賃貸不動産経営管理士は賃貸物件の管理に関する専門家として、令和3年に新しく国家資格となりました。
不動産業界で働かれている方や不動産業界に就職・転職を考えている方の中には、取得を目指されている方も多いと思います。
国家資格へ移行に伴って試験に変化はあったのでしょうか?
この記事では賃貸不動産経営管理士の合格ラインや合格率、試験の難易度・勉強方法などについて解説していきます。
賃貸不動産経営管理士試験の合格ラインは?
賃貸不動産経営管理士の試験勉強を行うにあたって、どの程度の正答率で合格できるかは重要なポイントです。
まずは過去の賃貸不動産経営管理士試験の結果を元に、試験の合格ラインを解説していきます。
また条件を満たせば試験内容の一部免除を受けることができるので、そちらの内容についても確認していきましょう。
賃貸不動産経営管理士試験の合格ライン
賃貸不動産経営管理士試験の合格ラインは公式には公表されていません。
その年によっておおむねの合格率の設定があり、その合格率に収まるよう合格ラインが規定されていると考えられます。
近年の合格率が低い水準となっているのは、国家資格への移行に伴い合格者数を絞ってより専門性の高い人を選別していると考えられます。
賃貸不動産経営管理士試験は2019年までは40点満点でしたが、2020年からは50点満点となっています。
合格最低点の推移を下記表にまとめました。
試験年 | 合格点 | 満点 |
---|---|---|
平成27年 | 25点 | 40点(40問) |
平成28年 | 28点 | |
平成29年 | 27点 | |
平成30年 | 29点 | |
令和元年 | 29点 | |
令和2年 | 34点 | 50点(50問) |
令和3年 | 40点 |
令和元年(2019年)までは40点中21点〜29点、令和2年・3年(2020年・2021年)は50点中34点〜40点となっているため、合格するためには少なくとも7割以上は点数を取る必要があると言えるでしょう。
最新の令和3年の試験では8割の正答率が必要となり、合格点は上昇傾向です。
このことから、各分野の知識を網羅的に勉強する必要があるということが分かります。
試験の一部免除
賃貸不動産経営管理士の試験では、事前に所定の講習を受けることで試験内容が一部免除となります。
賃貸不動産経営管理士協議会の指定を受けた団体のHPから講習の申し込みを行うことができるので、興味のある方はご確認ください。
内容は「賃貸不動産管理の知識と実務」というテキストを使用した約2週間の自宅学習と、1日の講習および確認テストの実施です。
令和4年度は受講料18,150円と本代4,048円で受けることができ、47都道府県すべてに会場が設置されています。
受講を完了することで終了年と翌年の試験全50問のうち、5問が免除されます。
試験内容の1割免除は合格の上で優位に働き、実際の合格率でも講習を受講者の方が合格率は高くなっているので、可能な限り受講した方が良いと思われます。
ただし講習は平日のみとなっているため、平日に仕事をされている方はスケジュールに注意してください。
賃貸不動産経営管理士試験の合格率は?
賃貸不動産経営管理士試験の合格ラインが上昇傾向にあることをご紹介いたしました。
では合格率はどのように推移しているのでしょうか?
各年の合格率を他の不動産系国家資格と比較してまとめました。
賃貸不動産経営管理士試験の合格率
賃貸不動産経営管理士試験の各年の合格率は下記の通りです。
平成27年 | 4,908名 | 2,679名 | 54.6% |
---|---|---|---|
平成28年 | 13,149名 | 7,350名 | 55.9% |
平成29年 | 16,624名 | 8,033名 | 48.3% |
平成30年 | 18,488名 | 9,379名 | 50.7% |
令和元年 | 23,605名 | 8,698名 | 36.8% |
令和2年 | 27,338名 | 8,146名 | 29.8% |
令和3年 | 32,459名 | 10,249名 | 31.5% |
表を見るとしばらく50%程度で推移していた合格率は令和元年から減少し、今では30%前後となっています。
合格率減少の要因は令和元年より賃貸不動産管理業務が登録制となり、受験者数が大幅に増えたためです。
さらに令和3年より賃貸不動産経営管理士が国家資格となったことで、受験者数は前年を大きく上回りました。
前年より合格率は微増したものの、近年では平成30年までと比べると合格しづらくなっていると考えられます。
今後も受験者数が増加していく可能性があり、合格率は変動していくかもしれません。
賃貸不動産経営管理士と他の不動産系国家資格の合格率を比較
不動産業界の国家資格には賃貸不動産経営管理士の他に「宅地建物取引士(宅建士)」「管理業務主任者」「マンション管理士」があり、不動産3冠資格と呼ばれています。
賃貸不動産経営管理士と不動産3冠資格の合格率を比較して表にまとめました。
資格 | 受験者数(令和3年) | 合格率(令和3年) |
---|---|---|
宅地建物取引士 | 234,714名(2回計) | 16.8%(2回平均) |
管理業務主任者 | 16,538名 | 19.4% |
マンション管理士 | 14,562名 | 9.9% |
賃貸不動産経営管理士 | 32,459名 | 31.5% |
表から賃貸不動産経営管理士の合格率は、不動産3冠資格と比較して高いことが分かります。
受験者数は管理業務主任者やマンション管理士より多いものの、比較的合格しやすい資格であると言えるでしょう。
賃貸不動産経営管理士試験は今後難しくなる?
