待機児童が多い日本では、保育士はとても貴重な存在です。
年々その需要は高まっており、将来保育士を目指している方や子育てを経験してから保育士の仕事に興味を持ったという方も多いのではないでしょうか。
今回はそういった方に向けて、保育士の資格取得に年齢制限はあるのか、そして平均年齢や何歳まで働けるのかについて解説していきます。
合わせて保育士として長く働くためのポイントや将来性についてもご紹介していますので、保育士として長く勤めたいと考えている方もぜひ参考にしてください。
保育士の資格に年齢制限はある?
まず保育士になるためには、「保育士」という国家資格を取得する必要があります。
保育士資格を取得する方法は大まかに分けて2つあります。
- 指定保育士養成施設を卒業する
- 保育士試験に合格する
指定保育士養成施設は全国に675か所あり、大学や短大、専門学校で保育実習や保育士になるためのカリキュラムの受講を経て卒業することで、そのまま保育士の資格を取得できます。
もう一つは保育士試験に合格する方法で、保育士試験を受けるには「指定以外の短大、専門学校を卒業するか大学で2年以上在籍し62単位以上修得する」もしくは「児童福祉施設で2年以上実務経験をする」といった受験資格を満たす必要があります。
保育士の資格に年齢制限はない
結論から先にお伝えすると、保育士資格に年齢制限はありません。
保育士は児童福祉法によって以下のように定義されています。
「保育士とは、第十八条の十八第一項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」
このように児童福祉法には保育士に関して「保育に関する専門的な知識や技術が必要である」という旨の記載はありますが、「保育士資格に年齢制限がある」というような記載はないので、年齢の上限は設けられてありません。
しかし、保育士資格の取得には指定の大学や短大、専門学校を卒業するか、2年以上の実務経験が必要になりますので、保育士として働き始める年齢はおおよそ20歳〜でしょう。
保育士の資格を取得した後は、保育士登録を行い各都道府県で「保育士登録証」の交付を受けることにより、正式に保育士として働けるようになります。
保育士の平均年齢
保育士の資格を取得するのに年齢制限はありませんが、実際に保育士として勤務しているのは20〜30代といった若い方が多いです。
こちらでは、保育士の平均年齢について解説していきます。
①保育士の平均年齢は35.8歳
厚生労働省の「平成29年度賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均年齢は35.8歳となっており、そのうち女性保育士の平均年齢は36.1歳です。
保育士の平均年齢は待遇の改善やキャリアアップ制度の見直しにより年々上昇していますが、保育園のクラス担任を主に受け持つのは20〜30代の保育士が多いです。
40代以上になると主任や副主任といった役職を任されることが増え、若い保育士の指導や園の運営サポートなどが主な業務になります。
保育士は年齢によって採用が厳しくなるということはありませんが、クラス担任になりたい場合はなるべく早い段階で保育士を目指したほうがいいでしょう。
保育士の年齢の割合
現在の最新データである、平成30年度「厚生労働省 保育士の現状と主な取組」によると、保育士施設の年齢層別職員の構成割合は以下のようになっています。
年齢 | 構成割合(%) |
---|---|
30歳未満 | 32.9 |
30代 | 25.6 |
40代 | 20.5 |
50代 | 14.4 |
60代 | 5.7 |
70歳以上 | 0.7 |
データを見ると30歳未満の保育士の割合は32.9%で、30代の保育士の割合は25.6%となっており、20~30代の保育士が全体の約6割を占めていることがわかります。
このように若い保育士が多い理由として以下の2つが挙げられます。
結婚や出産をきっかけに退職
男性の保育士も少しずつ増えてきているとはいえ、現在保育園などの保育施設で勤務している方の9割以上は女性です。
保育施設において20〜30代の保育士が多く活躍していますが、女性特有の結婚や出産などのタイミングで保育士の仕事から離れてしまう方も多いです。
産休や育休などの制度を利用して復職する方もいますが、保育園などの施設ではそういった休みを取りづらく退職せざるをえないという現状があります。
