ネイリストは比較的独立・開業がしやすい職業だと言われています。いずれは自分のネイルサロンを立ち上げたい、と考えているネイリストの方も多いでしょう。
しかし開業と聞くと、つい「条件が厳しそう」「お金がかかりそう」と身構えてしまいますよね。中でも特に心配なのが開業資金です。初期費用を抑えるための方法などはあるのでしょうか?
この記事では、ネイルサロンを開業したいと考える方に向け、ネイルサロンの開業に必要な費用や手続きに加え、使える助成金や補助金といった支援制度について解説していきます。
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ネイルサロンの開業に必要な手続きは?
ネイルサロンを立ち上げるにあたって、特別な資格や保健所の許可などは必要ありません。必要な手続きさえ踏めば、誰でも開業が可能です。
自分の技術を証明するためにネイル関係の資格をとることはお勧めしますが、資格がなくとも開業できる点が、ネイリストが独立・開業しやすいと言われる理由なのです。
ネイルサロン開業に必要な手続きは、「開業届」の提出です。この開業届を提出することで、今後事業主として事業所得が発生する旨を税務署に申告します。
また、開業届を提出する際、併せて「青色申告承認申請書」も提出しておくと便利です。こちらは、確定申告において青色申告を希望する事業者が、あらかじめ提出しなくてはならない届出です。
青色申告を行わないのであれば青色申告承認申請書は不要ですが、青色申告は節税のメリットが大きいため、事業所得が一定額を越える人は申請しておくことをお勧めします。
ネイルサロンの開業費用はどのくらい?
では、実際ネイルサロンを開業するにあたり、初期費用はどれくらいかかるのでしょうか?
ネイルサロンの開業に必要となる資金は、開業の形態などにより大きく異なります。全部で数十万円程度の出費で済んだという人から、800万円以上かかったという人まで、幅が広いのです。
開業費用として考えられる項目は、主に以下の4点です。
- 物件取得費用
- 外装・内装にかかる費用
- 機材・設備・商材・備品などの費用
- 広告宣伝費用
この中で最も変動が大きいのが、サロン用物件の取得費用です。自宅で開業するホームサロンの場合は0円で済みますし、マンション等の一室を借りるのであれば、初期費用は数十万円ほどでしょう。
一方、都内の一等地に建つ店舗を借りるとなると、500万円ほどかかる可能性があります。物件取得費用は開業する地域や立地によっても大きく変わります。
物件取得費用の次に変動が大きいのが外装・内装費です。ホームサロンや賃貸マンションでは外装工事が不要、内装費も数十万円程度に抑えられます。一方店舗の場合は外装・内装費共に必要となりますが、居抜き物件か否かでまた金額が変わってきます。
機材・備品等の購入費や宣伝広告費は、どのような開業形態であってもかかります。およそ50万円程を費やした方が多いようです。ホームサロンであれば、店舗より集客が難しいため、特に宣伝広告費がかさむ可能性があります。
ネイルブックのアンケートによると、ネイルサロンの開業資金で最も多かったのは「100万円未満」で、その多くがホームサロンで開業しているようです。
ネイルサロン開業費用を抑える方法
集客が軌道に乗るまでのことを考えると、なるべく開業費用を抑えたいと思うのも当然です。
物件取得費用が不要なホームサロンを開業する、外装・内装工事費が節約できる居抜き物件を利用するなどの工夫以外に、開業費用を抑える方法はあるのでしょうか?
助成金や補助金を使用する
開業費用を抑える方法のひとつとして、国や地方自治体等が設けている助成金・補助金の利用が挙げられます。
助成金や補助金は基本的に後払いであり、開業後に支給されることがほとんどです。そのため支給されたお金をそのまま開業費用に回せるわけではないのですが、支払ったお金の一部が戻ってくるのであれば、やはり助かりますよね。
開業・創業を支援してくれるものから、サロンの運営をサポートしてくれるもの、従業員を雇う際に助成してくれるものなど、助成金の種類も様々です。次の章では、ネイルサロンの開業・運営等に使える助成金・補助金をご紹介していきます。
助成金と補助金の違い
ちなみに、助成金と補助金の違いはご存知でしょうか?
