皇宮護衛官は、皇族の身辺警護を担当し、皇居や御所などで警護や警備にあたる国家公務員専門職です。
皇宮護衛官は公安職(警察)にあたりますが、高い専門性が求められることから、募集に際し一般的な警察官とは別に、皇宮護衛官採用試験が設けられています。
そんな皇宮護衛官になるには、具体的にどのような試験を受ければ良いのでしょうか。
受験資格を得るために学歴などの制限はあるのでしょうか。
この記事では、皇宮護衛官を目指す方に向けて、皇宮護衛官の具体的な試験内容や難易度について解説します。
また、試験の難易度(倍率)や試験日程のほか、皇宮護衛官に向いている人の特徴、皇宮護衛官の給与・年収目安も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
- この記事でわかること
- 皇宮護衛官の仕事内容
- 皇宮護衛官の受験資格
- 皇宮護衛官採用試験の概要・難易度・試験日程
- 皇宮護衛官の給与・年収の目安
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皇宮護衛官採用試験の難易度
合格率の目安としては、大卒程度で2.3%、高卒程度でも2.3%ほどです。
試験の難易度自体は一般職と変わりませんが、皇宮護衛官はその中でも成績優秀者が採用されますので、難易度はやや難しいとなっています。
皇宮護衛官採用試験の倍率は6.49倍
皇宮護衛官採用試験の採用倍率は高く、大卒程度試験で令和5年で6.49倍です。
高卒程度試験では同じく令和5年で6.69倍となっています。
皇宮護衛官の試験合格に必要な勉強時間は800~1,200時間
皇宮護衛官の試験合格に必要な勉強時間は800~1,200時間程度です。
皇宮護衛官を含めた国家公務員は、採用されるために多くの勉強時間が必要です。
不安な人は1,500時間を目安に学習スケジュールを立てましょう。
受験する前年の勉強時間は1日3~5時間程度です。
受験する年になったら、勉強時間を徐々に増やしていく方法がおすすめです。
皇宮護衛官採用試験の概要
皇宮護衛官を対象とした公務員試験の概要をまとめました。
実施は年1回の試験です。
学習計画を立てて、余裕をもって試験に挑戦しましょう。
資格試験料は無料
公務員試験を受験するときには、受験料はかかりません。
ただし、会場までの交通費などは自費です。
皇宮護衛官の採用試験は年1回
試験は大卒程度の一次試験・二次試験で各年に1回、高卒程度も同様となります。
一次試験は札幌・仙台・東京・名古屋・京都・広島・高松・福岡・熊本・鹿児島・那覇で行われます。
二次試験は札幌・仙台・東京・京都・広島・福岡・那覇が実施地となります。
皇宮護衛官採用試験の合格発表
合格発表は、大卒試験程度の場合、令和6年度で第一次試験合格発表が6月26日(水)9:00、第二次試験後の最終合格者発表が8月13日(火)9:00になっています。
高卒試験程度の場合だと、第一次試験合格発表が10月9日(水)9:00、第二次試験後の最終合格者発表が11月19日(火)9:00です。
皇宮護衛官採用試験の受験資格
皇宮護衛官採用試験には、「高卒程度試験」と「大卒程度試験」の2種類があり、それぞれに受験資格が設けられています。
■高卒程度試験
1.護衛官
(1)2024(令和6)年4月1日において高等学校又は中等教育学校を卒業した日の翌日から起算して5年を経過していない者(2019(平成31)年4月1日以降に卒業した者が該当します。)及び2025(令和7)年3月までに高等学校又は中等教育学校を卒業する見込みの者
(2) 人事院が(1)に掲げる者に準ずると認める者
2.護衛官(社会人)
1984(昭和59)年4月2日以降に生まれた者(上記1の(1)に規定する期間が経過した者及び人事院が当該者に準ずると認める者に限る。)
■大卒程度試験
1.1994(平成6)年4月2日~2003(平成15)年4月1日生まれの者
2.2003(平成15)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの
(1) 大学を卒業した者及び2025(令和7)年3月までに大学を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者
(2) 短期大学又は高等専門学校を卒業した者及び2025(令和7)年3月までに短期大学又は高等専門学校を卒業する見込みの者並びに人事院がこれらの者と同等の資格があると認める者
