スポーツトレーナーは、幅広い年齢層の男女が目指せる職業です。
冷静かつ相手の気持ちや状況に寄り添い、積極的にサポートができる人に適しています。
スポーツトレーナーは、コンディショニングコーチ、アスレティックトレーナーと呼ばれることがあるのも特徴です。
今回は、スポーツトレーナーとはどのような職業なのか、仕事内容や必要な資格、年収の目安などを紹介します。
また、スポーツトレーナーになるにはどのような方法で知識やスキルを身につければ良いのか、スポーツトレーナーを目指す方法も解説しているのでぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
■スポーツトレーナーとは?仕事内容と種類について
■スポーツトレーナーになるために必要な資格・学歴
■スポーツトレーナーの活躍の場・年収・将来性
スポーツインストラクターになるには?仕事内容・給料(収入)・必要なスキルなど
スポーツトレーナーとは
まずは、スポーツトレーナーとはどのような仕事なのか、仕事内容やスポーツトレーナーの種類について解説します。
スポーツ選手のサポートをする仕事
スポーツトレーナーは、スポーツ選手のコンディションを管理し、適切なトレーニングによって常に質の高いプレーやパフォーマンスができるよう指導・サポートする仕事です。
トレーニングを指導するだけでなく、ケガの予防や応急処置、テーピング等も行うため、医療に関する知識も求められます。
また、メンタル面のフォローや休養スケジュールの管理など、スポーツ選手のパフォーマンスを最大限に引き出すために活躍する陰の立役者です。
スポーツトレーナーの仕事内容と種類
スポーツトレーナーの仕事は多岐にわたるため、専門分野に応じていくつかの種類があります。
■アスレティックトレーナー:テーピングやマッサージ、ケガ予防、リハビリなどの指導をする
■コンディショニングトレーナー:コンディション調整、ウォーミングアップ・クールダウンの指導をする
■ストレングストレーナー:筋肉や骨の構造を理解し、競技ごとに最適なトレーニングを指導する
■フィットネストレーナー:スポーツジムなどで個別にトレーニング指導する
■メディカルトレーナー:ケガをした選手の身体機能回復のための食事やトレーニングを指導する
プロスポーツチームと専属契約している場合、それぞれの専門トレーナーが選手のサポートを行います。
大学や高校などのスポーツチームでは、アスレティックトレーナーとコンディショニングトレーナーを兼務することがあるなど、複数の指導を1人で行う場合があるのも特徴です。
スポーツトレーナーになるには?必要な資格と学歴
スポーツトレーナーになるには、どのような資格や学歴が必要なのか、スポーツトレーナーを目指す上で知っておきたいキャリアスタートの方法について解説します。
必須の資格はないがもっていると便利な資格はある
スポーツトレーナーになるために必須の資格はありません。しかし、筋肉や骨などの構造から栄養、医療に関する分野まで、幅広い知識が求められる仕事です。
必須ではないものの、目指しているスポーツトレーナーの専門分野に応じて、取得しておくと便利な資格はあります。
資格があることで専門的な知識やスキルを有している証明にもなるため、就職・営業活動で有利に働くでしょう。
具体的には、以下のような資格がおすすめです。
■認定アスレチック・トレーナー(JATAC-ATC)
■日本スポーツ協会アスレティックトレーナー
■JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)
■柔道整復師
■あん摩マッサージ指圧師
■理学療法士
■鍼灸師(はり師・きゅう師)
どの資格も、知識だけでなくスキルをもつ証明ができる点が特徴です。
実際にスポーツ選手の体に触れてマッサージやトレーニング指導を行う職業だからこそ、理論や経験に基づくスキルが求められます。
専門学校や大学で学べる
スポーツトレーナーに必要な知識や実践的なスキルなどは、専門学校や大学で学ぶことができます。
スポーツトレーナーの資格の中には「大学や専門学校で2年以上学んだ者」「医療系国家資格所持者」など、受験資格に基準が設けられていることがあるため、学校に通う方法が最短です。
また、プロスポーツチームと契約しているスポーツトレーナーになると、留学経験を積んでいる人もいます。
専門学校や大学でスポーツ科学やスポーツ生理学などの学科を専攻する方法のほか、柔道整復師や理学療法士などの国家資格取得を目指すのも良いでしょう。
