- 測量士は需要が見込めて将来性があるの?
- 測量士の仕事はAIに取られない?
- 測量士としてのキャリアアップってどうしたら良いの?
このような不安を解消します。
結論からお伝えすると、測量士の将来性はありますし、供給が追い付いていないほど需要があります。
本記事では、測量士の将来性や需要についてデータから読み解き、AI化によって測量士の仕事がなくならないのかについて。
加えて、測量士としてのキャリアアップについて、専門性を高めるための具体策やダブルライセンスの有効性について紹介します。
需要は上がっているが測量士の数が減少傾向
令和4年8月に発表された国土交通省の調査によると、測量業の登録業者数は2003年の14,750業者をピークに18年連続で減少しており、現在では全盛期の約8割に留まっていることを見ると測量士自体の数が年々減少していることが分かります。
測量を行う会社には1事業所当たり1名以上の測量業登録者を配置しておくことが定められていますが、平成31年に発表された国土交通省国土地理院の調査で測量士が必要な5,360企業のうち1,000以上の企業が、測量士が不足していると回答してます。
測量士は数こそ減っているものの供給自体が足りていないことから需要はある状況です。
ではなぜ、測量士が減少しているのでしょうか。
考えられる3つの理由を解説します。
測量士の高齢化
1つ目は測量士の高年齢化です。
平成31年に発表された国土交通省国土地理院の調査によると、測量士は50歳代以上の割合が50%以上を占めています。
60歳以上でも20%以上を占めていることから、急な病気やけがで引退や廃業せざるを得ない人が増加していることが伺えます。
公共工事量の減少
2つ目の理由は公共工事量の減少です。
バブル崩壊や社会保障費の増大により日本の財政が悪化し、1990年代~2000年代にかけて公共工事量は減少していきました。
このことから受注競争が激しくなり、廃業せざるを得ない人が増加していることも測量士減少の要因となっています。
建築業界自体の人気低迷
3つ目の理由は建築業界自体の人気低迷です。
令和3年11月に発表された国土交通省の調査によると、29歳以下の就業者割合が全産業では約17%ですが、建設業のみに絞ると約12%と低い水準となっています。
このように、若いなり手がいないことも測量士減少の要因と言えるでしょう。
測量士が活躍できる場所
測量士が活躍している場所は以下の通りです。
- 測量会社
- 建設コンサルタント会社
- 測量士事務所(個人・法人)
- 地図作成会社
- 不動産会社
- 都道府県の土木課や上下水道課
- 国土交通省の国土地理院
測量士が働いている場所として圧倒的に多いのは測量会社や建設コンサルト会社ですが、個人や法人として事務所を立ち上げて独立開業するケースもあります。
また、インフラ整備の測量があるため都道府県の土木課や上下水道課、国土交通省の国土地理院などで公務員として働いている人もいます。
公務員は一般企業と比べると労働人口は少ないですが、就業先の選択肢として知っておくと良いでしょう。
測量士の仕事はAIに取られる?
