソムリエが国家資格となっている国もありますが、日本では国家資格ではなく民間の認定資格です。
「日本ソムリエ協会(JSA)」と「全日本ソムリエ連盟(ANSA)」が認定する資格があります。
組織 | 別表記 | 受験資格 | こんな方におすすめ |
---|---|---|---|
日本ソムリエ協会 | JSA | 一定の職務経験などが必要 | プロの方/国際的な称号を求める方 |
全日本ソムリエ連盟 | ANSA | なし(経験不問) | 未経験からソムリエを目指したい方 |
日本ソムリエ協会(JSA)の資格
「日本ソムリエ協会(JSA)」は、1985年から始まったもので、延べ約4万人もの認定者がいるソムリエ資格です。
ソムリエの象徴であるブドウ型のバッジは、日本ソムリエ協会で認定を受けたソムリエだけが身につけられます。
日本ソムリエ協会が認定しているワインに関する資格は、以下の4種類です。
- ソムリエ
- ソムリエエクセレンス・・・ソムリエの上位資格
- マスターソムリエ・・・ソムリエエクセレンスの上位資格(2014年に廃止)
- ワインエキスパート・・・一般のワインの愛好家のための資格
ワインエキスパート資格は20歳以上であれば資格取得することが可能ですが、ソムリエ資格は飲食店での実務経験がないと挑戦できません。
実務経験は、フルタイムで3年以上かつ受験時にも現職であることが条件です。
全日本ソムリエ連盟(ANSA)の資格
「全日本ソムリエ連盟(ANSA)」は、実務経験がない人でも受験できるソムリエ資格です。
1997年にスタートした比較的新しい資格で、認定者数は約3,000人ほどと日本ソムリエ協会の資格よりも受験者数は少ない傾向にあります。
- ソムリエ
- プロフェッショナルソムリエ・・・上位資格
- ワインコーディネーター・・・一般消費者向け資格
全日本ソムリエ連盟は日本ソムリエ協会と異なり、実務経験は必要ありません。しかし、求められる知識は遜色なく、どちらの資格を取得していてもソムリエとして働くことができます。
ソムリエ資格はどちらがおすすめ?
日本ソムリエ協会と前日本ソムリエ連盟の資格のどちらを取得すべきか迷ったときは、以下のポイントで判断すると良いでしょう。
資格の種類 | 選ぶポイント |
---|---|
日本ソムリエ協会(JSA) | 国際的な称号を求めている 実務経験を活かして活躍したい |
全日本ソムリエ連盟(ANSA) | 実務経験が3年未満だがソムリエ資格が欲しい 異業種からの転向を考えている 基礎知識から身につけたい |
それぞれのおすすめポイントや、選ぶ際の基準について解説します。
日本ソムリエ協会(JSA)の認定資格なら世界基準のプロを目指せる
ソムリエとして世界基準のプロを目指すなら、日本ソムリエ協会(JSA)の認定資格取得を目指しましょう。
日本ソムリエ協会(JSA)なら、世界最優秀ソムリエコンクールの日本代表選抜が実施されているなど、世界進出の機会もあります。
資格取得には、もっともベーシックなソムリエ資格でも3年以上の実務経験が必要になりますが、将来のキャリアアップを検討するのであれば、日本ソムリエ協会(JSA)の資格がおすすめです。
全日本ソムリエ連盟(ANSA)の資格なら実務経験がなくても取得可能
実務経験がない場合や他業種からの転向でソムリエを目指したい方は、全日本ソムリエ連盟(ANSA)の資格取得もおすすめです。
日本ソムリエ協会(JSA)のソムリエ資格は、基本的に試験のみが実施されます。
一方で、全日本ソムリエ連盟(ANSA)の資格は、連盟からe-ラーニングや通信コース、オンデマンド受講コースなどが提供されている点が特徴です。
基礎知識から学びたい方は、知識習得のための選択肢が豊富な全日本ソムリエ連盟(ANSA)を取得するのも良いでしょう。
ただし、資格試験のみが実施される日本ソムリエ協会(JSA)と比べて、全日本ソムリエ連盟(ANSA)で学習から始めると費用が高額になる可能性があるのでよく検討しましょう。
ソムリエ資格試験の難易度と合格率
ソムリエになるには資格を持っている方が有利ですが、資格を取得するには認定試験を受け、合格しなければなりません。
ソムリエの試験は、もっともベーシックなソムリエ資格でも半数以上が不合格となります。ソムリエ・エクセレンスに関しては、9割の受験者が落ちるほど難易度の高い資格です。
資格の種類 | 受験資格 | 合格率 | 難易度 |
---|---|---|---|
ソムリエ | 3年以上の実務経験 | 20%~40% | 高い |
ソムリエ・エクセレンス | 10年以上の実務経験 | 10%前後 | 難関 |
マスターソムリエ ※ | 20年以上の実務経験かつ功績あり | 名誉称号のため推薦による | 最難関 |
