建築・土木業界ではビルの建設等だけでなく解体もその作業の一部となる為、コンクリートを破砕する作業は建築に係る作業において非常に重要な仕事です。
特に昨今のオリンピック需要や災害復興においては特に重要になってくる作業です。
今回は、そのコンクリート破砕作業の中でもコンクリート破砕器を用いての作業を行う際に必要な資格であるコンクリート破砕器作業主任の資格試験や講習の内容について解説していきます。
コンクリート破砕器作業とは?
何を建てるにせよ、その場の建造物の解体や整地は絶対に必要になる作業です。
木造の建築物だったりであれば、解体作業は作業員が手作業で行う事も出来ます。
しかし、ビルのようなコンクリート造の建造物であればそうはいかず、解体作業は困難になります。
そこで登場するのがコンクリート破砕器を使った解体方法です。
コンクリート破砕器は、主に建物の基礎部分の撤去作業の為に開発されたもので火薬を動力としている為、火工品として分類されています。
爆薬を使用するコンクリート発破に比べ、振動・騒音が少ないのでコンクリート発破より安全に作業する事が出来ます。
このコンクリート破砕器を用いてコンクリートを破砕する作業をコンクリート破砕器作業といいます。
コンクリート破砕器作業主任とは?
前項で説明した通り、コンクリート破砕器作業では動力に火薬が使用される大変危険な作業です。
ですので、他の作業者や周辺の人に被害が及ばないように細心の注意を払っての作業を行う必要があります。
ですので、コンクリート破砕器作業を行う作業員が安全に仕事が出来ているかを監督する立場の作業者が必要不可欠です。
それがコンクリート破砕器作業主任です。
危険な作業になりますので、誰でもコンクリート破砕器作業主任になれる訳ではありません。
労働安全衛生法によって定められた国家資格の「コンクリート破砕器作業主任」の講習を受け、講習終了後の試験に合格した人だけがコンクリート破砕器作業主任になれるのです。
コンクリート破砕器作業主任資格について
コンクリート破砕器作業主任資格を取得する為には、学歴もしくは所定の実務経験の条件をクリアした人が専門知識の講習を受講する必要があります。
講習を受講出来る条件は全部で5つあります。
実務経験2年以上あれば受講出来る
コンクリート破砕器作業主任の指導の下でコンクリート破砕作業を2年以上経験していれば、コンクリート破砕器作業主任の講習を受ける事が出来ます。
この条件を満たす場合は学歴不問で誰でも講習を受講出来ます。
学校等で土木等の専門知識を学んでいる場合
中学校、高校、高等専門学校、大学に自学中に土木、炭鉱、応用科学に関する学科を卒業した人であれば、コンクリート破砕作業を1年以上経験する事でコンクリート破砕器作業主任の講習を受ける事が出来ます。
学校で土木等の専門知識を学んでいれば短い実務経験でコンクリート破砕器作業主任の講習を受ける事が出来るという事です。
発破技士の資格を所有している場合
発破技士の資格を所有している人も、コンクリート破砕作業を1年以上経験していればコンクリート破砕器作業主任の講習を受講出来ます。
発破についての専門知識があれば、コンクリート破砕に関してもその知識を活かせるので短い実務経験で講習を受ける事が出来るという解釈になります。
実務経験不問で受講出来るケース
2種類の火薬類製造保安責任者、もしくは2種類の火薬類取扱保安責任者の資格所有者であったり、3種類の上級保安技術職員の試験合格経験者や2種類の坑外保安係員試験、3種類の坑内保安係員試験、もしくは2種類の発破係員の試験合格経験者に該当する人は実務経験不問でコンクリート破砕器作業主任の講習を受ける事が出来ます。
こういった資格取得や試験合格の履歴があれば同時に実務経験があると判断されるので実務経験無しで受講出来るのです。
コンクリート破砕器作業主任の講習と試験内容
コンクリート破砕器作業主任の講習の内容は次の通りです。
- 火薬類に関する知識
- コンクリート破砕器の取扱いに関する知識
- コンクリート破砕器を用いて行う破砕の方法に関する知識
- 作業者に対する教育等に関する知識
- 関係法令
- 修了試験
コンクリート破砕器の動力となる火薬の知識やコンクリート破砕器の取り扱いについての知識はもちろん、作業を監督する立場からの知識についてや法令についても学習します。
全ての講習が終わった後に試験が行われます。
この修了試験は一般的な資格試験とは異なり、基本的には講習の内容をキチンと理解できているかを確認する為のものですので比較的容易に合格出来ます。
コンクリート破砕器作業主任資格の今後
コンクリート破砕器作業主任の資格は今現在も存在していますが、実は講習自体は平成23年1月13日で終了しています。
その理由は、コンクリートを破砕するという作業の技術の進歩があります。
本来、コンクリート破砕には爆薬や火薬が使用されていました。
それに比べて危険度も低く、火工品という分類をされるので爆薬や火薬ほどの規制を受けなくて済むコンクリート破砕器は非常に重宝されました。
しかし、爆薬や火薬に変わってコンクリート破砕器が使用されるようになったようにコンクリート破砕器に変わるものが開発されました。
それが、油圧形式を利用した建設機械です。
この油圧式建設機械の登場で穿孔・破砕・掘削がより容易かつ安全に行われるようになり、それに反比例するようにコンクリート破砕器は建設現場から姿を消していきました。
そして平成22年7月、コンクリート破砕器のメーカーは新規製造を中止する旨を発表しました。
ですので、まだどこかの現場に在庫が眠っている可能性はありますが、現実問題として資格の用途自体が無くなっているのが現状です。
なお、東京消防庁のハイパーレスキュー隊では災害現場などで救助活動を行う際に障害物を除去するための装備としてコンクリート破砕器を正式採用していますが、こういった現状から今後の動向はどうなるか分かりません。
前述した通り資格自体は無くなっていないのでコンクリート破砕器作業主任の資格をどうしても取得したい場合は、講習を主催していた社団法人全国火薬類保安協会にお願いをすれば、講習を実施してくれる可能性はあります。
しかし、現実的に考えて将来性のある資格があるとは言えません。
コンクリート破砕器作業主任の資格まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はコンクリート破砕器作業主任の資格について解説しました。
コンクリート破砕器作業主任の資格は、コンクリート破砕器を建設現場で使用する可能性がほぼ0と言える現状では必要な資格とは言えません。
講習の実施の予定も無いので取得したくても出来ないというのが現状です。
コンクリート破砕の現場で仕事をしたいと考えているなら、車両系建設機械の資格や発破技士の資格を取るのが現実的と言えるでしょう。