賃貸不動産経営管理士は賃貸物件の管理に関する専門家で、2021年に新しく国家資格となりました。
不動産業界ですでに働いている方や転職を考えている方にとっては注目の資格となっています。
この記事では賃貸不動産経営管理士の具体的な仕事内容や年収、また将来性があるのかなどについて解説していきます。
賃貸不動産経営管理士とは?
まず賃貸不動産経営管理士がどのような仕事なのかについて簡単にご紹介いたします。
賃貸不動産経営管理士は2007年に誕生した資格ですが、2021年より国家資格に仲間入りを果たしました。
なぜ国家資格になったのか、背景についてもご紹介します。
賃貸不動産経営管理士とは?
賃貸不動産経営管理士は専門知識・技能・倫理観を持って賃貸物件を管理する職業です。
不動産業界の国家資格としては、賃貸不動産経営管理士の他に宅地建物取引士(宅建士)が有名です。
宅建士が賃貸借契約締結や入居者の募集・広告など「入居前」の業務をメインとしているのに対し、賃貸不動産経営管理士は設備の維持管理や入居者のトラブル対応など「入居後」の対応をメインとしています。
このようなことから賃貸不動産経営管理士は入居者と不動産オーナーとの間を取り持つ非常に重要な職業と言えます。
賃貸不動産経営管理士の試験概要
賃貸不動産経営管理士の試験は年に1回実施されており、管理受託契約・家賃など金銭管理に関わる事項・法律全般など、賃貸住宅管理に関する知識を総合的に問われます。
2015年に約5,000人だった受験者数は2021年には32,459人まで増加しており、国家資格昇格に伴い注目の資格となっています。
賃貸不動産経営管理士が国家資格となった背景
近年賃貸物件が増加している一方で、これまでは賃貸物件の管理に関するガイドラインやルールがなく、契約などに関するトラブルの多発が社会問題となっていました。
そのような情勢の中で国は賃貸不動産経営管理士を国家資格として認定し、事業者に事務所ごとの設置を義務付けたのです。
賃貸不動産経営管理士の仕事内容
賃貸不動産経営管理士の仕事内容は賃貸物件の管理ですがその内容は多岐に渡り、まず初めに賃貸物件の所有者(大家さん)から依頼を受け、管理委託業務を締結するところから業務が始まります。
賃貸不動産経営管理士の主な仕事内容は下記の通りです。
- 市場調査
- 入居者の募集
- 入居者のトラブル対応
- 賃貸物件の維持管理
- 現状回復工事の対応
- 賃料等の金銭管理
以下でそれぞれの仕事内容について細かくご紹介していきます。
市場調査
近隣物件の市場調査を行うことで、依頼のあった賃貸物件の適正価格を提案することが出来ます。
家賃は近隣の家賃相場・立地条件・賃貸物件の状態など様々な要因から決めるため、賃貸不動産経営管理士の専門知識が必要です。
また家賃の提案だけではなく、賃貸物件の企画提案といったコンサルティングのような業務を行うこともあります。
入居者の募集
入居者の募集も賃貸不動産経営管理士が担う業務の1つです。
ただし入居者を無条件で受け入れていては後々トラブルに発展しかねません。
相手の収入や身分などを確認して、家賃の支払い能力に問題がないかや住民間のトラブルなどを起こさない人物かなどを判断します。
入居前にトラブルの元を防いで、安定的に物件を経営することを目指します。
入居者のトラブル対応
賃貸物件では入居者間において騒音やゴミ出しなどでトラブルが発生することもあります。
些細なトラブルが重なり刑事事件に発展した例も少なくはありません。
そのようなトラブルに対して対応と防止策の策定を行うことも、賃貸不動産経営管理士の業務範囲です。
トラブルに対する適切な対処が入居者への安心した住環境の提供と賃貸物件経営の安定に繋がります。
入居者間のトラブルを抱える入居者や不動産オーナーにとって賃貸不動産経営管理士はとても心強い存在です。
賃貸物件の維持管理
建物には法令で義務つけられた様々な点検が存在しており、点検作業の手配を賃貸不動産経営管理士が行います。
法令点検に不備があり入居者に危険が及ぶ、というようなことがあっては一大事です。
大家さんだけでは管理が難しいため、各種点検を賃貸不動産経営管理士が管理することでトラブルや事故を防止しています。
原状回復工事の対応
入居者が退去する際に行う原状回復工事の対応も、賃貸不動産経営管理士の業務に含まれます。
賃貸物件から退去する際に、部屋のクリーニング代や修理代を請求された経験がある方も多いと思います。
原状回復において入居者の負担する範囲と管理会社が負担する範囲の線引きをする必要があるため、退去時に立ち会って確認を行いトラブルを未然に防止します。
賃料等の金銭管理
毎月の家賃の収納業務や家賃の改定も賃貸不動産経営管理士が担当します。
家賃滞納などがあった場合、賃貸物件の経営に悪影響を及ぼしかねません。
金銭管理を適切に行い賃貸物件の経営安定に繋げる重要な業務の一つです。
賃貸物件に入居する際に敷金を支払う物件も多くあるかと思います。
入居者が退去する際には、原状回復工事の費用などを含めた敷金精算を行うことも賃貸不動産経営管理士の業務範囲です。
賃貸不動産経営管理士の年収
賃貸不動産経営管理士を目指すにあたって、年収は重要な要素の1つです。
そこでここでは、賃貸不動産経営管理士の想定年収と他の職業との年収差について解説していきます。
転職サイトの情報によると不動産業界の平均年収は約418万円となっており、日本人の平均年収である445万円をやや下回っています。
不動産業界の職種別では不動産金融が約486万円と最も高く、不動産管理は418万円と平均くらいの水準です。
賃貸不動産経営管理士に絞った平均年収のデータはありませんが、宅建士の平均年収が450万円〜500万円と言われているため、おおよそ同程度の年収であると想定されます。
450万円であれば日本人の平均年収より高めの水準であると言えるでしょう。
また国家資格を取得していることで資格手当等がつき、その分年収が高くなる傾向にあると考えられます。
現在は宅建士の方が求人数が多いですが、賃貸不動産経営管理士が国家資格に昇格したこともあって今後さらに需要が高まり年収の増加が期待できます。
賃貸不動産経営管理士のメリット
これまで述べてきた通り、新たに国家資格となったことで賃貸不動産経営管理士の取得を目指す方が増えています。
では実際に賃貸不動産経営管理士の資格を取得することでどのようなメリットがあるのでしょうか?
