病院に行くと様々な種類の診療科があります。消化器外科や小児科、神経内科…。頭痛外来なんかもあります。さらに、現在は診療科ごとに専門医取得などがあり、その区別は明確になってきています。一体、日本にはどのような診療科の医者がいるのでしょうか。また、診療科によって医者になる難易度に違いはあるのでしょうか。これらの疑問について解説していきます。
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医者はいつ診療科を選ぶの?
医者は、この記事で説明したように、6年間の学習でなることができますが、医者になった段階(=医師国家試験に合格した段階)ではまだ診療科は決まっていません。初期研修、後期研修、そして認定医・専門医を取得していくことで徐々に診療科が定まっていくのです。
様々な診療科を回る初期研修
医師国家試験をとることで医者を名乗ることができますが、基礎研究に従事する場合などを除いて、2年間、病院で臨床研修をしなければならないことが医師法で定まっています。
以前は、卒後に病院の各科に専属で研修するストレート方式という研修もありましたたが、今はスーパーローテーションとも呼ばれるローテーション方式の研修を行うことになっています。
ローテーション方式では病院の様々な科に亘って研修することになっており、内科6か月、救急3か月、地域医療1か月、外科・麻酔・精神・小児・産婦人科から2科以上の研修といった義務条件があります。
この間に、研修医は各科の基礎を学んでいくことになりますが、ある程度の自由度があるので、その自由度の中で、将来のキャリアプランにあった研修をこなしていくことになります。
各診療科について勉強する後期研修
初期研修が終わると、各診療科ごと学んでいく後期研修が始まります。多くの医者は、この段階で自分の専門としていく診療科を決め、各学会に入会することになります。
後期研修は専門研修と呼ばれることも多く、後述する専門医取得を目標に掲げることが多いです。
ただし、初期研修とは異なって必須のものではないので、期間などはやや曖昧です。この期間に、大学院に進学することも多く、同時期に同教室に入局しても専門医をとるまでの期間が変わったりします。
たとえば、東京大学病院の脳神経外科だと初期研修後5年間をかけて大学や関連病院で手技などの経験を積むことで、専門医を取得することになります。
認定医・専門医制度
ある科について標榜するために、医師国家試験以外の資格は要りません(麻酔科のみ厚生労働省の許可がいる)が、保持している専門性を保証するために、認定医や専門医を取得する医者が増えています。
認定医
認定医も専門医も学会が認定しているため学会ごとに様々な種類があります。
認定医には、例えば認定内科医、消化器外科学会認定登録医などがあります。
認定内科医の場合、一定期間の内科臨床経験の後に、日本内科学会が行う認定内科医認定試験に合格することで、認定内科医として学会に認められます。
消化器外科学会認定登録医は、消化器外科専門医としての認定に必要な手術実績を確保できなくて専門医が更新できなかった人を対象として日本消化器外科学会が登録しています。
専門医
認定医・専門医ともに、原則として学会が認定していますが、専門医に関しては一般社団法人日本専門医機構が取りまとめています。
専門医にも大きく分けて2種類の専門医がいます。
一種類目は小児科専門医(日本小児科学会が認定)、皮膚科専門医(日本皮膚科学会が認定)、眼科専門医(日本眼科学会が認定)などの有名な標榜科を専門とする基本領域専門医です。
他方、二種類目は消化器病専門医(日本消化器病学会が認定)、アレルギー専門医(日本アレルギー学会が認定)、老年病専門医(日本老年医学会が認定)などの病気の種類別や腎臓専門医(日本腎臓学会が認定)、呼吸器専門医(日本呼吸器学会が認定)のような部位の種類別の専門医もいます。(この種類の専門医をsubspeciality専門医という。)
専門医資格を持っていなくても、各病院で診療科を標榜できるとはいえ、専門医資格は学会からの技術力や経歴の証明となるため、基本領域専門医を一種類とったあと、各専門分野にもとづいてsubspeciality専門医をとる傾向が少しずつ強くなってきています。
また、基本領域専門医の中には、総合診療専門医とよばれる種類があり、これはクリニックや市中病院などのプライマリケアにおいて全人的な医療を提供できる医者を対象に登録が進んでいる専門医です。
プライマリケアの重要性がうたわれている現在では、プライマリケア認定医や家庭医療専門医などとともに注目と期待が集まっています。
指導医
さらに、学会によっては、認定医や専門医になろうとする医者を指導する立場である指導医の資格を認定していることがあります。
たとえば、日本産業衛生学会が認定する産業衛生指導医、日本救急医学会が認定する救急科指導医などの種類があります。
これらの指導医資格を取得するためには、長い学会所属期間と実務期間が必要になってきており、専門医以上の厳しい要件が課されています。
診療科の難易度や選択
診療科ごとの難易度は相対的なもので、一概にどれが難しいと、難易度を比較することはできません。ただし、QOMLの観点などから、医者の多さには違いが出ています。
QOL、QOMLとは
本来、QOLとはクオリティー・オブ・ライフの略で、殊に医療においては、患者の治療において患者の生活の質、生命の質、人生の質を向上させることにプライオリティー(優先度)を置くという考えのことでした。
しかし、医療においては、医療従事者に対して病院での拘束や過剰な激務、難易度の高い手技の取得が強いられることも多く、医療従事者側の生活の質つまりQOLを高めようという考え方が広まりました。
この考え方を特にQOML(quality of my life)といいます。患者の生活の質に対して、「私」の生活の質という考え方です。
QOMLで科を決める
休みを取る難易度が他の職業と比べても高い医者が何科を選択するかにおいて、QOMLという観点は重要です。
比較的QOMLが高いといわれる科である眼科や皮膚科は人気が高い一方、小児科や産婦人科など多忙な科では深刻な医師不足が起きています。
その医者不足の影響もあって、初期臨床の選択必修に、小児科や産婦人科も含まれています。
医者の数が他の診療科に比べて多い診療科では、他の医者との差別化が必要で難易度が高いといえますし、医者不足が厳しい診療科では、地方医療を強いられたり、激務にさいなまれたりとQOMLの確保の難易度が高いといえます。
開業のしやすさから科を決める
この記事にもあるように、一般に医師は高収入です。しかし、診療報酬の改定で差は縮まっているものの、開業医と勤務医では給与に差があるのが一般的です。また、二代目の場合は、親の科を引き継ぐことも少なくありません。
そのような点からみると、病院を開業する難易度が低い皮膚科や内科(あるいは総合診療科)などは人気ですが、脳神経外科や心臓外科の場合だと開業の難易度が高く、そのうえ、またこれらの科は激務なため、やはりなり手不足が深刻だといわれています。
開業しやすい科では他のクリニックとの差別化の難易度が高く、開業しにくい科ではそれだけ専門性が高く、様々な手技をおぼえたり、様々な器具や機械を使いこなしたりという意味で難易度が高いです。
やはり、この観点からも、難易度の比較は一概にできません。
まとめ
医者は、初期研修を経た後、後期研修を受けるにあたって、診療科を選ぶことになります。
後期研修では、認定医や専門医の取得を目指して勉強し、時には、複数の専門医資格の取得を目指します。
診療科ごとはそれぞれの難しさがあり、一概に難易度は決めれません。
ただし、QOMLや開業のしやすさの観点などから、医師の診療科の選択には偏りが生まれています。