近年技術の進歩は著しく、これまでなら難しいと言われていた業務も自動化や機械化が始まっています。
AIが得意なことは人間から代替していく流れは、今後も加速していくことでしょう。
測量士の仕事もドローンでの測量や、車を走らせるだけで建物の形状や標識、ガードレール、マンホールなどの測量をAIが代替し始めています。
しかし、これらはあくまで測量士が手間暇かけて行っていた業務を簡略化できる便利な手段であって、測量士の仕事そのものがなくなるわけではありません。
ドローンや車を操作するのは人ですし、集めた情報を吟味したり結果を分析するのも人です。
顧客への説明や対応、後進の育成なども人でなければできません。
以上のことからAIで測量の業務が便利になったとしても測量士の仕事がなくなることはありません。
今後の測量士に求められるもの
これまで見てきたように、測量士の仕事がなくなることはありませんが、それにあぐらをかいていては選ばれる測量士にはなれません。
そこで、選ばれる測量士になるための、今測量士に求められているもポイントを2つ紹介します。
細分化・専門化に適応する
選ばれる測量士になるためには、必要とされる知識や技術をしっかりと身に着けておく必要があります。
そして、今後の測量士としての働き方は、現在よりも更に細分化・専門化が進んでいくことが予想されています。
例えば、最近ではドローン操縦士という職業の認知度が高まっていますが、操縦技術以外に測量技術や知識が加わればドローン測量士として重宝される可能性が高まります。
ドローンであれば人では調べることが困難な土地を測量できるため、早いうちからドローンの操縦技術を身に着けておけば選ばれる測量士になれるでしょう。
また、詳しくは後述しますが測量するだけでなく建築の知識や技術を学び、工事や建設全体のコンサルティングや管理も併せて1人でできるようになると、工事や建築の専門家として他の測量士よりも選ばれやすくなるかもしれません。
測量自体は多くの場所で必要とされているため、測量士としてのスキルに何を掛け合わせるかによって様々なフィールドで選ばれる測量士になれるでしょう。
コミュニケーション能力も必要
コミュニケーション能力は、社会の中で多くの人と関わっていく上で必要な能力です。
測量士は技術職であることから、1人で黙々と仕事をするイメージがあるため知識と技術を磨けば大丈夫と思われがちですが、実際はどのような仕事においても自分1人では完結しません。
他者と情報を共有したり協力を依頼したりと関わりを持つことは、業務をすれば必ず生じます。
そのため、仕事を完遂するためには普段から他者と適切なコミュニケーションを取り、良い人間関係を作っておくことが大切です。
気軽に相談してもらいやすい、良好な人間関係を築きやすいなどの理由からコミュニケーション能力の高い測量士の方が好印象を持ってもらえるので、コミュニケーション能力も磨いておくようにしましょう。
測量士としてのキャリアアップ
測量士としてキャリアアップしていくためには2通りの方法があります。
- 専門性の高いスキルを高める
- ダブルライセンスの取得
それぞれ詳しく見ていきましょう。
専門性の高いスキルを高める
実務経験を積みながら専門性の高いスキルを高めていくことでキャリアアップを狙えます。
土地測量や地図測量など特定の分野においてのキャリアを積み重ねることで、現場の責任者として相応しい能力と信頼を得られるでしょう。
専門性のあるスキルとしては、トランシットやGPSなどの測量機器、AutoCAD、DynaCAD土木Plusなど設計用ソフト、地理情報システム(GIS)を使いこなせる能力等です。
また、測量機器の進化やドローンの登場などAI化が進んでいるため、最新テクノロジーを扱える能力があると他の測量士との差別化が図れます。
このような形で能力やスキルを磨いていくと会社の上司からの信頼を得やすく、転職の際にも大きなアピールポイントとなります。
ダブルライセンスの取得
測量士としてでなく、より幅広い業務を担当できるようになるキャリアアップの道もあります。
ダブルライセンスを取得すると測量だけでなく建築・不動産・法律における企画や設計、書類作成などにも関与できるようになり、より高い専門的な知識や技術を身につけられるので他の測量士との差別化が図れます。
資格が必要な複数の業務を一人でカバーできるため企業側からの需要も高まり、キャリアアップ以外にも転職や独立の際にも有利に働くでしょう。
取得する資格によって仕事の内容も変わるので、ダブルライセンスの取得を目指す際はどのような測量士になりたいかをイメージすることが大切です。
測量士と相性の良い資格
キャリアアップとして、ダブルライセンスを取得する際に測量士と相性の良い資格は以下の5つです。
- 土地家屋調査士
- 技術士(建設部門)
- 地理空間情報専門技術
- 行政書士
- 施工管理技士
それぞれの資格についてご紹介しながら、ダブルライセンスにおすすめの理由をご紹介します。
土地家屋調査士