社会人枠の募集の有無は、年度によって異なります。
今年度は高卒程度試験において社会人枠の募集がありますが、年度によってはなかったり、大卒程度試験で社会人枠募集が行われたりするのも特徴です。
皇宮護衛官採用試験の科目
皇宮護衛官採用試験の科目を確認しましょう。
基礎能力試験と人物試験は、公務員試験に共通する内容です。
法律や皇室に関する知識・柔道・剣道などの武道や消防の技術など、公務に必要な知識や技術も必須となります。
基礎能力試験
試験内容は、大学卒業程度で第一次試験が基礎能力試験は公務員として必要な能力についての筆記試験は40題・知識分野27題・13題です。
27題の内訳は分取理解11、判断推理8、数的推理5、資料解釈3、13題の内訳は自然・人文・社会で13です。
課題論文試験は文章による表現力、課題に対する理解力・判断力・思考力についての筆記試験、時事的な問題に関するもの、具体的な事例課題により皇宮護衛官として必要な判断力・思考力を問うものになります。
人物試験(人柄、対人的能力などの個別面接)
第二次試験では人物試験(人柄、対人的能力などの個別面接)。
身体検査(胸部疾患、血圧、尿、その他一般的内科系検査)。身体測定(身長・体重・視力・色覚の測定)。
体力検査(上体起こし、立ち幅跳び、反復横跳びの身体の筋持久力についての検査)があります。
皇宮護衛官採用試験に合格するポイント
皇宮護衛官採用試験に合格するポイントは以下の通りです。
- 出題分野をくわしく把握する
- 英検準1級程度の力を付ける
- 歴史分野では要点をまとめる
ポイントをつかみ、採用に近づきましょう。
ポイント①出題分野をくわしく把握する
国家公務員試験は地方公務員試験よりも難しく、出題分野は知能分野(資料解釈、数的推理、判断推理、文章理解)から27題と知識分野(自然、人文、社会)から13題と課題論文試験から2題が出題されます。
皇宮護衛官は警察庁に属する皇宮警察本部の一員で、警察庁に属していますが、警察官ではありません。
皇宮警察の試験は、国家公務員試験となります。
ポイント②英検準1級程度の力を付ける
文章理解では国語の読解問題と英文の解釈が出て、レベル的には高校卒業程度の国語の読解力、英検準1級程度の力があればクリアできます。
英語は高校で使った教科書程度の英単語の復習が必要となります。公務員試験のテキストを数冊こなして問題に慣れる必要があります。
英語は市販のテキストを購入してやることですが、問題量が求められます。
ポイント③歴史分野では要点をまとめる
歴史分野では、皇室の移り変わりや、皇室を巻き込んだ事件などが出題されやすいので、要点をまとめてみる必要があります。
課題論文試験は、作文ではなく論文ですので注意が必要です。
皇宮護衛官の部門ごとの仕事内容
皇宮護衛官とは、天皇・皇后両陛下や皇族の護衛と皇居、御所、御用邸などの警衛を行う仕事です。
警察庁の附属機関である皇宮警察本部に所属し、身分は国家公務員になります。皇宮護衛官が所属する皇宮警察本部には、大きく分けて2つの部門があるのも特徴です。
- 護衛部門
- 警備部門
それぞれの仕事内容について詳しく紹介します。
護衛部門
皇宮護衛官の護衛部門は、おもに皇族の身辺警護を担っています。
居住区域周辺だけでなく、場合によっては行事や祭祀などで護衛任務にあたることがある仕事です。国内だけでなく、海外公務に帯同することもあります。
皇宮護衛官の中で、天皇皇后両陛下や皇族の方々のもっとも近くで身辺警護にあたる皇宮護衛官は「側衛官(そくえいかん)」と呼ばれる一握りのエリートです。
側衛官は皇宮護衛官の中から選抜され、側衛術と呼ばれる独自の逮捕術を習得しているほか、茶道や華道などの日本文化に関する知識を有しています。
中には、女性皇族の身辺警護にあたる女性の皇宮護衛官がいるのも特徴です。
警備部門
皇宮護衛官の中で、皇居周辺の警備にあたるのが警備部門の仕事です。
皇居などで門番のようにじっと立ったまま警備にあたっているのは、警備部門に所属する皇宮護衛官となります。
皇宮護衛官は、皇居周辺の警備だけでなく、一般参賀などの儀式や宮中行事の際に、何事もなく平和に終わらせるように警戒・警備することも大切な仕事です。
主となる警備の仕事に加え、皇室や日本文化に関する知識、皇族と接するにふさわしい立ち居振る舞いなども求められます。
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皇宮護衛官の平均年収・給料
