正義感の強い方にとって、消防士は憧れの職業の一つです。
「将来は消防士になって火事や災害現場で人を救いたい」と考える方もいるはずです。
しかし「高卒だから消防士になるのは難しいのではないか」と諦めていませんか?
高卒の方でも入念な対策をすれば、消防士の採用試験に合格することは充分可能です。
この記事では、高卒の方が消防士になるために必要なスキルや消防士の採用試験などについて詳しく解説します。
高卒の方でも試験の内容を理解し、適切に対策すれば消防士を目指せるため、ぜひ最後までお読みください。
この記事で分かること
- 消防士の仕事内容
- 高卒でも消防士になる方法
- 消防士採用試験の内容
- 高卒で消防士を目指すメリット・デメリット
- 消防士に必要なスキル・能力
消防士(消防官)になるには?試験の難易度や合格率・採用倍率を紹介
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高卒が消防士になる難易度
結論から言うと、高卒でも大卒でも消防士はなれます。
消防士になるのに学歴は関係はないものの、待遇や試験の通りやすさなどを考えると高卒より大学を卒業し、それ相応のレベルの試験を受験するのがおすすめだといえるでしょう。
消防士採用試験の合格率は10%程度
消防士採用試験の合格率は10%程度です。
東京消防庁の消防官採用倍率は、令和5年度の区分をすべて合計すると5.0倍でした。
高い難易度は、消防士採用試験の特徴でしょう。
参照:東京消防庁公式サイト
高卒者向けの消防官Ⅲ類は採用倍率が高い
高卒者向けの消防官Ⅲ類は採用倍率が高い傾向と言えます。
ただし、学歴が高卒であっても「Ⅰ類」、「Ⅱ類」の試験を受験することができます。
「専門系」に関しても高卒でも受験可能ですが、法律、電器、建築、電子、通信、理系科目の専門知識が問われるため、高卒の方にとっては非常に難易度の高い試験となります。
消防士の職務を行う上でそれほど学歴は重視されませんが、受験した試験の区分によって初任給や昇格、昇進などに影響するため、当然「Ⅰ類」もしくは「専門系」の方が高待遇を受けられるといった違いがあります。
参照:東京消防庁採用情報サイト
消防士採用試験の概要
消防士になるには、各自治体が実施している「消防官採用試験」に合格しなければいけません。
消防士採用試験には「Ⅰ類」、「Ⅱ類」、「Ⅲ類」と「専門系」の4つの区分に分かれます。
募集要項から、Ⅰ類が大卒向け、Ⅱ類が短大卒向け、Ⅲ類が高卒者向けということが読み取れます。
2024年(令和6年度)の試験日程予想
消防士採用試験は、募集している自治体によって日程が異なります。
自分が希望する地域の試験日程をチェックしましょう。
おおむね5月中旬から9月下旬にかけて、全国の消防署で人員募集が行われます。
レスキュー隊と消防士の違いはどこにある?受ける訓練や年収は変わる?
消防士採用試験が難しいと言われる理由
消防士採用試験が難しいと言われる理由をまとめました。
- 消防士の募集人数に差がある
- 作文試験がある
- 適性やスタミナが必須
Ⅲ類希望の場合、高校卒業程度の知識は偏りなく身につけましょう。
理由①消防士の採用枠が少ない
例えば東京消防庁の職員募集では、大卒であるⅠ類では300人程度に比べて、高卒であるⅢ類は200人程度と少なめです。
募集している自治体によっても異なりますが、高卒と大卒とでは消防士試験の際の募集人数に差があるケースがあります。
その年度の倍率にもよりますが採用枠の多いところであればその分、受かる確率も上がります。
理由②求められるレベルが決まっている
第1次試験の教養試験の試験内容は、高校卒業程度など求められるレベルが決まっています。
論文の場合、高卒向けのⅢ類採用試験は作文試験です。
論文は社会問題や時事問題といったテーマに対する考え方、作文は消防士として働くことを想定した内容のものが問われる傾向にあります。
理由③適性やスタミナが必須
消防士として必要なスキルはずばりスタミナが必須です。
特に実際の火災現場に突入する消防隊にとっては足場の悪いところをよじ登る、瓦礫をどかす、火の中で捜索するといった想像以上にハードな業務内容になります。
時には消防隊自身が負傷することもあるため、自分の身を守りながら人命を救助する「スタミナ」と臨機応変に対処するための「判断力」が必要不可欠となるのです。
また、未然に火事や災害を防ぐため、実際に起ってしまったら被害を最低限に留めるため避難訓練や人命救助の指導などを消防士は正義感を持って行います。
消防士採用試験の難易度を他試験とランキングで比較
区分 | 採用倍率 |
---|---|
消防士Ⅲ類 | 8.3 |
警察官 | 6.1 |
陸上自衛隊(男性) | 3.9 |
海上保安官 | 3.6 |
