特定社労士とは、労働問題などの法的なトラブルが起きたときに個別労働紛争における代理人としての業務をこなせる資格です。
裁判沙汰にすることなく当事者に代わって紛争解決に導くことができる存在のため、労使問題が頻繁に起こっている昨今においては貴重な存在と言えます。
こちらの記事では、特定社労士の具体的な仕事内容や特定社労士になるための方法、試験内容などを詳しく解説していきます。
特定社労士の仕事に興味がある人や特定社労士を目指している人に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。
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特定社労士試験の難易度
特定社労士試験の合格率や勉強時間をチェックしましょう。
社労士のうちどれぐらいの割合の人が、特定車両士試験に合格しているのでしょうか
特定社労士試験の合格率は53.1%
特定社労士試験の令和4年度の合格率は53.1%でした。
過去の合格率を確認しても、50%前半~60%前半を前後しています。
受験者の半数以上が合格できる試験と判断できますね。
ただし合格率の高さは試験難易度とは別と考えてください。
参考:厚生労働省 第18回(令和4年度)紛争解決手続代理業務試験の合格者について
特定社労士試験の合格に必要な勉強時間は500〜1,000時間
特定社労士試験の合格に必要な勉強時間は、最低でも500時間です。
特定社労士試験は記述式の試験ということに注意しましょう。
社労士試験はマーク式のため、特定社労士試験はより高度と考えてください。
「問題を解く時間が足りない」といったことにならないよう、十分な注意が必要です。
特定社労士試験の試験内容
特定社労士試験の正式な名称は、「紛争解決手続代理業務試験」です。
2時間の試験で、記述式の問題のみ出されます。
残業の未払いや給料のトラブルなど、個別労働紛争についての深い知識が求められるでしょう。
2024年(令和6年度)の試験日程予想
2024年の試験日程は、11月23日または30日と予想できます。
過去3年分の試験日程を確認すると、11月の最終週に当たる土曜日に実施されていました。
全国7都道府県で実施されるので、前もって備えておきましょう。
特定社労士試験が難しいと言われる理由
特定社労士試験が難しいと言われる理由には以下があります。
- 特別講習が必須
- 試験は全て記述式
- ボールペンでの記述式
- 試験合格は時間と手間がかかる
理由①特別講習が必須
社労士としての登録が済んでいれば、次のステップとして「厚生労働大臣が定める特別講習」を受ける必要があります。
特別講習は毎年行われており、受講費用として85,000円を支払って下記の内容を学ぶことになります。
- 中央発信講義(30.5時間):個別労働関係紛争に関する法令及び実務に関する教材DVD教材を視聴
- グループ研修(18時間):グループワークを通じて、個別労働関係紛争における申請書や答弁書作成の練習を行う
- ゼミナール(15時間):ケーススタディを通じて、紛争解決代理業務を行う上での実践的な知識とスキル習得に加えて、申請書及び答弁書の検討、争点整理、和解交渉の技術及び代理人の権限と倫理などを学ぶ
特別講習は上記の3分野に分かれていますが、講義を1度でも欠席すると修了できないため注意しましょう。
なお講習の内容は「紛争解決」となっているため、労働問題に加えて刑法や民法も含まれます。
理由②試験は全て記述式
特別講習を修了したら、紛争解決手続代理業務試験に合格して社会保険労務士名簿への付記を経ることで特定社労士になることができます。
紛争解決手続代理業務試験は全て記述式である点が特徴で、法律の知識を踏まえてトラブルを解決に導くための内容を文章化しなければなりません。
理由③ボールペンでの記述
提出する回答はボールペンで記入しなくてはなりません。
書き間違えた場合は二重線で消し、空いているスペースに訂正を記載する必要があります。
ある程度スペースを空けておくように、文字の大きさを調整しましょう。
鉛筆で下書きし、清書をする手間もかかりますね。
時間に余裕を持って回答できるように、対策が必要です。
理由④試験合格は時間と手間がかかる
特定社労士を名乗るためには紛争解決手続代理業務試験(特定社労士試験)に合格する必要があります。
また、一般の社労士資格に付記申請をすることで晴れて「特定社労士」になり紛争解決手続きの代理業務が可能となります。
通常の社労士試験に加えて紛争解決手続代理業務試験を受けなければならないため、特定社労士になるためにはそれなりの時間と手間がかかります。
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特定社労士試験の難易度を他試験とランキングで比較
特定社労士試験の難易度を、他の国家資格と比べました。
資格 | 合格率 |
---|---|
特定社労士 | 50%前半~60%前半 |
社労士 | 6〜7%程度 |
司法書士 | 4〜5% |
行政書士 | 9〜10% |
