消防士は消防官とも呼ばれており、地方の消防署などで働く消防官は地方公務員、総務省消防庁などで働く場合は実働は伴わない国家公務員となります。
消防士は、地域の「消火」「救助」「救急」「防災」「予防」の5つの活動が主な仕事です。
消防庁勤務の国家公務員の場合は、全国の消防・救急体制の充実や災害時の緊急援助隊の派遣(国内・海外)、地域の防災力強化などを行います。
そんな消防士になるには採用試験を突破しなければなりませんが、難易度は高いのでしょうか。
今回は、地域の安全を守る職業「消防士」の採用試験の難易度や、試験の種類・概要について、詳しく解説していきます。
- この記事でわかること
- 消防士(消防官)採用試験の難易度
- 消防士採用試験の試験内容・科目
- 消防士採用試験に合格するための勉強方法
- 消防士(消防官)の収入・年収の目安
レスキュー隊と消防士の違いはどこにある?受ける訓練や年収は変わる?
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消防士(消防官)採用試験の難易度
消防士採用試験の合格を目指す場合、難易度を把握した上で試験対策を講じることが大切です。
難易度に対して自分の能力を正確に見極め、消防官の中でも地方公務員を目指すか、キャリア組にあたる国家公務員を目指すかを検討しましょう。
ここでは、消防士採用試験の難易度を解説します。
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消防士試験の合格倍率は10%程度
令和4年度・令和5年度の東京消防庁の合格倍率は下記の通りです。
試験区分 | 令和4年度合格倍率 | 令和5年度合格倍率 |
---|---|---|
Ⅰ類1回目 | 9.2倍 | 3.1倍 |
Ⅰ類2回目 | 6.7倍 | 7.7倍 |
Ⅲ類 | 6.4倍 | 8.3倍 |
消防士採用試験の合格倍率は高く、約5倍~10倍にもなるため、合格難易度が非常に高い試験です。
約5~10人に1人が採用される計算であり、合格率で考えると10%程度に留まります。
上記はあくまで東京消防庁の例であるため、受験する地域によって差はあるものの、きちんと対策を行っていなければ簡単に突破することはできないと考えておきましょう。
消防士試験の合格に必要な勉強時間は800時間程度
消防士を含めた地方初級公務員試験の勉強時間は800時間程度と考えましょう。
ただし、地方初級公務員の区分によっては約300時間で勉強が完了することもあります。
1日2時間ほどの勉強でも1年を通して計算すると730時間です。
消防士試験の勉強期間は1年以上あれば安心ですね。
消防士(消防官)採用試験の概要
消防士採用試験の概要は、募集している分類や都道府県によって異なります。
概要をよく読んで試験に備えましょう。
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消防士試験の受験料
消防士試験の受験料は無料となっています。
また、当然ではありますが、試験会場に向かう際の交通費等は自己負担となります。
1年で消防士試験がおこなわれる回数
消防士試験がおこなわれる回数は、分類によっても異なります。
- Ⅰ類:年2回程度
- Ⅲ類:年1回程度
※東京消防庁消防官採用試験の場合
消防士試験の合格発表のタイミング
消防士試験の合格発表のタイミングは、開催時期や分類によってことなります。
Ⅰ類1回目:7月18日(木)
Ⅰ類2回目:12月5日(木)
Ⅲ類:12月5日(木)
消防士(消防官)試験が難しいと言われる理由
消防士(消防官)試験が難しいと言われる理由には、以下のものがあります。
- 消防士(消防官)は採用人数が少ない
- 消防士(消防官)は高い学習能力も求められる
- コミュニケーション能力も求められる
理由①消防士(消防官)は採用人数が少ない
消防士は毎年採る人数が多いとはいえません。
公務員なので採用人数も決まっています。
新規で採用する場合は、退職者の人数分の枠と考えましょう。
このとき、消防士は退職率が低いこともポイントです。
消防士の3年以内離職率は、1%以下なので採用する人数も少ないのです。
消防士になるには、非常に高い競争率で勝たなくてはなりません。
理由②消防士(消防官)は高い学習能力も求められる
スポーツの経歴や体力テストの結果が評価されるイメージのある消防士ですが、択一式教養試験では下記のような多岐にわたる科目が出題されます。
大科目 | 科目 | 項目 |
---|---|---|
一般知能 | 数的処理 | 数的推理 |
判断推理 | ||
空間把握 | ||
資料解釈 | ||