消防士採用試験の倍率を他試験と比べました。
東京消防庁の消防官Ⅲ類の令和5年度採用倍率は8.3倍です。
ほかの公務員と比べても、消防官になるのは高い難易度であることが分かりますね。
消防士採用試験の科目・内容
ここでは、令和2年の東京消防庁の採用試験案内を例に消防士の試験内容についてご紹介します。
消防士になるには採用試験にパスしなければいけません。
また消防士の試験内容や試験日は自治体によって異なります。
なお試験内容は年度によって替わる場合もあるので必ず受験する年度の募集要項をチェックするようにしましょう。
1次試験(教養試験)
1次試験の教養試験では5肢択一式で、45問を2時間かけて解答します。
【知能分野】
- 文章理解
- 英文理解
- 判断推理
- 空間概念
- 数的処理
- 試料解釈
【知識分野】
- 人文科学:国語、歴史、地理
- 社会科学:法学、政治、経済、社会事情
- 自然科学:数学、物理、化学、生物
教養試験の点数が一定に達しないと次の論文試験の採点が行われないので、しっかり対策する必要があります。
1次試験(論文試験)
高卒が受験するⅢ類では作文試験があり、1時間30分で約800~1,200文字程度を書きます。
出題テーマは様々ですが、消防士としての自身の考え方を問われる内容のものが多い印象です。
過去問を公開しているところやテキストなどもあるので、確認しておくことをおすすめします。
適性検査
東京消防庁の適性検査では、「クレベリン検査(簡単な足し算を制限時間内におこなう)」「性格診断」がおこなわれます。
教養試験などの知能や知識を問われるものというよりは、人物を分析するのが目的となっています。
第2次試験(身体・体力検査)
東京消防庁の第2次試験はおもに身体・体力検査と面接を受験することなります。
身体・体力検査は大卒・高卒関係なく、以下の基準が設けられています。
項目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
身長 | おおむね160cm以上 | おおむね155cm以上 |
体重 | おおむね50kg以上 | おおむね45kg以上 |
胸囲 | 身長のおおむね2分の1以上 | 身長のおおむね2分の1以上 |
視力 | 視力(矯正視力を含む)が両眼で0.7以上、かつ一眼で0.3以上あること。なお、裸眼視力に制限はありません | 視力(矯正視力を含む)が両眼で0.7以上、かつ一眼で0.3以上あること。なお、裸眼視力に制限はありません |
色覚 | 消防官として職務執行に重大な支障がないこと | 消防官として職務執行に重大な支障がないこと |
聴力 | 正常であること(オージオメータによる純音聴力検査を実施します) | 正常であること(オージオメータによる純音聴力検査を実施します) |
肺活量 | おおむね3,000cc以上 | おおむね2,500cc以上 |
体力検査 | 1km走、反復横とび、上体起こし、立ち幅とび、長座体前屈、握力、腕立て伏せにより、体力を測定します | 1km走、反復横とび、上体起こし、立ち幅とび、長座体前屈、握力、腕立て伏せにより、体力を測定します |
とくに視力に関してはメガネやコンタクトをしていても問題ありませんが、肺活量や体力検査に引っかかてしまうと落ちてしまうおそれがあるので注意が必要です。
消防士になるには筆記試験対策ではなく、体力面も考慮しなければいけません。
第2次試験(面接)
消防士試験の第2次試験では面接もおこなわれます。
質問内容は固定ではないものの、消防士として働く意志の強さを問われます。
消防士試験対策のテキストやサイトでは過去に聞かれた質問がまとめられていたりするので、参考程度にチェックしておくといいでしょう。
参照:東京消防庁採用情報サイト
消防士(消防官)になるには?試験の難易度や合格率・採用倍率を紹介
難易度の高い消防士採用試験に合格するポイント
難易度の高い消防士採用試験に合格するポイントを確認しましょう。
- 数的処理対策を優先する
- 論作文の添削を受ける
- 面接対策をしておく
- 体力検査の準備をしておく
消防士採用試験に合格するために、前もって学習計画を立ててください。
ポイント①数的処理対策を優先する
消防士採用試験は数的処理対策を優先しましょう。
以下のように、試験では数的処理に関する問題が多く出題されます。
- 判断推理
- 空間把握・図形
- 数的推理・資料解釈
以上のうち、自分のできる範囲から挑戦してもいいでしょう。
筆記試験対策として数的処理に力を入れることをおすすめします。
ポイント②論作文の添削を受ける
論作文試験は、ほぼ全ての自治体で実施されています。
試験対策として、解答を第三者からチェックしてもらいましょう。
評価や検索をしてもらい、弱点を見つけてください。