宅建士 | 15〜17% |
特定社労士の合格率は50%~60%前半です。
高い合格率ですが、そもそも社労士でなければ特定社労士試験が受けられません。
他試験とは試験合格の道のりが違うことに注意しましょう。
紛争解決手続代理業務試験の科目
ここからは、紛争解決手続代理業務試験に関する情報を合格率などを中心にご紹介します。
試験の難易度やどのような内容が出題されるのかを把握し、イメージを持っておくと良いでしょう。
紛争解決手続代理業務試験では社労士試験では出題されない刑法や民法などの内容も出題されるため、「社労士試験の延長」と考えるのは危険です。
紛争解決手続代理業務試験は100点満点の試験で大問2題で構成されています。
そして、紛争解決手続代理業務試験の合格基準は「100点満点中55点以上かつ第2問10点以上」です。
あっせんに関する小問
第1問は70点満点となっており、あっせんに関する事例が小問として4~5題出てきます。
紛争解決手続代理業務試験では労使に関するトラブル事例が出題され、「民法上どうなるか」という問いに対して解答します。
通常の社労士試験とは出題形式が異なるため、法律知識に加えて分かりやすく「なぜそうなるのか」「何が問題なのか」を文章化する必要があります。
倫理に関する小問
第2問は30点満点となっており、倫理に関する小問が2~3題出てきます。
またトラブル事例に関して「具体的にどのような点に問題があるのか」「社労士倫理からしてどのように考えるか」といった出題に対して記述式で回答することになります。
出題内容は専門的で難解ですが、特別講習で学ぶ内容をしっかりと理解し過去問を解けば対策は可能です。
難易度の高い特定社労士試験に合格するポイント
紛争解決手続代理業務試験は、高い難易度ということに注意しましょう。
合格するためには以下のポイントに気をつけてください。
- 過去問を繰り返し解く
- 勉強の計画は早めに立てる
- ボールペンの記述に慣れておく
- 記述式の型を見つける
ポイント①過去問を繰り返し解く
過去の試験を繰り返しとくことで、これまでどのような問題が出されたのか判断できます。
過去問を解いておけば、問題の文章や出題形式にも慣れるでしょう。
紛争解決手続代理業務試験は、時間配分も重要なので気をつけてください。
ポイント②勉強の計画は早めに立てる
勉強の計画は早めに立てましょう。
特別研修を受けた後に、どれぐらいの時間が確保できるのか事前にチェックしてください。
紛争解決手続代理業務試験は、社労士として働きながら試験に挑む人がほとんどです。
仕事と勉強のバランスをとって、効率的に学習しましょう。
勤務先の繁忙期なども視野に入れ、計画を立てることが重要です。
ポイント③ボールペンの記述に慣れておく
特定社労士になるための試験は、ボールペンでの回答に限られます。
時間配分に自信がない人は、あらかじめボールペンの記述に慣れておきましょう。
回答用紙に鉛筆での下書きは可能ですが、時間がかかってしまうことに注意してください。
使いやすい筆記用具なども、事前に選定しておけば安心ですね。
ポイント④記述式の型を見つける
紛争解決手続代理業務試験に合格するためには、記述式の解答に慣れておきましょう。
問題を読んで構成を考える一連の流れを身につけてください。
試験では学力だけでなく実務能力も問われます。
解答の型を見つけて、スムーズに答えられるように勉強しましょう。
特定社労士とは
特定社労士とは「特定社会保険労務士」の略で、個別労働紛争における代理人としての業務が可能な社労士を指します。
特定社労士とは何なのか、また一般社労士との違いは何があるのか見ていきましょう。
社労士資格を有している
特定社労士になるための前提として、社労士試験に合格して社労士として登録をしている必要があります。
単に社労士試験に合格しているだけでは特定社労士になることはできないため、注意しましょう。
社労士の登録が済んでいれば、他に実務要件などの要件は求められません。
一般の社労士との違い
一般の社労士と特定社労士との大きな違いは「紛争解決手続きの代理業務が可能かどうか」という点です。
労使間のトラブルが起きたとき、一般の社労士は紛争解決の代理業務を行うことはできませんが特定社労士であれば行うことができます。
なお特定社労士は一般の社労士の上位資格というわけではなく、あくまで両者の違いが「紛争解決手続きの代理業務が可能かどうか」なだけです。
特定社労士には近年増加傾向にある個別労働関係紛争の迅速な対応や解決に向けた積極的な取り組みが期待されており、「従業員が働きやすい環境を作る」ために重要な役割を果たしています。
特定社労士の仕事
紛争解決手続き(ADRとも呼ばれます)とは、訴訟をすることなく裁判外で民事上の紛争の解決を目指すことを指します。
例えば労使のトラブルを抱えている当事者がいるときに、特定社労士が間に入って問題解決を図る手続きが「紛争解決手続き業務」となります。
労働に関するトラブルが裁判沙汰になるとお金も時間もかかる上に事業主と労働者が名誉や心を傷つけ合う結果にもなりかねず、精神的な負担も重いです。