賃貸不動産経営管理士は令和3年の国家資格化に伴い、受験者数が急増しています。
ところが、賃貸不動産経営管理士の受験者数は増加しているにもかかわらず、合格ラインがずっと変わらないままだと合格者数が急に増えかねません。
合格者数が増えることは一見よいことのように思えますが、資格取得者の中で理解度にばらつきが生じる可能性があります。
そのため、一定の合格率となるように調整するべく、試験内容が難化する可能性があります。
今は国家資格の中でも比較的合格しやすい資格とされていますが、今後の動向には注意が必要です。
賃貸不動産経営管理士試験合格に必要な対策
前述の通り、賃貸不動産経営管理士試験の合格率は国家試験としては比較的高いもので、他の不動産系の国家資格と比べて易しい傾向にあります。
しかし、不動産の専門知識を問う試験ですので簡単に合格できるわけではありません。
ここからは、賃貸不動産経営管理士試験に合格するためにはどのように勉強すれば良いのか解説していきます。
賃貸不動産経営管理士試験の試験内容
賃貸不動産経営管理士試験では以下の内容が問われます。
- 管理受託契約に関する事項
- 管理業務として行う賃貸住宅の維持保全に関する事項
- 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
- 賃貸住宅の賃貸借に関する事項
- 法に関する事項
- その他の賃貸住宅の管理の実務に関する事項
解答方式は4択の中から正解を選ぶマークシート方式で試験時間は120分です。
全50問の50点満点で、前述の通り事前講習の受講者は全45問の解答となります。
記述式の問題がなく知識の有無をシンプルに確認する試験ですので、比較的対策しやすい内容と言えるでしょう。
賃貸不動産経営管理士試験の対策
賃貸不動産経営管理士協議会が公式に出版している「賃貸不動産管理の知識と実務」という本を使用して試験対策をすることをおすすめします。
この本は試験項目が一部免除になる事前講習でも使用されるテキストで、情報が全体的に網羅されているため準備しておいて損はないと思われます。
しかし、初めて勉強する方にとって「賃貸不動産管理の知識と実務」は分量が多く内容を理解しづらいかもしれません。
他の出版社から図解やイラストなどを入れた分かりやすい内容のテキストも出版されているので、必要であれば併せて使用すると良いでしょう。
ただし2021年6月から施行されたばかりの「賃貸住宅管理業法」は、過去問集に載っていないため学習し忘れないように注意してください。
「賃貸住宅管理業法」について反映されている最新のテキストを揃えて、しっかりと対策を行いましょう。
賃貸不動産経営管理士試験合格に必要な勉強時間
賃貸不動産経営管理士試験合格に必要な勉強時間は100~150時間と言われています。
例えば3ヶ月前から勉強して合格するには、総勉強時間を100時間とすると毎日1時間ほどの勉強をする必要があるでしょう。
最初の60時間程度はテキストを読み込み、残りの40時間を使って問題を繰り返し解いて知識の定着を図る方法がおすすめです。
なお、不動産業界で元々働いていて前提知識がある方はもっと短い時間でも合格できるかもしれませんし、全くの未経験者だと150時間でも足りない可能性があります。
前述したように今後試験が難化していく可能性があるため、できる限り早めに勉強時間を確保して対策を打っておくことが賢明です。
2022年賃貸不動産経営管理士試験はいつ?
2022年の貸不動産経営管理士試験は、いつ実施されるのでしょうか?
試験日程や申し込み期限について解説していきます。
賃貸不動産経営管理士試験の日程
2022年(令和4年)の不動産経営管理士試験は2022年11月20日13:00~15:00に実施されます。
出題数は昨年と同じでマークシート方式の50問が出題され、50点満点の採点です。
申し込み期間は2022年8月15日〜9月29日となっていますので、受験される方は期間内に忘れず申し込みしましょう。
合格発表は2023年1月6日の予定です。
賃貸不動産経営管理士試験の合格ラインや試験難易度まとめ
この記事では令和3年の賃貸不動産経営管理士の合格ラインや合格率、試験難易度・勉強方法などについて解説してきました。
今回の内容をまとめると下記の通りとなります。
- 令和3年の賃貸不動産経営管理士試験の合格ラインは正答率8割
- 令和3年の賃貸不動産経営管理士試験の合格率は31.5%
- 賃貸不動産経営管理士試験は不動産関連の国家資格の中では比較的合格難易度が低いが、今後難化していく可能性がある
- 賃貸不動産経営管理士試験の勉強方法はテキストの読み込みと問題集・過去問による演習が効果的
賃貸不動産経営管理士は国家資格化に伴い、今後ますます需要が伸びてくると予想されます。
この記事が参考になった方は是非、賃貸不動産経営管理士を目指してみてはいかがでしょうか。