スポーツトレーナーになるために必須の資格はないと言えど、活躍の場を広げたいのであれば積極的な資格取得をおすすめします。
スポーツトレーナーの主な就業先・活躍の場
ここからは、スポーツトレーナーの主な就業先や、活躍の場を紹介します。
プロスポーツチームや選手と契約する
スポーツトレーナーの花形といっても過言ではないのが、プロスポーツチームや選手との専属契約です。
契約しているチームや選手の試合に帯同しながら、日本中、世界中を飛び回ることもあります。
プロチームやプロ選手との契約になるため、スポーツトレーナーとしての高い知識や技術に加え、経験や実績も必要です。
プロスポーツチームや選手と契約する場合、エージェントを通じた紹介のほか、ヘッドハンティングや募集への応募などから就くことができます。
スポーツジムやフィットネスジムで就業する
スポーツトレーナーは、スポーツジムやフィットネスジムの社員や契約社員として就業する選択肢もあります。
いわゆるパーソナルトレーナーに近い働き方で、アマチュアスポーツ選手やボディメイクのトレーナーとして活躍できる方法です。
契約内容によって異なりますが、スポーツトレーナーとしての仕事のほか、ジムの清掃作業やマシンの調整などを任されることもあります。
地域イベントや学校・スポーツクラブからの依頼を受ける
地域イベントや学校・スポーツクラブなどから、スポット依頼や外部顧問の依頼を受けることもあります。
ケガを予防するための正しいスポーツやトレーニングの知識を広めたり、高齢者向けに健康寿命を延ばすための無理のないトレーニングを指導したりするようなケースです。
プロチームとの契約とは異なり、アマチュアチームとの顧問契約や定期契約を締結してサポートを行います。
スポーツトレーナーの独立について
スポーツトレーナーとして知識や経験を身につけたら、独立することもできます。
フリーのスポーツトレーナーとして複数のチームや選手と契約したり、自分でトレーニングジムを開業したりして活躍する方法です。
独立にともない、自力で仕事を取りに行く必要が生じるため、営業活動や経営に関するスキルも必要になります。
また、トレーニングジムを経営していく場合、マネジメント能力や集客戦略の立案も求められるでしょう。
一方で、独立して能力が認められれば、プロスポーツチームやプロ選手との人脈が生まれ、キャリアアップにつながる可能性があります。
スポーツトレーナーの勤務時間・やりがい・苦労ついて
ここからは、スポーツトレーナーとして働く場合の一般的な勤務時間や、やりがいを感じられるポイント、苦労・大変な面について紹介します。
スポーツトレーナーの勤務時間
スポーツトレーナーの勤務時間は、働き方によって異なりますが、1日あたり実働4時間~8時間程度が目安です。
ただし、プロチームやプロ選手との契約になると、遠征先への帯同や夜間対応などが発生することもあるため、この限りではありません。
契約状況によっては、24時間いつでもケガに対応できるように準備しておかなければならない場合もあるでしょう。
また、スポット契約やフィットネスジムの社員の場合は、一般的な会社員と同程度の勤務時間になることがほとんどです。
スポーツトレーナーのやりがい
スポーツトレーナーのやりがいは、サポートしているチームや選手の活躍を間近で見られることにあります。
伸び悩んでいる選手が活躍したり、ケガで離脱していた選手が無事に復帰できたりするのをサポートできるのは、ほかの職業では味わうことができないやりがいです。
また、地域のイベントや学校・施設での仕事を通じて、多くの人に体を動かす楽しさを伝えられる魅力もあります。
スポーツトレーナー苦労、大変なこと
スポーツトレーナーの仕事で苦労する面は、自分のサポートが必ずしもチームや選手の活躍につながるとは限らない点です。
どれだけ尽力しても、思わぬケガで離脱を余儀なくされたり、サポートや指導したことが逆効果になったりする場合もあるでしょう。
人の体や精神状態は一人ひとりまったく異なるため、それぞれの選手に合った寄り添い方や言葉がけが必要になります。
思うように成績が伸び悩んでいるとき、どのように寄り添うべきなのかを常に自問自答し続けなければならないのは、スポーツトレーナーの大変な面です。
スポーツトレーナーの年収・将来性について
ここからは、スポーツトレーナーの年収はどれくらいなのか、現状と将来性について解説します。
スポーツトレーナーの年収・給料相場
プロのスポーツチームと契約した場合、スポーツトレーナーの年収は300万円~1000万円ほどと言われています。
基本的に1年単位での契約となるため、選手からの評判が良くなかったり、チームの成績が悪かったりすると契約が更新されないケースもあるシビアな仕事です。