40代以降は体力面に問題が出る
保育士の現場では子どもと触れ合ったりお世話をする上で、体力を必要とする仕事が多いです。
加齢で体力が落ちてくると体力仕事が難しくなってしまうこともあり、活発な子どもたちを相手にするにはどうしても若い職員を中心に採用する必要があります。
また、年齢が上がるにつれて就くポストも上がるため、人件費削減のために若い保育士を多く雇う保育園があることも保育士の年齢層が下がる要因となっています。
何歳まで働ける?保育士の定年事情
保育士の資格を取得するのに年齢制限は設けられていませんが、実際に保育士として働く場合に何歳まで働けるのか気になる方も多いでしょう。
保育士の定年は、勤務する保育園が公立か私立かによって変わりますので、以下からそれぞれ詳しく解説していきます。
①公務員保育士の定年は60歳
公立の保育園に勤務した場合は「公務員」という扱いになります。
公務員保育士の定年も一般的な公務員に準ずるため、定年は60歳となりますが、再雇用制度により65歳まで勤務することが可能です。
②私立保育士の定年は経営者による
私立保育園の場合は、公務員保育士とは異なり経営者が定年を決めることができます。
そのため、勤めている私立保育園によって定年の年齢は前後しますが、ほとんどの私立保育園が公立と同じように60歳を定年としています。
近年は保育士の需要が高まっていることから私立でも再雇用制度を設けている園が多くなってきています。
保育業界は実務経験が豊富であればあるほど重宝される傾向が強いので、再雇用制度を利用すれば60歳を超えても保育士として勤務することは十分可能です。
保育士として長く働くポイント
前の項目で保育施設では20~30代の保育士がメインで働いているとご紹介しましたが、40代や50代以上の保育士も一定数以上働いています。
若い方が多い職場とはいえ、なるべく長く保育士の仕事を続けたいと考えている方もいるでしょう。
ここから保育士として長く働くポイントを3つに分けてご紹介します。
①無理せず自分に合う雇用形態で働く
保育士として働く上で、給料面や生活が安定することを考えると正社員として働くことが一番良いと思うかもしれません。
しかし、正社員になると基本的にフルタイムでの勤務になるため残業が発生しやすく、土日や祝日でも行事と重なれば出勤が必要になってしまいます。
仕事量も多いため、人によっては家庭と仕事との両立が上手くできなくなってしまうかもしれません。
正社員の保育士として働くことが精神的・肉体的にも難しいと感じたら、パートやアルバイトといった非常勤などの雇用形態に変えることを検討してみましょう。
あるいは、派遣の保育士として勤務するという方法もあります。派遣の場合は勤務時間や出勤日数を自分で調整できる上に、時給制のため自分のペースに合わせて効率良く働くことができます。
また、福利厚生は勤務している保育園ではなく人材派遣会社の雇用条件などが適用されるため、残業やシフトを入れた日以外の勤務がほとんど発生しないのも利点です。
②好待遇な環境の保育園に勤める
給料が安いというイメージが強い保育士も、近年は待遇が改善されキャリアアップ制度が見直されています。保育園の増加に伴い、保育の質を上げるために待遇を良くして保育士を雇いたいというところも増えてきました。
スキルアップなどにより給料を上げることは可能ですが、まずは「役職が充実している」「キャリアアップ研修後は確実に加算手当が付く」「賞与が高い」などといった待遇の良い保育園を探すようにしましょう。
元々給料が低いところや制度が整っていない場所で勤務していても、働く上でのモチベーションの低下に繋がってしまいます。
③ストレス発散を欠かさない
保育士という仕事を続けていると、職場環境や人間関係が原因で無意識の内にストレスを抱えてしまうことがあります。
ストレスが溜まっている状態だとやる気も減ってしまい、仕事への意欲も下がってしまうでしょう。ストレスの増加で体調を崩してしまうこともあるため、適度な運動や休日にリラックスすることがポイントです。
また、仕事に一生懸命になるあまり、休んでも疲れが取れずそれまで持っていた趣味を続けられなくなってしまうこともあります。
忙しい中でも休めるときにはしっかりと休み、なるべく時間を見つけ自分の好きなことをして心身の健康を保つようにしましょう。
保育士に将来性はある?
