地質調査技士とは建物やトンネルなどの建設に関わるボーリング操作や現場の管理、土質の性質などの報告書などの作成などを行う資格となります。
長い実務経験など必要な受験資格が厳しく設定されている資格ですが、今回はそんな地質調査技士試験について、難易度や合格率、試験内容と合格基準、そして年収や将来性などを含めた総合的なまとめでお送りします。
地質調査技士ってどんな仕事をするの?
地質調査技士は建物などの建設を行うための地質調査を行います。
地質調査はボーリングマシンなどを使用して行うことが多いです。ボーリングマシンの操作だけでなく現場の工程管理や安全管理、調査を行った土質の解析・分析、判定を行い報告書の作成なども行います。
また、建設設備の点検などを行う維持管理業務、自然災害を対象とした防災業務や土壌・地下水汚染の状況を把握したり対策検討を行う環境業務なども行っております。
地質調査技士は協会指定の専門学校や建築・工業科の高校や専門学校を卒業していると、実務経験歴が短くても受験する事が出来るので、地質調査技士の試験には建築・工業学校への進学が非常に有効な手段となっています。
土木系の工事には必ず必要となる資格ですから、建設会社社員なら取得しておきたい資格の1つです。
資格試験には2~8年の実務経験が必要とされますが、建設・土木業界の知識や入札等の知識、設計施工や管理技法等も問われる為、建設や土木工学、工業系の専門学校等へ進学すれば確実に知識が身につき、試験はもちろん業務上でも役立つので、受験前や就職前に進学する事を視野に入れておくことが大切です。
複数の学校の資料を無料で請求し、自分が求める学習が出来るかを比較してみる事が、地質調査技士への第一歩になるのです。
地質調査技士に向いている人
地質調査に関わる工事の安全管理を行うことが必要となるため現場の取りまとめるリーダーシップが必要となります。
特に、建設を行う工程において、地質調査は一番最初の業務となるため、他の業種との交流も必要不可欠です。ある程度高いコミュニケーション能力も必要でしょう。
工程管理ばかり目を向けず、調査の品質をしっかりと行う調査の目的をしっかりと遂行できる使命感も重要です。
また、現場作業となりますので体力も必要です。
地質調査技士の受験資格
地質調査技師には3つの部門があります。
- 現場調査部門
- 現場技術・管理部門
- 土壌・地下水汚染部門
それぞれの部門で条件の違う学歴や実務経験を必要とします。
現場調査部門
ボーリング実務経験通算5年以上か、協会が指定する指定学科卒業のうえ、2年以上の実務経験を積んだ者に受験資格が与えられます。
専門学校指定学科とは、
- 札幌工科専門学校(建設システム学科ジオ(地質)エンジニアコース)
- 東北理工専門学校(調査設計科)
- 新潟工科専門学校(土木開発工学科環境地質コース)
- 国土建設学院(建設学部土木地質工学科)
- 中央工学校(土木工学科環境地学専攻)
のことを指しており、これらの指定学科に該当する対象者は資格試験が免除となり、書類審査が合格基準となります。
現場技術・管理部門
大学または工業高等専門学校(5年課程)で、
- 土木工学
- 建築学
- 地質学
- 地球物理学
などの地質調査に関する課程を専攻・卒業して実務経験3年以上か、大学または工業高等学校の、上記学科以外の理工系を専攻・卒業して実務経験5年以上、もしくは実務経験8年以上を積んだ者に受験資格が与えられます。
土壌・地下水汚染部門
大学または工業高等専門学校の
- 土木工学
- 建築学
- 地質学
などの地質調査に関する課程および、化学(工学)等環境に関する課程を専攻・卒業して実務経験3年以上か、大学または工業高等学校の上記以外の理工系を専攻・卒業して実務経験5年以上、もしくは実務経験8年以上を積んだものに受験資格が与えられます。
地質調査技士になるために必要な知識
ボーリングマシン運転の基本動作、積算、調査計画、土質判定、現場の工程管理や安全管理、柱状図や断面図の作成、成果品の品質管理、報告書のとりまとめ、ボーリング調査の業務責任者としての役割などは各部門の共通の必要な知識となります。
現場調査部門ではボーリングマシン操作に関わる特殊技能、現場技術・管理部門では解析・分析能力などが必要です。