プロアスリートの専属トレーナーとして契約した場合は、年収500万円~800万円ほどが相場となっているようですが、1,000万円を超えるケースもあります。
日本スポーツ協会の調査によると、スポーツトレーナーの全体のうち、約4割にあたる人が年収1万円~100万円と回答しました。
大学や高校のチームと契約する場合は、チームの予算が限られていることが多いため、部員数にもよりますが、まとまった収入にはならないケースが多いようです。
引用:第一回日本のトレーナー実態調査|公益財団法人日本スポーツ協会
スポーツトレーナーの現状
近年、スポーツトレーナーを目指している人は増加しています。しかしながら、専属のトレーナーとして契約ができる人は経験と実績を持つ一握りの人たちです。
また、トレーナーの欠員が出た際、紹介やヘッドハンティングなどを通じて補充を行います。そのため、プロとの契約は公の場に求人が出されることは少なく、働き口が見つけにくいのが現状です。
まずはスポーツジムや整体院、整骨院でトレーナーや施術者としての経験を積むのが一般的なスポーツトレーナーのキャリアスタートの方法となっています。
スポーツトレーナーの将来性
スポーツチームや団体の数は限られているため、今後もスポーツトレーナーの働き口が急激に増えるということはまずないでしょう。
活躍の場を日本だけではなく、世界へと広げてみると新たな活躍の場を発見・開拓できるかもしれません。
一方で、さまざまなスポーツでプロチームやプロリーグが誕生しており、スポーツトレーナーの需要は少しずつ伸びているのも現状です。
チーム自体はアマチュアでも、活躍している選手個人にスポンサーがついてプロとして活動している選手もいます。
また、パーソナルジムがプロ以外の一般の人にも広く知られるようになった影響もあり、スポーツトレーナーは今後さらに活躍の場が広がっていくでしょう。
スポーツトレーナーに向いている人
スポーツトレーナーの職業に適性があるのは、以下の条件に該当する人です。
■洞察力・分析力がある
■コミュニケーション能力が高い
■プレッシャーに強い
■スポーツが好き
■新たな知識を貪欲に吸収できる
それぞれ詳しく解説します。
洞察力・分析力がある
スポーツトレーナーは、洞察力・分析力がある人に適している仕事です。
スポーツトレーナーはトレーニングプログラムを作成するだけでなく、その効果や改善すべき点があるかを判断しなければなりません。
選手本人に自覚がないクセを見抜き、必要な改善点を提案するなど、洞察力がなければ指導につなげられない場面も多いため、スポーツトレーナーとして重要な資質です。
また、実践したトレーニングの効果を分析し、より効率的かつ効果的なトレーニングへブラッシュアップすることも求められます。
コミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力の高さも、スポーツトレーナーには欠かせません。
選手の悩みや理想像に寄り添い、提案したトレーニング内容の有用性を説明する必要があるためです。
スポーツトレーナーは、一方的な説明に終始するのではなく、選手の意見にも耳を傾けながら双方向のやり取りを行います。
相手の意見を聞き、自分の意見を伝えることで信頼関係を結び、選手の活躍というゴールを目指して並走するためにも、コミュニケーション能力は必要です。
プレッシャーに強い
スポーツトレーナーは、自身の指導内容が選手の活躍という成果に表れます。
思うように選手の成績が伸び悩む状況が続いても、冷静に状況を打破する方法を提案できるような強い精神力が求められる仕事です。
また、選手自身のメンタルが揺らいだときにもスポーツトレーナー自身は取り乱したりせず、落ち着いてサポートしなければなりません。
体づくりのプロとしてトレーニングの提案を行いながら、選手の精神的な支えになる必要があるため、プレッシャーに強い人に適していると言えます。
スポーツが好き
スポーツトレーナーは、スポーツが好きな人に向いている仕事です。
スポーツトレーナーは、体づくりのプロフェッショナルですが、競技ごとに求められる理想の肉体像は異なります。
とくに、チームスポーツのポジションや選手の体格、得意なプレースタイルなども異なるため、スポーツが好きで競技ごとの知識がなければできない仕事です。
それぞれのスポーツを深く理解し、種目ごとに選手に必要なトレーニングの提案ができる人ほど、スポーツトレーナーとして重宝されるでしょう。
新たな知識を貪欲に吸収できる