文章理解 | 現代文 | |
英文 | ||
一般知識 | 社会科学 | 政治・経済 |
経済 | ||
社会 | ||
人文科学 | 世界史 | |
日本史 | ||
地理 | ||
思想・文芸 | ||
自然科学 | 数学 | |
物理 | ||
化学 | ||
生物 | ||
地学 | ||
国語 | ※作論文など |
こうした試験をクリアするためには、スケジュールを逆算した上で、しっかりと対策していくことが重要になります。
理由③コミュニケーション能力も求められる
消防士の採用には、2次試験として口述試験(面接試験)のようにコミュニケーション能力を評価する試験も存在します。
人物重視でチェックされるので対策をしましょう。
教養試験の他にも、口述試験をしっかりと備えておかなければ試験合格は難しいです。
消防士試験は暗記だけで乗り切れる試験ではありません。
消防士(消防官)試験の難易度を他の試験とランキングで比較
消防士試験の難易度を警察官や自衛隊の採用率と比べてみましょう。
区分 | 合格率 |
---|---|
消防官 | 約10% |
警察官 | 16.50% |
自衛官 | 6〜9%前後 |
市役所職員 | 自治体による |
消防士になれるのは、10人中1人の確率です。
ほかの試験と比べても厳しい競争を勝ち抜かなければなりません。
消防士(消防官)採用試験の内容・科目
消防士試験は大きく分けて下記の3種類に分類され、試験内容や難易度にも違いがあります。
- Ⅰ類:大卒程度の消防官採用試験
- Ⅱ類:専門学校・短大卒程度の消防官採用試験
- Ⅲ類:高卒程度の消防官採用試験
ここからは、消防士試験の基本的な内容や難易度について解説していきます。
消防士の試験科目
自治体によって内容は異なりますが、消防士採用試験では「教養試験」「論文試験」「体力試験」「適性試験」「面接試験」が行われます。
「教養試験」は、五肢択一式で行われます。文章理解や数的処理などが重要科目となっています。
「論文試験」は、主に消防士としての心構えや、災害などの現状に対する認識や意見などについて論述します。
「体力試験」は、消防士は体力仕事であり勤務も不規則になることから、職務に耐えられるかどうかが見られます。内容は、垂直横飛びや立ち幅跳び、握力、上体起こし(腹筋)、反復横飛び、持久走、シャトルランなど種目は様々です。
「適性検査」は、性格検査や適性試験の名称で行われることもあります。内容は、クレペリン検査やY-G検査と呼ばれるものが課されるのが一般的です。
「面接試験」は、教養試験や論文試験では見ることのできない人物像を評価するために行われます。個別面接、集団面接、集団討論のいずれか、もしくは組み合わせによって行われます。
難易度の高い消防士(消防官)試験に合格するポイント
消防士の受験は無料で受けられるため、何回も受ければ受かると考える方もいるかもしれません。
しかし、試験は毎年難易度が高く、合格率も10%を下回ることがあるため、しっかり準備を行う必要があります。
勉強方法は、「専門学校に入る」「通信教育を受ける」「大学内などで開かれる講習やゼミを受ける」「独学」があります。
しかし専門学校に行ったからといって、絶対に合格できるというわけではありません。
最終的には、自分のやる気で決まります。
ポイント①公務員採用試験対策を徹底する
消防士の採用試験の勉強は、基本的に公務員採用試験と同じです。
なので、公務員採用試験対策をすればよいことになります。
消防士だからといって、専門的・独自な出題はされることはなく、出題される問題もほとんど同じと言ってもよいでしょう。
ポイント②併願受験がおすすめ
消防士の試験は、併願受験が可能です。
採用試験は、市町村ごとに実施されます。
併願受験を複数することで、リスクを回避しましょう。
1次試験の日程が重複していなければ、複数の併願受験ができます。
ポイント③学習計画・スケジュールは早めに立てる
学習計画・スケジュールは早めに立てましょう。
早期に計画すれば予定が変わった時も修正がしやすくなります。
学習スケジュールの見直しも定期的に行うといいですね。
採用されるため、勉強の進捗管理は重要です。
ポイント④勉強時間を確保する
勉強時間が足りないときは、次の週でカバーするなどの工夫が必要です。
週単位で勉強した時間を確かめ、不足していないかチェックしましょう。
より効率的に勉強するためにも、気分転換やリフレッシュの時間も取ってください。
社会人の受験者は、仕事と勉強のバランスにも注意しましょう。
ポイント⑤体力トレーニングも必須
体力検査はどの都道府県でも消防士の試験に組み込まれています。
消防士の体力検査例には以下があります。
