法律の専門家と言えば、弁護士や裁判官に並んで検察官という職業があります。
検察官は、犯罪被害者や被疑者に対して法律に沿って厳正に刑事事件を解決へと導く仕事です。
しかし、検察官の具体的な仕事内容・業務内容はどういった事が行われているのか、検事と検察官の違いはどのような点なのか、分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、検察官の具体的な仕事内容や検事との違いについて詳しく解説します。
検察官に関してあまり知られていない役割が沢山ありますので、検察官の職業・仕事内容・業務内容について気になる方は是非ご覧ください。
- この記事でわかること
- 検察官とはどのような職業なのか
- 検察官の仕事内容
- 裁判関連以外の検察官の業務
- 検察官と検事の違い
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検察官とは
検察官は法務省の中に属する検察庁に所属している国家公務員です。
裁判官・弁護士・検察官で法曹三者と呼ばれる1つの職業で、独任制の官庁と言われています。
検察官の特徴として、検察官は被害者や被疑者に直接取り調べなどの捜査を行い、刑事裁判を行います。
検察官は、検察権という権利を持っています。検察権とは検察官だけが行使できる以下の権限を指します。
- 担当する刑事事件の捜査を行う権限
- 公訴を提訴する事ができる権限
- 刑事裁判を指揮監督する権限
- 刑事事件の訴訟を遂行する権限
検察官という組織ではなく、検事一人一人がこの権限を持っています。
検察官は大きく4種類に分ける
検察官と呼ばれる職業には裁判所の本庁や支部に対応して以下の4種類が設置されています。
検察庁によって配置される階級にも違いがあり、仕事内容や業務内容も変化してきます。
検察庁名称 | 各検察庁の長 | 次席 | 所属 | 対応裁判所 |
最高検察庁 | 検事総長 | 次長検事 | 検事総長・次長検事・検事 | 最高裁判所 |
高等検察庁 | 検事長 | 次席検事 | 検事長・検事 | 高等裁判所 |
地方検察庁 | 検事正 | 次席検事 | 検事 | 地方裁判所・家庭裁判所 |
区検察庁 | 上席検察官 | 検事・副検事 | 簡易裁判所 |
検察官の仕事内容
検察官の仕事内容は刑事事件を捜査・取り調べなどを行い、被疑者を裁判に起訴するのが仕事です。
公益の代表者と呼ばれる検察官は検察権を行使するのが役割となります。
検察官は検察権を行使する事のできる唯一の職業です。
主な仕事内容は、警察から犯人と証拠を送致され、検事が引き継ぎます。
そこから検事が指揮を取り、聞き取りなどの捜査を行って新たな証拠を収集していき、最終的に起訴するかしないかの判断を検事が行います。
法廷上で担当する事件について法律に基づき、証拠を使って犯罪行為を証明します。
検察官の主な業務内容は刑事事件を捜査して、処分を検討して、適切な量刑を得る事です。
捜査・公判において検察官は全ての責任を持ちます。
そして、被疑者が起訴後なお、犯行を認めない場合には裁判所での証言を行います。
主な業務内容:事件の捜査
検察官の主な業務内容は刑事事件に対して自ら指揮し、捜査を行い証拠収集を行います。
現場での証拠収集は主に警察が行い、検察官は警察から送致された被疑者と証拠品を基に捜査を開始します。
事件の被害者・被疑者から事件についての詳しい聞き取りを行い、証拠と照合し、双方の話の信頼性を見極めなければなりません。
刑事事件の捜査に関しては警察からの捜査報告を検察に送致するケースが一般的です。
検察官は警察へ捜査依頼に関する指揮を取ります。
また、状況や周囲の雰囲気確認の為に検事が現場に向かう事もあります。
そしてその状況を把握し、証拠や証言から様々な可能性を検討するのです。
検察官の業務は多いので、重要な事件に対して検事が現場確認を行う事が多く、全ての事件に対してではありません。
主な業務内容:事件の処分
事件捜査後の業務内容は、その事件の処分についての判断を行います。