以下の3点を中心に見ていきましょう。
- 不動産業界への就職・転職に有利となる
- キャリアアップに役立つ
- 不動産投資に役立つ
不動産業界への就職・転職に有利となる
国家資格となった賃貸不動産経営管理士は以前より社会的地位が向上することが期待され、就職・転職市場における評価の向上が見込まれます。
実際、求人の応募条件に賃貸不動産経営管理士の有資格者を設定する企業も多く存在しています。
不動産事業者にとって賃貸不動産経営管理士を設置することは賃貸オーナーや入居者からの信頼に繋がり、事業に対してプラスに働くことが期待できます。
従って、有資格者は就職・転職において有利になることが期待されるのです。
キャリアアップに役立つ
賃貸不動産経営管理士の資格を取得することで、賃貸物件管理に関する専門知識を総合的に身につけられます。
既に不動産業界で働いている方は、資格を持つことで自身の専門知識の証明となり顧客からの信頼に繋がることが期待できます。
企業によっては資格取得によって手当がついたり、人事評価にプラスに働くことで年収がアップするかもしれません。
不動産投資に役立つ
賃貸物件のプロフェッショナルである賃貸不動産経営管理士の専門知識は、不動産投資に役立つ可能性があります。
また自分で不動産の経営を行う場合にも専門知識を有していることで、安定経営に繋げられることが期待できます。
賃貸不動産経営管理士のデメリット
国家資格となり今まで以上の需要が期待される賃貸不動産経営管理士ですが、知名度や独占業務がない点など依然としてデメリットもあると言われています。
高収入を目指している方や他士業と同じような資格であると捉えている方は注意が必要かもしれません。
宅地建物取引士(宅建士)に比べて知名度が低い
賃貸不動産経営管理士は前述したように2021年に国家資格に昇格したばかりで今は知名度が比較的低い為、現時点での求人数が少ない傾向にあります。
不動産業界の国家資格といえば宅地建物取引士(宅建士)が圧倒的に有名で、求人も多いです。
しかし賃貸不動産経営管理士は国家資格昇格後に受験者数が急増しており、不動産業界でも大きな注目を集める資格となっています。
今後は知名度の向上と共に求人数も増加していくことが期待されます。
現在は独占業務がない
今のところ、賃貸不動産経営管理士には有資格者しか対応することができない独占業務がありません。
一方宅建士には契約書の記名や重要事項説明書の記名などの独占業務が存在しており、これらが資格取得者の強みとなっています。
ただ賃貸不動産経営管理士が国家資格となり事業者の事務所ごとに1名以上の設置が義務付けられたことから、今後は不動産経営管理士にも新たに独占業務が設定される可能性があります。
賃貸不動産経営管理士に将来性はある?
これまで述べてきた通り、国家資格昇格に伴って賃貸不動産経営管理士を目指す人は急増しています。
では日々変化を続ける不動産業界において、賃貸不動産経営管理士には将来性はあるのでしょうか?
不動産業界の現状
日本の不動産市場は、少子高齢化社会に伴う人口減少によって方向性が変化しつつあります。
働き方が多様化する現代、“新築で家を建てて生涯同じ場所に住み続ける“といったライフスタイルが合わない人が多くなっているためです。
つまり、これまでの”新築重視“の考え方から”既存の住宅を使い続ける“という考え方に変化しているのです。
賃貸不動産経営管理士の将来性
不動産市場における方向性の変化に伴い、今後住まいに賃貸住宅を選ぶ人の割合は増えてくると予想されます。
そこで、賃貸物件管理の専門家である賃貸不動産経営管理士の需要は伸びてくると考えられます。
実際国としても、社会からのニーズの増加に対応するため賃貸不動産経営管理士を国家資格にしたという経緯があります。
また賃貸物件を管理する事業者は事務所に賃貸不動産経営管理士を設置することが義務付けられており、企業の採用意欲の活発化も期待できます!
上記のような不動産業界の状況から、賃貸不動産経営管理士は将来性のある職業と言えます。
賃貸不動産経営管理士の仕事内容や年収は?将来性はある?|まとめ
この記事では、賃貸不動産経営管理士の具体的な仕事内容・想定年収・将来性などについて解説していきました。
記事の内容をまとめると下記のようになります。
- 賃貸不動産経営管理士は賃貸物件管理を総合的に行う。
例:市場調査/入居者のトラブル対応/設備点検手配 - 賃貸不動産経営管理士の年収は日本人の平均年収より高いと想定される。
- 賃貸物件の増加に伴い、将来的な需要の高まりが期待できる職業である。
新型コロナウイルスの拡大以降家で過ごす時間が増え、「住まい」の重要性は一層高まりました。
快適な住環境を維持するために活躍する賃貸不動産経営管理士は、これからの時代ますます求められていくでしょう。
不動産業界で働いている方や転職を考えている方は、ぜひ賃貸不動産経営管理士の資格取得を目指してみてください。