保育士は若い方が雇用されやすいという傾向があるため、将来的に長く続けられる仕事なのか、続けることにメリットはあるのかと思う方もいるかもしれません。
結論から先にお伝えすると、保育士はとても将来性のある職業です。
少子高齢化にも関わらず保育士の求人は増加しており、保育士資格を持っていれば引く手数多と言っても過言ではないでしょう。
以下では保育士に将来性がある理由を3つに分けて解説していきます。
- 有効求人倍率は全職種平均より高い
- 少子高齢化でも待機児童は多い
- 保育士は絶対にAIで代替できない
①有効求人倍率は全職種平均より高い
厚生労働省の資料によると、令和4年の全国の保育士の有効求人倍率は1.98倍となっています。
全職種の平均は1.17倍ですので、保育士は全職種の平均より有効求人倍率が高い職種で、求められる需要も高いことがわかります。
各都道府県の中で例に挙げると、東京都の保育士の有効求人倍率は2.56倍で、倍率だけで見るとあまりピンとこないかもしれませんが、「求職者1人に対して約2.5件の保育士の求人がある」という計算になります。
もちろん全ての保育園が自分の理想的な条件に合っているわけではないかもしれませんが、求人が多ければ多いほど選択肢は広がるでしょう。
②少子高齢化でも待機児童は多い
現在では雇用機会均等法の改正などにより女性の社会進出が進み、それに伴って共働きの家庭が増加しています。
日中は仕事に出ている夫婦にとって、幼稚園よりも遅い時間まで子どもを預かってくれる保育園は欠かせないものであり、少子高齢化でありながらも入園希望者は年々増えています。
そのため、各地域の保育園数と入園希望者の供給のバランスが合わず、いわゆる「待機児童」の存在は現在日本の課題となっています。
待機児童を減らすために様々な場所で保育園の新設や増設が急ピッチで行われており、保育士の求人は今後も増え続けていく見込みです。
また、保育士の就職先は保育園だけに限られているわけではありません。病院内や企業に設けられた保育施設、商業施設内での託児所など、保育士としての活躍の場は多方面に広がっています。
慢性的な保育士不足に陥っている今、保育士の資格を持っていれば働き口に困るということはないかもしれません。
③保育士は絶対にAIで代替できない
保育士に求められるものとして「子どもが好きな気持ち」や「保育士として働くために必要な体力があること」、「保育に関する能力や知識、経験」などが挙げられます。
先端技術は日々発達しておりAIの導入が色んな産業で本格化していますが、保育士の仕事自体はAIのようなロボットに任せきりにできるものではありません。
例えば見守りロボットなど補助業務をAIに任せて作業の効率化を図ったり保育士の負担を軽減したりすることはできるかもしれませんが、保育士は「一人の人間である子どもと真摯に向き合って成長を見守っていく仕事」です。
子どもの心を育んでいくためにも、AIではなく人が寄り添って子どもの繊細な感情の動きなどを感じ取る必要があります。
保育の現場においてはAIに代替できる作業は少ないため、今後も保育士の仕事がAIに奪われるという心配はないでしょう。
保育士の資格に年齢制限はある?|まとめ
保育士の資格を取るのに年齢の制限はありません。
平均年齢は35.8歳で20~30代の割合が約6割と若い方が多く活躍していますが、結婚や出産を機に一度離職しても復帰しやすい職業です。
公立保育園であれば60歳で定年を迎えた後も再雇用で65歳まで勤務が可能で、私立保育園であれば経営者が定年を決められますので、やる気があれば長く続けられる仕事です。
保育士は正社員に限らず様々な雇用形態で働くことができ、年々需要が高まっている将来性のある職業です。
興味のある方は目指してみてはいかがでしょうか。
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