- 腕立て伏せ
- 腹筋
- 持久走
- シャトルラン(20m程度の往復持久走) など
勉強の合間に体力づくりもしておきましょう。
消防士(消防官)の年収・給料相場
消防士の給料は、職務の危険性や、勤務体系が24時間勤務と非番を繰り返すなど特殊なことから、一般の公務員と異なる特別給料表(公安職俸給表(一))が適用されます。
平均の月額給料は、平均年齢40.5歳で31万7,766円となっています。
消防士の初任給は高卒・大卒で異なり、5万円程度差が出てきます。
また、高卒に比べて大卒の方が昇進しやすく、昇給のペースも早いため、給与面では高卒よりも大卒の方が有利でしょう。
消防士(消防官)の現状と将来性
消防士の需要は、年々高まっているようです。
鉄筋コンクリート造の建物が増え、燃えやすい木造家屋が急激に減少し続けているにも関わらず、全国的に消防の出動件数は大きく減少することはなく、一部の消防署では人員不足となっているケースも見られます。
また、消防士は火事に対処するだけでなく、台風による洪水・地すべりや、地震による家屋の倒壊などの災害が起こった際にも、真っ先に現地に向かわなくてはなりません。
消防士として経験を積んだうえで、救急救命士として活躍する人もいます。
「地震大国」といわれ、首都圏直下型地震や東南海地震などが懸念される今日の日本。消防士の需要は全国的に高まっており、今後もこの状況は大きく変わらないといえるでしょう。
将来的にも代替が難しい職業の一つ
「消防士」「警察官」「医師」など、人間の生命活動や生活環境に関わる職業はいつの時代もなくなることがありません。
世の中の好景気・不景気に関わらず必ず仕事があるため、やはり安定した職業といえます。
他人にはない技術や知識で生計を立てることを「手に職をつける」といいますが、消防士や医師などの仕事は、そうした意味では究極の「手に職」といえるでしょう。
また、自分の体や技能をフルに活用して人の命や財産を守ることは、ほかにはない達成感をやりがいを感じられるものです。
最近では「公務員削減」の流れもありますが、この先も、消防士が極端に削減されるとは考えにくいです。
危険をともなう仕事だからこそ、手厚い待遇の下で働くことができるのです。民間企業が軒並み苦しい現代社会のなかで、消防士は非常に安定性と将来性のある職業のひとつだといえるでしょう。
消防士(消防官)試験の独学合格が難しい理由
消防士試験の独学合格が難しい理由には以下があります。
- 試験範囲が広い
- 教養試験や論文試験でつまづきやすい
- 教材選びが難しい
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独学が難しい理由①試験範囲が広い
消防士採用試験では対策しなければならない試験範囲が広く、独学での合格はほぼ困難です。
試験範囲例は以下です。
- 教養試験
- 論文試験
- 体力試験
- 適性試験
- 面接試験 など
自治体によっては集団討論が盛り込まれていたり、ほかの公務員試験では見られない体力試験も突破しなければなりません。
独学が難しい理由②教養試験や論文試験でつまづきやすい
体力には自信があっても、教養試験や論文試験でつまずくケースもあるため、消防士採用試験では知識と体力の両方が求められます。
独学では難しい論文試験や面接試験の対策を行うには、通信講座やスクールを活用するのもおすすめです。
独学が難しい理由③教材選びが難しい
消防士採用試験の教材の選び方にはコツがあります。
書店で購入しようとしても、種類が豊富とは言えないでしょう。
過去の試験情報を手に入れたくても思うようにいかないことも多いです。
参考書や学習書に迷ったら、消防士採用試験の対策講座もおすすめできます。
試験の教材がそろっているだけでなく、専用カリキュラムで効率よく学べますよ。
消防士(消防官)試験対策におすすめの予備校・通信講座
アガルートアカデミーは消防士試験対策におすすめの予備校・通信講座です。
公務員向けの講座は、教材のクオリティにも力を入れています。
通信講座なので家にいながら勉強できることも魅力ですね。
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消防士(消防官)試験は論文・面接対策も必須
消防士試験は暗記や体力だけでは乗り切れません。
論文・面接の対策も十分に行いましょう。
目安の勉強時間は800時間ですが、クリアしたからと言って過度に安心しないでください。
勉強はどれだけ時間をかけても、頭に入らなければ試験で力を出せません。
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