土壌・地下水汚染部門では土壌地下水に関わる専門能力が必要となります。
地質調査技士資格取得の為の勉強法
受験するために実務経験が必要となるため、ほとんどの方はある程度の知識を有する状態で受験に臨むことになるでしょう。
参考書などを読みながら、自身の知識と参考書の記載する内容との乖離がないか確認しながら勉強を進めていきましょう。また、問題集や過去問を使用して試験問題の傾向をつかんで対策していくことも大切です。
確実に合格したいなら、専門学校や大学等へ進学し、知識と技能を養っておく事も大切ですので、就職前に進学しておけば不安要素も無くなります。
特別注意したい点として、記述問題では長文を書くことを要求されます。自身の意見を文章にするには書くことに慣れていないと意外と苦労するものです。繰り返し文章にする練習を行いましょう。
地質調査技士の難易度・合格率・合格基準や試験内容について
合格基準は、各部門それぞれ80%以上の正答率が必要とされています。
合格基準だけで見ると若干厳しめの数字とも取れますが、 地質調査技士の試験は難易度そのものはそれほど難しい試験ではないとの声もありますが、しっかりと知識を養っていなければならず、試験の内容も幅広い分野からの出題となる為、確実に合格ラインに達する為には土木工学や建築・建設等の大学や専門学校に進学する事が望ましいでしょう。
全国に5つある専門学校の指定学科を卒業していて、ボーリング調査関連機器の操作実務が2年以上あれば、試験を免除され書類審査で合否が決まるという事もあるので、進学先の学校を選ぶ際には複数の学校の資料を請求して比較検討する事が大切です。
一般の方は受験することもできず、長い実務経験や専門系の学校修了などの受験資格が必要となっているのでそれも含めれば資格の取得難易度は高めと言えるので、しっかりと事前準備をしておきましょう。
地質調査技士資格の合格率
平成28年度の合格率は
- 現場調査部門:39.6%
- 現場技術・管理部門:31.9%
- 土壌・地下水汚染部門:34.2%
となっております。
近年の合格率で見てみても、
- 現場調査部門:39.7%
- 現場技術・管理部門:32.5%
- 土壌・地下水汚染部門:34.2%
となっており、おおよそ変動はありません。
地質調査技士試験科目等の内容
各部門についての試験内容についてまとめていきます。
現場調査部門
現場調査部門の試験は筆記試験と口頭試験があります。筆記試験は四肢択一式のマークシートで必須問題60問、選択問題20問は土質分野、岩盤分野のいずれかを選択します。
四肢択一式問題択一式 | 社会一般、建設行政、 入札・契約制度等の知識 |
合計80問 |
---|---|---|
地質、測量、土木・ 建築一般等の知識 |
||
現場・専門技術 の知識 |
||
調査技術の理解度 | ||
管理技法 | ||
記述式問題記述式 | ボーリング作業、 工程・安全・ 品質管理など |
1~2問 |
口頭 試験 |
ボーリング調査に関する必要な 知識、経験などを中心に試問 |
現場技術・管理部門
現場技術・管理部門の試験は口頭試験がなく、筆記試験のみとなります。
四肢択一式問題択一式 | 社会一般、建設行政、 入札・契約制度等の知識 |
合計100問 |
---|---|---|
地質、測量、土木・ 建築一般等の知識 |
||
現場・専門技術 の知識 |
||
調査技術の理解度 | ||
解析手法、設計・ 施工への適用 |
||
管理技法 | ||
入札・契約、 仕様書等の知識 |
||
記述式問題記述式 | 倫理網領 に関する問題 |
必須 |
地質調査技士 等に関する問題 |
選択 |
記述式の選択問題については、
- 地質調査全般:2問
- 土質試験・岩石試験技術:1問
- 物理探査・検層専門技術:1問
の4問の中から1問を選択する方式となっています。
土壌・地下水汚染部門
土壌・地下水汚染部門も同じく筆記試験のみとなります。
四肢択一式問題択一式 | 社会一般、建設行政、 入札・契約制度等の知識 |
合計100問 |
---|---|---|
地質、測量、土木・ 建築一般等の知識 |
||
現場・専門技術 の知識 |
||
調査技術の理解度 | ||
管理技法 | ||
記述式問題記述式 | 倫理網領 に関する問題 |