皇宮護衛官は国家公務員一般職の公安職俸給表の給与形態が適用され、国家公務員の一般行政職より高めの水準となっています。
手当も住居手当・通勤手当・深夜勤務手当・超過勤務手当・扶養手当などのほかに年に2回ボーナスも支給されます。平均年収は約630万円といわれています。
また昇任試験などを受けて階級が上がることによっても給料はアップしていきます。
皇宮護衛官の将来性
このように、皇宮警察は日本を代表する皇室守護のために欠かせない組織です。
皇宮護衛官は全体で約900名程度ですが、毎年新たな人材を一定人数採用し、一人前の皇宮護衛官になるように育てており、皇宮護衛官は国家公務員であるため、安定した環境で働くことができると言えます。
将来性という面で見ると、皇宮護衛官は自分の希望や能力、適正に応じてさまざまな仕事に挑戦することができるため、騎馬隊や白バイ隊、特別警備隊などに入るには厳しい訓練も必要になりますが、挑戦することによって自分の可能性を広げることができます。
皇宮護衛官には階級があり、決まった年数勤務してからは昇任試験を受けることができます。
試験に合格すれば昇任して階級が上がり、それに応じて給料もアップしていきますので、安定した仕事でありながらも、自分の意欲次第でどんどん成長していくことができる仕事です。
日本の財政状況の悪化から、公務員の削減が進められていまが、皇宮護衛官の人数は少なく、また任務も特殊であることから、大幅な人数の削減はないと考えられます。
皇宮護衛官に向いている人
天皇皇后両陛下や皇族各殿下をお護りするのが皇宮護衛官の使命です。
日本の伝統ある皇室を守るということは、決して簡単な気持ちで務まるものではなく、何よりも正義感にあふれ、いつでも誠実な対応をとれることが重要な適正として挙げられています。
皇宮護衛官は、いわゆる「日本文化」に親しみを持つことが求められます。
日本文化に興味・関心を持ち学ぼうとすることが大切です。
立ち番中は立ち続けていなければいけなく、不審者が侵入しないようにしっかりと見張る必要があります。
静けさに包まれることも多いので、そのような場所でも集中して仕事を続ける忍耐力が必要です。
皇宮護衛官は国賓や大使など重要なゲストをお迎えした時もきちんと任務をこなさなければならず、言葉遣いや立ち振る舞い、マナーなどの礼儀正しさが必要になります。
皇宮護衛官採用試験の独学合格が難しい理由
皇宮護衛官採用試験の独学合格が難しい理由をまとめました。
- モチベーションを保ちにくい
- テキストや教材選びが難しい
- 独学は面接対策が難しい
独学だけで学習を進めるには、準備段階から工夫がいります。
独学が難しい理由①モチベーションを保ちにくい
独学はモチベーションを保ちにくいことがデメリットです。
予備校や通信講座と比べると、比較対象もいません。
勉強の進捗が分かりにくく、成長を感じにくいでしょう。
学習に対する評価がないことも、モチベーションを保ちにくい要因です。
独学が難しい理由②テキストや教材選びが難しい
国家公務員採用試験向けのテキストや教材選びは難しいです。
テキストの出版社によって、教材のスタイルや言い回しが異なります。
自分に合った教材を見つけるだけでも、時間がかかってしまう可能性は高いです。
教材やテキスト選びに迷ったら、通信講座などをうまく利用しましょう。
独学が難しい理由③独学は面接対策が難しい
独学では、皇宮護衛官採用試験の面接対策が効率的ではないでしょう。
アドバイスが受けられないので、面接対策が十分ではないこともあります。
面接では人物が重視されるため、態度や身だしなみにもこだわる必要があります。
皇宮護衛官になるためには、面接の際に言葉遣いや一般常識もチェックされるでしょう。
皇宮護衛官採用試験対策におすすめの予備校・通信講座
皇宮護衛官採用試験対策には、アガルートアカデミーがおすすめです。
アガルートアカデミーの公務員対策講座なら、要点が効率的に学習できます。
受講者へのサポートが整っていることも、アガルートアカデミーの魅力といえるでしょう。
皇宮護衛官は人命・伝統を守る大切な役職
皇宮護衛官はその名の通り、皇居などの警備にあたり、天皇・皇族の人命を守る役職です。
ただし、皇族以外にも皇居周辺の人命を守ることに繋がったり、皇宮護衛官という役職を後継することそのものが、日本の伝統を守る意味合いもあります。
決して簡単な採用試験ではありませんが、挑戦する意義はあります。