検察官が公判請求を行い裁判となる事件は比較的少なく、多くは不起訴処分や略式命令請求を行います。
不起訴に関して執行猶予とする場合には、弁護人や関係者などに協力をしてもらいます。
また、事件の結果に対して検察官が納得いかない場合は、起訴は適切ではないとし、不起訴にします。
不起訴になる事件は多く、被害者などへ不起訴の理由を分かりやすく説明する事が必要です。
主な業務内容:留意請求
捜査をする上での業務内容には留意請求というものがあります。
留意請求とは被疑者や刑事裁判を受ける被告人を留置施設に拘束する事を指します。
被疑者や被告人を勾留するには以下の3つの理由に限ります。
- 住所不定
- 事件に関する証拠隠滅を図る可能性がある
- 逃走する可能性がある
以上のうちの1つと、ほぼ加害者であると認められる理由が必要になります。
検察官が裁判所に留意請求し、認められれば勾留され、その流れを警察もチェックします。
また、裁判官が検察官の留意請求を却下した場合には検察官は異議申し立てができます。
検察官がおこなうその他の仕事内容
一般的には検察官といえば刑事事件を取り扱うイメージが大きいですが、検察官は刑事事件以外にも行う業務があり、法律に関する知識を活かした活動を行っています。
そして常に勉強しなければならない検察官自身も、能力向上を心がけて様々な分野での法律に関する学習を目指しています。
法律専門家としての仕事内容
検察官は「公益の代弁者」として法律の専門的立場として担当する業務があります。
例として親子関係の身分を確定する為の訴訟に関して訴訟相手が故人の場合に被告代理となり法廷に立つ事があります。
検事は法律専門家の立場での活動も多くあり、その場面も様々です。
法務省に所属し、新制度の立案・企画や国際的な犯罪など海外の法律に沿って犯罪者の引き渡し、国際捜査共助に加わったり、国としての民事訴訟や行政訴訟など担当する事もあります。
検察庁・法務省以外の省庁での在外公館や海外の組織などに出向する事もあり、国内外で法律専門家としての活動を行います。
このように検察官の仕事は日本国外での法律の知識も必要となり、常に勉強を怠らないように日々の努力を続けています。
裁判員裁判での仕事内容
検察庁では裁判員制度の広報活動を積極的に行っており、セミナーや説明会を実施しています。
裁判員裁判では検察庁が裁判員制度についての説明会を行っており、企業や地域活動など、説明会を行う為の施設を募集し、検察官や検察事務官が企業や学習施設で裁判員制度について説明会を行います。
検察庁は法律に関しての教育の普及を目的としていて、教材を作成したり、模擬裁判を行ったり、学習施設などに派遣され、身近な生活で発生する問題などに関して法律専門家としての見解やどうして犯罪になるのかなどの説明を行うなどの活動をしています。
検察官は裁判員制度では裁判員にも分かりやすく、法廷で法律に関して犯罪の立証・説明を行います。
検察庁での研修制度
検察庁では検察官の知識向上を目的とした研修制度が実施されています。
研修制度は検察庁の法務総合研究所で検事を対象に毎年行われていて、毎年20名程度の検事が半年間~2年間にわたって海外派遣され、各国の法律について調査や研究を行います。
研修制度は経験年数に応じ研修が決められています。
- 任官直後の検事
任官されたばかりの新任検事は約3ヵ月間の新任検事研修が行われ、基礎知識や能力を習得を目指します。
- 任官して3年の若手検事
任官され3年経過した若手検事には、一般教養の向上と捜査や公判などの実務での知識や技能の習得を目指します。
- 任官して7~10年の中堅検事
任官されて7年~10年経過した中堅検事は、組織運営の認識を深める為に検事専門研修が行われ、財政経済事犯の専門的知識を習得し、能力向上を目指します。
これらの研修は法務や検察内外の実務家や経験者を講師として講義を行ったり、過去に発生した事件記録を基に「演習」を行います。
実際に模擬裁判を行い、被疑者や証人・上司などを配置し、研修生が検事として直面する様々な場面を想定した模擬裁判を行います。
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検察官と検事の違い