必須 |
土壌・地下水汚染調査 の計画や現場技術、 修復技術に関する問題 |
選択 |
記述式問題では「倫理網領に関する問題」から1問、「土壌・地下水汚染調査の計画や現場技術、修復技術に関する問題」からは3問ある中から1問を選択して解答します。
地質調査技士の試験料や合格発表など日程について
地質調査技士資格の試験料は12,960円(税込)です。
合格後には、登録手数料が8,640円(税込)と、5年ごとの更新料として全地連会員会社所属の場合は10,800円(税込)、それ以外の場合は16,200円(税込)の費用がかかります。
地質調査技士の試験日程
- 【願書受付】
- 4月上旬~5月上旬まで
- 【試験日】
- 7月上旬
- 【合格発表】
- 9月上旬~中旬
合格発表は、協会ホームページなどで受験番号が掲載されます。
地質調査技士資格取得後の就職先・年収・報酬相場
地質調査技士の資格を取得すれば建設業界での就職に困ることはありません。
地震や大雨による土砂災害等で需要が高まっている地質調査技士にいち早くなる為には、大学や専門学校等での学習で基礎知識や応用力を身に付けておき、就職後の実務経験を積んでから資格取得に臨む方が取得までの期間を短くできます。
大学や専門学校は無料資料請求先に数多く掲載されているので、土木工学や関連業務の分野を見て地質調査に関連する学校を探してみましょう。関連する業務は以下の職業例やその他資格を参考にして下さい。
まず地質調査技士所持者の職業例としては、
- 地質調査会社
- ボーリング業
- 総合建設会社
- 建設コンサルタント
- 設計会社
等が挙げられます。
地質調査技士の年収・給料相場
平均年収は400万円~700万円ほどになると言われています。
建設現場では必須である地質調査と近年では環境に対する調査なども行っており、コンサルタント業として年収が高額になるところもあります。
地質調査技士と同じ分野の他の資格
- 測量士
- 建築士
- 技術士
- 土木施工管理技士
いずれも国家資格で、レベルも高い資格です。
設計・計画などに関われるさらに上のレベルを目指すことのできる資格となっています。
地質調査技士の現状と将来性
昭和41年の地質調査士資格検定制度が発足されてから約21,000名の地質調査士が誕生しました。
現在も登録継続中の資格者は約13,000名となっており現場で活躍しております。平成15年から部門制が導入され、平成27年には3つの部門とも国土交通省の技術者規定に登録されました。
地質調査の受注件数は民間が6割以上と国や自治体などからの依頼より多いですが、受注金額となると国や自治体が6割以上を占めるようになります。
地質調査技士の将来性
地質調査会社への受注件数は年々減少しており特に民間からの受注件数が5年間で半数近くに減少するなど厳しい環境ではあります。
しかし、国や自治体からの受注件数は受注金額は一定を保っています。
公共性の高い仕事として国や自治体との取引を行うことができれば安定する職業となります。
地質調査技士の独立について
独立をすることは可能です。実務経験が必要な資格ですので、元の会社でどれだけ人脈を広げて仕事を行うかで独立の成功度合は変わるでしょう。
また、民間の仕事だけでなく、公的な仕事を多く行って繋がりを持っておくことが必要となります。
地質調査技士資格の難易度や合格率・試験情報まとめ
地質調査技士資格試験の難易度や合格率、合格基準、年収など総合的にまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?
地質調査技士になるために必要な知識を得られる高校や大学を出ていない場合は実務経験にかかる期間が長く、試験を受けるまでに一苦労してしまいますが、逆に学校や実務経験から知識を得た状態で挑戦する際には、勉強に苦労する点は比較的少なくなるでしょう。
資格取得を楽にするためには大学や専門学校で学んだことを実務で確立させ、経験を積んでから試験に臨む事が有効なので、無料資料請求から学校を選ぶのが最短であり、確実な方法なのです。
個人宅はもちろん公共の建造物や施設を作る際に必要となる資格ゆえに、国や自治体からの委託される大きな仕事はとても大切でやりがいのある事です。