積極的にアドバイスを受けることで、論作文試験対策が進められます。
添削やアドバイスに不安がある人は、予備校や通信講座への通学もおすすめです。
ポイント③面接対策をしておく
二次試験では個別面談があります。
質問カードを中心に面接が行われ、幅広い角度から質問がされます。
志望理由だけでなく、やりたい仕事や自己PRにも力を入れてください。
時事問題や最近のニュースのチェックも忘れてはいけません。
人物試験は、どの自治体でも実施されている傾向です。
ポイント④体力検査の準備をしておく
消防士になるために体力検査は避けて通れません。
筆記試験だけでなく、体力検査の対策をしておきましょう。
体力検査では腕立て伏せや腹筋など、基礎的な能力がチェックされます。
試験勉強の合間に、体力作りを積極的に行ってください。
消防士とは
皆さんもご存知の通り、消防士、もしくは消防官は、各地方自治体に設置されている消防署に所属し、街の平和と安全を守る職業です。
一言に消防士といってもいくつかの役職があり、実際に消火活動を行う「消防隊員」、火災現場に突入し人命の救助に当たる「救急救命士」、負傷者を手当したり病院へ搬送する「救急隊」が挙げられます。
火事や災害の現場というのは何が起こるか分からないため、人命を助けるために消防士は毎日厳しい鍛錬を行っています。
また、火事や災害というのはいつ、どこで、どのように起こるのか予測が不可能であるため、消防署には常に必ず消防士が駐在することになり、24時間勤務、非番日、週休日と交代制の勤務体系になります。
消防士は男性職業であるというイメージが強いですが、特に性別は関係ないため女性でもなることができます。
消防士の仕事内容
消防士のおもな仕事内容には以下のものが挙げられます。
- 消火活動・火災調査
- 火災の予防指導
- 災害時の救助・救援
- 急病人の搬送
消防士のメインとなる仕事は消火・救急活動です。
鎮火することはもちろんですが、高層階に取り残された人の救出のための「はしご隊」、水難事故に遭っている人を救助する「水難救助隊」など、災害において人命を救助するあらゆる任務があります。
なかには自信の命の危険もともなう状況もあるため相当な覚悟が必要です。
消防士は消火活動だけではなく、そもそも火災を引き起こさないといった予防指導も業務の一環となっています。
たとえば防火設備の検査を行う「消防同意・建物検査」、建物や店舗に立ち入り消防設備の状況を検査する「防火査察」、火災の原因や損害を調査する「火災調査」などの業務などが挙げられます。
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消防士の給与・年収
総務省によると、消防士の平均基本給月額は約335,532円で、平均給与は約400,344円、年収で言うと平均役635万円程度だとされています。
また消防士の年収は階級によっても異なり、階級が上がれば給与や年収が比例して上がる仕組みとなっています。
東京都総務局人事部が発表する「等級及び職制上の段階ごとの職員数」によると、消防士のなかでも最も高い階級だとされる消防監や消防正監、消防総監といった階級なら平均年収は1,000万円以上だといわれています。
また消防士長のなかだと、400万~700万円などバラつきのさがおおきいというでーたもあります。
バラつきがある理由として考えられるのは、消防士長の中では年齢差があるからです。
消防士に向いている人の特徴
以下のような特徴を持つ人物であれば、高卒から消防士になるのに向いているといえるでしょう。
- 正義感が強い人
- 臨機応変に判断できる
- 集団行動のほうが合っている
消防士の仕事は人の命を救うことなので、正義感が強い人が向いているといえます。
ときには危険な現場もあるので、そういった際にも負傷者に対して迅速に救助できる行動力も伴っているといいでしょう。
「困っている人を助けたい」思いが強い人であれば、やりがいも感じられます。
高卒で消防士になるメリット
高卒から消防士になるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
高卒で消防になるメリットには以下のものが挙げられます。
体力があるうちに経験を積める
消防士は体力勝負といっても過言ではありません。
したがって、高卒という体力的にもまだ余裕のある年齢から経験を積めるといったメリットがあります。
実際、大学に進学してもスポーツ系のサークルなどに入っておらず、高卒者との体力の違いに圧倒されるといったケースも珍しくありません。
消防士になりたいといった意志が強いのであれば、なるべく早く目指すことがおすすめです。
地域に根ざして安定して働ける