※2014年にマスターソムリエの呼称は廃止されました。
ここでは、日本ソムリエ協会(JSA)の資格試験の難易度や年度ごとの合格率の推移を紹介します。
ソムリエ資格取得の難易度は?試験情報・年収・給料・報酬相場を分析
ソムリエの資格の難関度
日本ソムリエ協会(JSA)が認証を行うソムリエ資格の難易度は、決して低くはありません。
試験は一次試験~三次試験まであり、すべてに合格できなければ、ソムリエ資格が取得できないためです。
試験内容は、筆記、テイスティング・論述、サービス実技と三次試験まであるため合格率も低く、難易度は高いと言われています。
また、試験日程も3日間に分けて実施されるため、長期的な試験対策が必要になるのもソムリエ資格の特徴です。そのため、ほかの民間資格と比べても、比較的難易度が高い資格であると言えます。
ソムリエの資格の合格率
「日本ソムリエ協会」が認定している「ソムリエ試験」の合格率は、20~40%前後です。
飲食店で資格取得者が多い「調理師免許」は国家資格ですが、合格率は60%~70%のため、ソムリエ資格の難易度の高さが伺えます。
また、ソムリエの上位資格「シニアソムリエ試験」になると、合格率は10%前後にまで下がるため、より狭き門を突破しなければなりません。
ソムリエ試験自体の難易度は、年度によっても異なる傾向があるため、合格率も年度によって大きな差があるようです。
年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|
ソムリエ合格率 | 8.2% | 12.9% | 11.3% | 12.2% | 8.8% |
ソムリエエクセレンス合格率 | 29.8% | 37.9% | 42.1% | 30.1% | 17.7% |
ソムリエ試験に合格するには
ソムリエ試験に合格するには、まず知識の習得が欠かせません。
勉強方法としては、ワインスクールや通信講座を受講したり、参考書で独学で勉強する、実務経験を積む、先輩ソムリエに師事するなどの方法があります。
とくに難易度の高い一次試験の筆記の合格率を上げるためには、スクールや通信講座での学習がおすすめです。
近年では、オンライン講座も増えているため、実務経験を積みながら在宅学習も取り入れたい方は、オンライン講座の受講を検討してみると良いでしょう。
ソムリエの就職先・月給・年収の目安
ここでは、ソムリエの活躍の場である就職先の例や、月収・年収の目安を紹介します。
ソムリエの就職先
ソムリエの一般的な就職先は、ホテル内のレストランやラウンジ、ワインを多く取り扱っているレストランなどです。
高級ホテル・レストラン以外には、ワインを豊富に取り扱うバーやワインショップなどでもソムリエとして働くことができるので、活躍の場が広がっていると言えるでしょう。
また、ソムリエとして認められるようになると、ワインに合う料理やタパス・ピンチョス(おつまみ)の開発協力・監修の依頼が入ることもあります。
ソムリエの月給・年収
ソムリエの年収の目安は、300万円~600万円ほどで、月給換算では約20万円~50万円です。
ソムリエを雇用しているレストランやホテルは、一定以上のグレードの飲食店であることが多く、給料自体は比較的安定している傾向にあります。
大手のホテルや高級レストランの場合、ソムリエ階級や実績によっては年収1,000万円以上になることもあるでしょう。
しかし、ワインの入荷や品質管理などもソムリエが行うため、店舗のオープン前からクローズ後にかけて長時間の労働になるケースも少なくありません。
収入を延ばすためには、資格のグレードアップを目指して勉強し続ける、コンクールに挑戦するなど、キャリアアップのために努力し続けることが大切です。
また、幅広い飲料に対応できるよう、飲料系の他資格(アクアソムリエ・日本酒ソムリエなど)の取得を目指す選択肢もあります。
アクアマエストロ・アクアソムリエ資格取得の難易度は?試験情報・報酬相場を徹底分析
ソムリエになるには資格取得を目指そう!
ソムリエになるために必ずしも資格は必要ではありませんが、資格を取得している方が就職で有利です。ソムリエとして働くにあたり、ワインに関する深い知識やマナーが必要になるため勉強は欠かせません。
ソムリエの民間資格は「日本ソムリエ協会(JSA)」と「全日本ソムリエ連盟(ANSA)」の2つの団体が認定しています。
どちらの資格を取得するかは、実務経験やスキルの有無に合わせて選択すると良いでしょう。
ソムリエは、ワインを通じてお客様に最高のサービスを提供することが仕事です。ソムリエとしてキャリアを築くためにも、まずは実務経験を積んで資格取得を目指すことから始めましょう。