検察官と検事はどちらもよく耳にしますが、違いについて気になっている方も少なくないでしょう。
検事とは、検察官の役職であり「検事総長」「次長検事」「検事長」「検事」「副検事」の総称として検察官と呼ばれています。
そしてその職階によって仕事内容や業務内容にも違いがあります。
検事は検察官の中での階級を指しています。
司法試験を通過し、司法修習を修了して検察庁に採用されれば検事となります。
検事から階級を上げるには、20年以上必要となり、そこから出世していって、次長検事・検事総長へと職階を上げていく事が可能になります。
検察官の職種
検察官の種類には様々あり、以下の5種類の職階があります。
検察官の職階 | 詳細 |
検事総長 | 検事総長は検察官の最高位であり、検察庁の職員・検察官を統括する役割があります。 1級の等級を持ち、内閣により任命後に天皇に認証されます。 |
次長検事 | 次長検事は検事総長を補佐する役割を持ちます。 1級の等級を持ち、内閣により任命後に天皇に認証されます。 |
検事長 | 検事長は高等検察庁の管轄である地方検察庁・区検察庁に所属している職員を監督する役割を持ちます。 1級の等級を持ち、内閣により任命後に天皇に認証されます。 |
検事 | 検事は検事総長・次長検事・検事長以外の検察官で副検事以外の検察官を指します。 1級または2級の等級を持ち、法務大臣により任命されます。 |
副検事 | 副検事は司法修習修了以外の試験に合格した検察官を指します。 副検事の殆どは検察事務官から副検事になっているようです。 2級の等級を持ち、法務大臣により任命されます。 |
その他の検察官 | |
検事正・次席検事・上席検察官 | 検事正・次席検事・上席検察官は職名であり、職階を指すものではありません。 職階は検事となります。 |
検察事務官は検察庁で事務業務を行う国家公務員を指します。
検察事務官は司法試験を受けてきた検事とは違い、法務大臣の任命を受け検察官の事務を行うのが検察事務官です。
主に事務職の国家公務員試験を通過し、検察に採用されます。
また、地方検察庁での検察事務を行う検察官事務取扱副検事もいます。
検事事務官は3年程度の実務経験があれば、司法試験を受けなくても、高等検察庁で行われる副検事選考試験で検察官になれるという制度があります。
検察官事務から検察官になった人が副検事となります。
検察事務官と検事の違い
検察事務官と検事も同じ国家公務員ですが、検察事務官は検事の補佐を行うアシスタントとしての役割があることが大きな違いになります。
検察事務官は、検事の指揮の下で犯罪の捜査や逮捕状による逮捕、罰金の徴収など事務を行うことが仕事になります。
検察事務官と検事には、職務権限が定められていてその中には「被疑者を取り調べすること」「逮捕状により逮捕すること」「検事の命令により検視すること」といった内容が含まれています。
検察事務官は、検事と二人三脚で犯罪の捜査をしたり、裁判の結果確定した懲役刑などの執行手続きや罰金の徴収業務を補佐以外に、事務として総務・会計などの事務業務も行います。
検察官の仕事の仕組みをしっかり把握しておこう
検察官についての仕事内容・業務内容と検察官と検事の違いについてご紹介しました。
検察官と検事の違いについて検察官の職業の仕組みが分かりましたね。
検察官として知られている業務から、あまり知られていない業務まで様々な仕事内容・業務内容がありました。
検察官という職業は法律に関する知識だけでなく、責任感が重く忍耐力や冷静な判断力など様々な能力を必要とする職業です。
しかし、証言や証拠品を調査し、自分の力で正しい方向へと導けた時は何よりの仕事のやりがいを感じる瞬間なのではないでしょうか?
検察官をされている方は検察官の仕事に興味を持ち、法律に関しても日々追及する姿勢で業務を遂行しています。
我々もいつ訴訟問題が発生するか他人事ではありません。
常に公平な立場で判断し、何が間違っているかそうでないかきちんと答えを出して解決へと導いてくれる検察官は我々にとって頼もしい存在です。