どちらもお金が支給され、原則返済不要という点は同じですが、両者には様々な違いがあります。
助成金が、基本的に定められた要件さえ満たせば支給されるものであるのに対し、補助金は支給される件数や人数が決まっていることが多く、応募しても抽選や先着などで支給されない可能性があります。
さらに補助金の支給には事業内容の審査などがあり、助成金よりも補助金の方が支給条件が厳しいのです。
また助成金は支給される金額が決まっていますが、補助金の場合、支出した金額に対して一定の割合で算出されるため、支給金額が人により異なるのも特徴です。
ネイルサロン開業・運営を支援してくれる助成金・補助金
ここからは、実際にネイルサロンの開業・運営等に利用できる助成金・補助金をご紹介します。
なお助成金・補助金はその性質ごとに、以下のように分類しています。
- ネイルサロンの開業・運営に使える助成金・補助金
- ネイルサロン従業員の雇用・人材育成に使える助成金・補助金
ネイルサロンの開業・運営に使える助成金・補助金
ネイルサロンの開業および運営に利用できる助成金・補助金は、主に以下の3種類です。
- 自治体の助成金
- 地域雇用開発助成金
- 小規模事業者持続化補助金
自治体の助成金・補助金
各地方自治体では、地方創生・地域活性化を目的として、開業・起業を支援する制度を設けています。都道府県のものから市区町村単位のものまで様々ですので、ネイルサロン開業を予定している自治体の情報を確認してください。
代表的なものとしては、東京都の「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」が挙げられます。女性または39歳以下の男性が、都内の商店街へ出店することを目的として、実店舗取得の前に申請することで得られる開業助成金です。
助成費用
- 事業所整備費(店舗工事費、設備・備品購入費、宣伝広告費)……4分の3以内(400万円まで)
- 実務研修受講費……3分の2以内(6万円まで)
- 店舗賃借料……4分の3以内(1年目180万円、2年目144万円まで)
地域雇用開発助成金(旧地方再生中小企業創業助成金)
地域雇用開発助成金は、雇用機会が少ない地域に開業し、その地域の求職者を雇用した場合に、事業所(店舗)の設置費用などを助成してくれる制度です。
開業地域が指定されているうえ、ハローワーク等を通じて従業員を何人か雇用しなければ助成対象にはならないため、利用できる方がかなり限られるかもしれませんが、対象地域に出店予定の方は要チェックです。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が生産性の向上や販路の開拓のために行った取組みに対して、費用の一部を補助するための制度です。
ネイルサロンの運営では、集客のためのチラシ作成や店舗の改装、新商品陳列用の棚の購入といった費用が対象になる可能性があります。
- 対象者……小規模事業者(ネイルサロンの場合は従業員5名以下)
- 補助額……販路開拓等に取組む費用の3分の2(50万円まで)
- 申請先……日本商工会議所
ネイルサロン従業員の雇用・人材育成に使える助成金・補助金
続いてご紹介するのは、従業員の人材育成や雇用に関する助成金・補助金です。開業時は単身という方が大半かとは思いますが、ネイルサロンの運営が軌道に乗り、スタッフを増やしたくなった時に役に立つでしょう。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、パートやアルバイト、派遣社員と言ったいわゆる非正規雇用の労働者に対して、待遇の改善を行った事業主を支援する制度です。
アルバイトスタッフを正社員化したり、賃金の増額を行ったりした場合に助成を受けることができます。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、労働者のキャリア形成の促進を目的として、継続的に従業員の人材育成を行っている事業主を支援する制度です。
ネイルサロンの場合、ネイルの知識・技術に関するスキルアップ研修などを計画的に実施することで、助成を受けられるようになります。サロンで雇用しているスタッフだけでなく、事業主本人の研修・スキルアップにも利用できる助成金です。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、職業経験や技能・知識が乏しく、安定した職に就けないでいる人を、試験的に一定の期間雇用した場合に支給される助成金です。
ハローワーク・紹介事業者等の紹介で雇用した場合にのみ申請できる助成金のため、この制度を利用する場合はハローワーク等へ求人を出しておく必要があります。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難な特定求職者(高齢者、幼い子を持つひとり親など)を、ハローワーク等の紹介で継続的に雇用した場合に受け取れる助成金です。
こちらの制度を利用する場合も、トライアル雇用助成金同様、ハローワーク等に求人を出す必要があります。
両立支援等助成金
両立支援等助成金は、家庭と仕事を両立できるような職場環境づくりに取組む事業主を支援する制度です。従業員の介護離職防止、育児休業の取得・職場復帰推進、不妊治療と仕事の両立支援などの取組みが助成対象となります。
特に女性が多いネイリストの世界では、出産・育児・不妊治療などを理由とする退職が起こりがちです。このようなライフステージの変化を乗り越えてスタッフが長く働き続けられる職場づくりを、この制度で後押しすることを狙いとしています。
- 対象者……介護・育児等と仕事を両立できる職場風土づくりに取組む事業主
- 助成の種類……全5コース
- 助成額……コースにより異なる
- 問い合わせ先……都道府県労働局雇用環境・均等部(室)
助成金を使用する際の注意点
助成金・補助金は、条件が合えばネイルサロンの開業・運営費用が少し浮く、非常に便利でありがたい制度です。できる限り利用したいところですが、これらの制度を利用するにあたり、頭に入れておきたいポイントが2つあります。
助成金・補助金は後払い
先ほども簡単にご説明したとおり、助成金や補助金は基本的に後払いです。開業後、かかった費用に対して一定額もしくは一定割合で助成金・補助金が支給されます。
そのため、開業前に助成金・補助金を受け取り、それを物件取得や機材購入に充てる、という使い方ができません。
つまり、たとえ助成金・補助金を使うとしても、まずはまとまった額の自己資金を用意する必要があります。お金をもらって開業費用を浮かすのではなく、支払った開業費用の一部が戻ってくる、という認識で資金を準備しましょう。
助成金・補助金の申請には知識が必要
お金を受け取るための手続きというものは、得てして煩雑です。助成金・補助金の申請についても例外ではありません。
慣れていない人にとっては、ホームページやパンフレットの書きぶりも大変読みにくく、複雑なものに感じられるでしょう。助成金・補助金の申請や利用には知識が必要となり、全ての手続きを自分ひとりで行うのは困難かもしれません。
手続きに不備があると、手戻りが生じて支給までに時間がかかったり、支給が認められなかったりする可能性もあります。行政書士やコンサルなど、申請手続きの専門家への依頼も検討してください。
ネイルサロン開業時に使える助成金 まとめ
ネイルサロンの開業費用は、開業形態や地域により大きく変動します。助成金や補助金を利用すると、かかった費用の一部が戻ってくるかもしれません。
起業を支援する助成制度が地方自治体ごとに設けられています。ネイルサロンの開業にも使えることが多いため、開業予定の自治体の情報はぜひチェックしてください。
他にも、人材育成やスタッフの雇用に利用できる支援制度が多数存在します。ただし、助成金・補助金は基本後払いです。支給を受けるには、一旦費用を自分で賄う必要がある点に注意してください。