消防官は人手不足といった面もあることから、よほどのことがなければ辞めさせられる心配はありません。
また火災など人命救助を目的とした消防士は、住民がいる限りなくなることもないので将来性もあります。
したがって、地域に根ざして長い間安定して働けるというメリットがあります。
また消防士は地方公務員に属することから、全国転勤の可能性が限りなく低いのもポイントです。
同世代よりも年収が高い
先にも述べたように、消防士の仕事は年収600~700万円といわれていることから、同世代の民間企業で働くよりも高収入を期待できるメリットがあります。
各種手当や賞与、職能給なども加算され、休暇や福利厚生なども充実しています。
しかし消防士は命に係わる仕事でもあるので、稼ぐことのみを目的にしてしまわないようにしましょう。
高卒で消防士になるデメリット
高卒で消防士になるには以下のようなデメリットやリスクもあるので注意が必要です。
命の危険にさらされるリスクがある
消防士の仕事は災害救助や消火活動がメインとなることから、他の民間企業よりも命の危険にさらされるリスクが高いといったデメリットがあります。
実際、総務省消防庁のデータによると、消防士として1年間働いていると約1%の確率で何らかの負傷をするといった結果もあります。
どれだけ体力に自信があったとしてもケガや死亡への可能性はあるので、生半可な気持ちでチャレンジするのは危険です。
参照:総務省消防庁
男性比率が圧倒的に多い
今でこそ消防士は女性もいますが、それでもやはりまだ男性比率の高さは否めません。
また体力勝負の成果であることから体育会系の独自の文化があったり、上下関係が厳しいといった面もあります。
もちろんいい面もありますが、雰囲気が合わないといった方や体力に自信がないといった方はほかの道を選ぶことをおすすめします。
ほかのキャリアを諦めなければいけない可能性がある
必ずではありませんが、消防士で培ったスキルや経験はほかの職種や業界で活かしにくいといったデメリットがあるの注意が必要です。
実際、消防士からほかのキャリアへの転職は難しいともいわれています。
もし「ほかの仕事も経験してみたい」といった気持ちが少しでもあるのであれば、ほかの公務員を目指すのも検討してみて下さい。
消防士採用試験の独学合格が難しい理由
消防士採用試験の独学合格は以下の理由から難しい傾向です。
- 学習の管理が難しい
- 論作文や面接対策がしにくい
- 効率的な勉強法に悩んでしまう
独学の成功には時間に余裕があったり、勉強のコツをつかんだりする必要があります。
学習スタイルの向き不向きがあるので注意してください。
独学が難しい理由①学習の管理が難しい
独学は学習の管理が難しいことがデメリットです。
進捗を確かめる場合も、比較対象がいません。
1人で学習する必要があるため、成長度合いも分かりにくいです。
勉強の管理やモチベーションの維持が難しいことにも注意してください。
独学が難しい理由②論作文や面接対策がしにくい
論作文や面接対策は、独学では難しいです。
第三者から評価やアドバイスをもらうことで、うまく対応できる試験もあります。
個人の勉強だけでは、対応できることに限度があるでしょう。
論作文や面接対策に迷ったら、予備校や通信講座の受講をおすすめします。
独学が難しい理由③効率的な勉強法に悩んでしまう
効率的な勉強方法は、独学では掴みにくいものです。
どのような問題が頻出され、どんな回答がベストなのか判断しにくいでしょう。
初めて消防士採用試験の対策をする場合、教材選びにも迷ってしまいますよね。
間違った勉強法のまま、採用試験日を迎えてしまう可能性もあります。
消防士採用試験対策におすすめの通信講座
アガルートアカデミーは、国家公務員に向けた対策講座が豊富にあります。
高校既卒者向けのカリキュラムもそろっているので、チェックしましょう。
オンラインで勉強できる講座は、アガルートアカデミーの特徴です。
フォロー制度や相談体制が整っているため、初学者にもおすすめです。
キャンペーンやクーポン配布を行っている場合は、申し込むタイミングに注意してください。
消防士は高卒でもなれるが、相当な努力と覚悟が必要
今回は高卒でも消防士がなれるのかやなり方、試験内容などについてご紹介してきました。
結論から言うと、消防士の世界では学歴はそれほど重視されないため、高卒でもなれます。
しかし、受験することになる採用試験の難易度によってその後の待遇に影響するため、高卒よりも大卒以上の学歴もしくはそれ相応の知識とスキルが必要となります。
高卒のうちからであれば体力もあるので消防士を目指しやすいといったメリットがありますが、命の危険にさらされるリスクやほかのキャリアへの転職がしにくいデメリットがあります。
本当に自分が消防士になりたいのかをしっかり考えて慎重に決めるようにしましょう。