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記につき「必要な土地又は家屋に関する調査及び測量を行う専門家」として、不動産の物理的状況を正確に登記記録に反映させるために必要な調査及び測量を行う資格です。
測量士の公共測量とは別に企業や個人の土地・建物の登記を受注して業務の幅を広げられるため、独立して開業している人も多くいます。
測量を行うという業務の内容が似ており、土地家屋調査士資格試験では測量士または測量士補の資格を取得している人は、午前の部の試験が免除されるというメリットもあります。
測量士とのダブルライセンスになると、測量と登記を1人で担えるため、人件費を削減できることから需要が高まりやすくなると期待できます。
技術士(建設部門)
技術士法に基づく国家資格で、有資格者は技術士の称号を使用して登録した技術部門の技術業務を行うことができます。
技術士は、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある最高位の国家資格であり、この資格を取得した人は科学技術に関する高度な知識、応用能力および高い技術者倫理を備えていることを国家によって認定されたことになります。
都市開発などで、道路や河川、鉄道を整備するための設計など建設コンサルタント業務を行う際には技術士が活躍します。
測量士とのダブルライセンスになると、建設のコンサルタント業務から関わりつつ具体的な計画立案のための測量も1人でできるため、人件費を削減できることから土地家屋調査士とのダブルライセンス保持者と同様に希少価値が上がり、需要も高まりやすくなることが期待できるでしょう。
加えて、担える仕事の量が増えることから報酬アップも期待でき、将来性もあると言えます。
地理空間情報専門技術
地理空間情報専門技術認定試験は国家資格である測量士、測量士補の資格を有する人が2~8年の実務経験を経て受験できる、日本測量協会が主催する民間資格です。
公共事業に関する入札条件の選定要件にもなっていることから測量士としての仕事の幅が広がる資格とであり、国土地理院の測量技術者資格として登録もされている資格で、現在は約10,000人が認定を受けています。
測量士とのダブルライセンスになると、公共事業の仕事を得られる可能性が上がるため人材としての希少価値が上がり、会社からの需要が高まりやすくなるでしょう。
行政書士
行政書士法に基づく国家資格で、官公署への提出書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続、行政書士が作成した官公署提出書類に関する行政不服申立て手続などの代理、作成に伴う相談などに応ずる専門職で、職務上請求を行うことができる八士業の一つです。
測量士とのダブルライセンスになると、開発許可申請の書類作成時などで図面を作成しなければならないときに1人で行えるため、需要が高くなることが期待できます。
行政書士自体が将来性のある仕事であるため、測量士との相乗効果で継続して仕事を得やすいことから、将来性・需要共にたかくなるダブルライセンスであると言えます。
建築士
建築士は、建築士法に定められた国家資格で、建物の設計、工事管理、手続きを行う建築のプロです。
一級、二級、木造の3つの資格に分かれており、建物の規模や用途、構造に応じて取り扱うことのできる業務範囲が定められています。
建築士による建築の計画や設計の前には必ず測量が入るため、測量士とのダブルライセンスであれば建築に必要な測量・計画・設計・管理・手続きが全て1人で行えるようになります
建築業界自体が人材不足であるため、測量も出来て建築士の仕事もできるとなると会社からの需要が高まりやすくなるでしょう。
施工管理技士
施工管理技士は、建設業法に基づいた施工管理技術検定を合格した人に与えられる国家資格で、建設工事が計画通り円滑に進捗するように工程や原価、安全、品質を管理・監督する仕事です。
1級と2級があり、受験するには1~11年ほどの実務経験が必要です。
測量士とのダブルライセンスになると、工事計画前の測量と現場の管理・監督を一手に引き受けることができるため、人材不足の建築業界において希少価値が上がり、需要が高まることが期待できるでしょう。
測量士の将来性や需要・キャリアアップについてのまとめ
2003年を機に高齢化や社会情勢の変化などで数が減っている測量士ですが、一定数の需要があり、供給が追い付いていない状況である上に、AI化が進んでも測量士の仕事がなくなることはありません。
そのため、測量士の将来性は十分にあると言えます。
そんな測量士としてキャリアアップする場合には、専門性を高めていくことはもちろん、ダブルライセンスもおすすめです。
測量士と相性の良い資格としては土地家屋調査士、技術士(建設部門)、地理空間情報専門技術、行政書士、施工管理技士の5つがありました。
どれも報酬アップや独立して開業も狙える資格です。
測量士の将来性や需要は十分にあるので、自身に合ったキャリアプランを立てて測量士を目指しましょう。