特定社労士は当事者双方の話し合いに基づきながら調停や仲裁などの手続きによって紛争の解決を図るため、当事者間の負担を大きく軽減してくれる存在と言えます。
具体的な紛争解決手続きとしては以下のような業務内容が挙げられます。
- 都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争のあっせん手続等の代理
- 都道府県労働局における障害者雇用促進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法及びパートタイム・有期雇用労働法の調停の手続等の代理
- 個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続における当事者の代理(単独で代理することができる紛争目的価額の上限は120万円)
- 代理業務には、依頼者の紛争の相手方との和解のための交渉及び和解契約の締結の代理を含む
特定社労士の平均年収
特定社労士の平均年収は、500万~700万円程度と予想できます。
一般の社労士よりも高い年収が期待できますね。
ここで注意したいことは、勤続年数や企業によって年収が上下することです。
仕事では、社労士よりも深い分野での労務関係の業務に対応しなくてはいけません。
特定社会保険労務士の将来性
特定社会保険労務士の将来性は高いと言えます。
法律系の知識があれば、顧客の側に立って業務が行えるでしょう。
経営コンサルタントとしての実力があれば経営系社会保険労務士として活躍できます。
労使間トラブルの解決に能力を発揮できる特定社会保険労務士は、需要が安定している職種です。
特定社労士試験の独学合格が難しい理由
特定社労士になるための紛争解決手続代理業務試験の合格は、独学では不可能です。
その理由をまとめました。
独学が難しい理由①社労士のみが受験できる資格だから
紛争解決手続代理業務試験の受験は、社労士として登録している必要があります。
社労士登録には以下のいずれかをクリアしなくてはなりません。
- 労働社会保険証諸法令に関する実務経験が2年以上
- 全国社会保険労務士連合会が実施する事務指定講習の終了が必要
特定社労士になりたいからと言って、いきなり受験できるシステムではないのです。
独学が難しい理由②専用フォームからの申し込みに限られる
紛争解決手続代理業務試験は、まずは特別研修を受講しなくてはなりません。
連合会ホームページ会員専用ページの特別研修申込要領請求フォームから受講を申し込みましょう。
この時点で、独学では試験合格が難しいことが分かりますね。
特定社労士試験対策におすすめの予備校・通信講座
「独学で紛争解決手続代理業務試験に臨むのは不安」という人は、特定社労士試験の対策講座を受講すると良いでしょう。
ここでは特定社労士試験の対策講座をご紹介しますので、必要に応じて受講を検討してみてください。
TAC 特定社労士試験対策講座
TACでは「特定社労士試験対策講座」を行っており、全2回の講義を通じて紛争解決手続代理業務試験の合格を目指します。
第1回の講義は講師の講義を受講するスタイルとなっており、法律的な知識についてオリジナルテキストを用いながら効率的・効果的に学びます。
第2回の講義は演習形式となっており、講師が厳選した演習問題を用いながら実際に答案を書く練習を行います。
解答作成時のポイントや丁寧な解説を受けることもできるため、習得した法律知識を文章化する方法を着実に学ぶことができるでしょう。
通信講座と通学講座から選ぶことができ、いずれも受講料は18,700円となっています。
効率よく紛争解決手続代理業務試験対策を行いたい場合は、ぜひTACの受講を検討してみてください。
LEC 特定社労士合格講座
大手予備校のLECでは、社労士試験に合格した人が特定社労士試験に合格するための「特定社労士対策講座」を取り扱っています。
LECの紛争解決手続代理業務試験講座は下記の2つに分かれています。
- 2024年特定社労士対策講座 フルパック全19回【通信:スクーリング・添削有】
(法学概論2回・民法基礎講座2回・対策講座 本論編6回・過去問分析講座6回・答練3回) - 2024年特定社労士対策講座 答練【通信:添削有】全3回(答練3回)
「フルパック」の受講料は61,000円から、「答練」の受講料は23,000円からとなっています。
LECは長年にわたって資格取得をサポートしてきた実績ある予備校のため、安心感は申し分ありません。
特定社労士試験の合格は十分な勉強が必要
ここまで、特定社労士試験の出題内容・合格率・特定社労士になるための方法などを解説してきました。
特定社労士になるのは簡単ではありませんが、しっかりと勉強して対策すれば着実に合格を狙えるでしょう。
特定社労士を目指す場合は必要に応じて対策講座を受講することを検討し、効率よく試験対策を進めることをおすすめします。
特定社労士は常に需要があり事業主からも労働者からも頼られる存在のため、興味がある人は資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。