新たな知識をどん欲に吸収できるのも、スポーツトレーナーに適している人の共通点です。
医学や効果的なトレーニングの方法は、つねに進化し続けています。科学技術の進歩や新たな発見など、最新情報にアンテナを張り、知識をアップデートできる人が求められる仕事です。
選手のケガや不調に対応するため、正確かつ最新の情報を素早くキャッチできる人なら、選手からの信頼も厚くなるでしょう。
スポーツトレーナーの主な著名人
スポーツトレーナーとして、国内外で活躍している著名人は少なくありません。
※敬称略
- 魚住廣信
- 木場克己
- 中村豊
- 森本義貴
- 吉田輝幸
- 高橋普美雄
- 磯有理子
- 谷沢順子
ここでは、とくに有名な8名のスポーツトレーナーそれぞれの実績や、現在の活躍を紹介します。
魚住廣信
魚住廣信は、阪神タイガースのコンディショニングアドバイザーや、ワコール女子陸上競技部のトータルコーディネーターを務めた、スポーツトレーナーという職業を確立させた人物です。
スポーツ外傷や障がいのコンディショニングにも精通しており、スポーツトレーナーのプロフェッサーと呼ばれています。
木場克己
木場克己は体幹トレーニングの第一人者で、サッカーの長友佑都選手や水泳の池江璃花子選手などへトレーニング指導を行ったことで知られています。
アスレティックトレーナー資格のほか、柔道整復師、鍼灸師の資格を有しており、幅広い競技選手のスポーツトレーナーを務めている人物です。
中村豊
中村豊は、プロテニスプレイヤーのトレーニングコーチとして知られています。錦織圭選手や元世界ランク1位のマリア・シャラポワ選手、大坂なおみ選手のフィジカルトレーナーを務めました。
持ち味は、フィジカルトレーニングのサポート・指導だけでなく、メンタルにも寄り添う心・技・体すべてのパフォーマンスを引き出すサポート姿勢です。
テニス以外にもゴルフやサッカーなど、幅広いプロ選手のサポートを行っています。
森本義貴
森本義貴は、プロ野球のイチロー選手を13年間にわたって支え続けたトレーナーです。もともとオリンピック出場を目指すほどの陸上選手でしたが、故障からトレーナーの道へ転向しました。
現在は、若手トレーナーの育成やスポーツトレーナーの地位向上、リカバリーウェアの開発協力、プロフゴルファーのトレーナーなど、幅広い活動を行っています。
吉田輝幸
吉田輝幸は、トップアスリートのスポーツトレーナーだけでなく、EXILEのパフォーマンスを支えるフィジカルトレーナーとしても活躍している人物です。
スポーツトレーナーながらMBA(経営学修士)をもつ経営者の顔ももち、現在はパーソナルトレーニングやトレーナー養成などにも力を入れています。
高橋普美雄
高橋普美雄は、スポーツトレーナーの中でも鍼灸師のプロとして知られる人物です。サッカーのロナウジーニョ選手やメッシ選手など、世界のトッププロにも施術を行った経歴があります。
大会出場危機に瀕したプロサッカー選手の怪我を2日間の施術で復帰へ導いた名士です。ブラジルに在住しながら、鍼灸師として教え子を数多く輩出しています。
磯有理子
磯有理子は、NFL(アメリカンフットボールリーグ)で初の日本人女性アスレティックトレーナーに就任した人物です。
就任後、所属チームのピッツバーグ・スティーラーズは見事スーパーボウル(優勝決定戦)制覇を成し遂げました。現在もアメリカの大学フットボールチームでトレーナーを務めています。
谷沢順子
谷沢順子は、日本人女性で初めてMLB(メジャーリーグ)のアスレティックトレーナーに就任した人物です。
元プロ野球選手の谷沢健一氏を父にもち、プロ野球選手のほか、陸上選手やリオ五輪の帯同トレーナーとして、たった10人で129名の選手の活躍を支えました。
2018年からはMLBチームのダイヤモンドバックスを支える、マニュアル・セラピスト兼トレーナーとして活躍しています。
スポーツトレーナーになるには知識やスキルを積極的に学ぶことが大切
スポーツトレーナーになるには、幅広い知識と専門的な技術が必要になります。それらを活かして、選手や指導する人たちに上手く伝えていくためのコミュニケーション能力も欠かせません。
スポーツトレーナーの専門分野によっては、役割や処置、指導する内容が細かく分かれるものの、知識やスキルを身につければ一人二役以上の働きが出来るスポーツトレーナーになることができます。
日本だけでなく、海外など世界でも活躍できる可能性もあるため、留学して勉強する方も少なくありません。
どのような勉強方法が自分に合っているか、どのように活躍していきたいかを考えながらスポーツトレーナーを目指して勉強し続けることが大切です。