行政書士試験には「会社法」という科目があります。
会社法は行政書士試験全体で見ると配点のウェイトは軽いため、「会社法は捨てる」という方針で勉強している方も多いのではないでしょうか。
しかし会社法は頻出の範囲だけに絞った勉強でも2~3問正解できる可能性があるため、完全に捨てるのはもったいないです。
こちらの記事では、行政書士試験の頻出範囲や会社法を勉強するときのポイントなどを解説していきます。
行政書士試験の合格を目指している方に役立つ内容となっていますので、参考にしてみてください。
会社法の特徴
行政書士試験には「商法・会社法」という科目があります。
いずれも実際に会社を経営していない人にとってはなじみがない分野のため、勉強しづらい点が特徴です。
まずは、行政書士試験における会社法の特徴を解説していきます。
会社法は「商法」の科目の一部
行政書士試験において会社法は「商法」という科目の一部に位置付けられます。
商法は「商品を取引をするときのルール」で、会社法は中でも「株式会社などの会社の組織・運営」について定められた法律です。
会社法を勉強するときは、まず「会社組織が商行為を行うときのルールや運営のルールである」という全体像を把握すると良いでしょう。
出題範囲が広いが出題数が少ない
行政書士試験の法令科目の出題数は下記のようになっています。
基礎法学 | 2問 |
---|---|
憲法 | 5問 |
行政法 | 19問 |
民法 | 9問 |
商法・会社法 | 5問 |
上記のように商法・会社法の出題数は少ないです。
内訳は商法1問・会社法4問となっており、会社法の配点は16点と法定科目全体(244点)で見るとウェイトは小さいと言えます。
このことからも分かるように「会社法を捨てる」という判断をしても合格することは可能ですが、結論としては会社法を捨てることはおすすめしません。
頻出ポイントは絞られる
会社法の条文は全部で979条あるため、出題範囲は非常に広いです。
しかし行政書士試験における会社法の頻出範囲は絞られているため、重要なポイントだけ押さえて勉強すれば得点できます。
下記が会社法の頻出ポイントです。
- 会社の設立
- 取締役会
- 株式
- 会社の種類や意思決定機関(株主総会など)
テキストや過去問題集で「頻出度が高い」と表記されている論点を中心に勉強すれば、2~3問は安定して得点できるでしょう。
覚え方のコツを押さえれば得点できる
会社法は前述した頻出ポイントを中心に覚え方のコツを押さえれば得点できます。
例えば、株主総会の論点で見てみましょう。
- 普通決議の定足数:定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
- 普通決議の決議要件:出席株主の議決権の過半数
- 特別決議の定足数:株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合は、その割合以上)を有する株主が出席
- 特別決議の決議要件:出席株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合は、その割合)以上
普通決議事項よりも特別決議事項の方が会社の経営に大きな影響を与えることから、特別決議の決議要件は厳しくなっています。
このように理由や背景を含めた覚え方を意識すれば、本試験問題にも対応できるようになるでしょう。
行政書士で会社法を捨てるのはあり?
前述したように、会社法を捨てるという判断をしても行政試験に合格することは可能です。
しかし行政書士試験の合格を目指すにあたって会社法を捨てるのはおすすめしません。
民法や行政法よりも勉強の優先順位は劣るものの、ある程度の時間を割いて会社法の勉強も行うと良いでしょう。
完全に捨てるのはもったいない
行政書士試験では商法で5問、そのうち会社法からは4問出題されます。
法令科目全体から見ると会社法のウェイトは軽いですが、「貴重な4問」であることには変わりません。
また会社法の条文は多いとは言えある程度頻出論点が決まっているため、完全に会社法を捨てるのはもったいないです。
会社法を捨てた結果「あと1問正解できていれば合格できたのに…」となってしまうと悔やんでも悔やみきれません。
行政書士試験対策においては会社法全体を勉強する必要はなく、重要なポイントに的を絞って「取れる問題は取る」という意識で勉強することをおすすめします。
会社法を捨てると実務に悪影響が出る可能性がある
会社法を捨てると行政書士としての実務に悪影響が出てしまう可能性があります。
なぜなら、行政書士は会社の設立にあたって下記の相談や業務依頼を受けることがあるためです。
- 会社の基本事項決定に関する相談
- 定款の作成・認証の代行業務
会社法を捨てると、上記のような実務を行うときに支障が出てしまう恐れがあります。
行政書士試験に合格することよりも「行政書士資格を生かして実務で生かす」方が重要なため、合格するために実務能力を捨てるのは本末転倒です。
特に試験合格後に開業や行政書士法人・事務所への就職を検討している方は、きちんと会社法の勉強を行うことをおすすめします。
会社法を勉強するポイント
会社法は出題範囲が広いため、ポイントを押さえることが重要です。
効率よく得点できるコツをつかめれば民法や行政法などの重要科目に勉強に充てられる時間が増え、トータルの得点力が鍛えられます。
以下で会社法を勉強するときのポイントを解説します。ぜひ参考にしてください。
頻出分野に的を絞り深入りしない
繰り返し述べているように会社法は出題範囲が広いため、細かい論点まで深入りする必要はありません。
- 会社の設立
- 取締役会
- 株式
- 会社の種類や意思決定機関(株主総会など)
上記の頻出分野に的を絞って勉強すれば、最低でも1~2問は正解できる可能性が高いです。
「商法・会社法で得点できたおかげで合格できた」という受験生は多いため、最低頻出分野だけでも対策しておくと良いでしょう。
満点を目指さない
行政書士試験における会社法は全部で4問(16点)ですが、満点を目指す必要はありません。
完璧を目指すと多大な時間を要してしまいますが、時間と労力をかけて得られる成果が16点では割に合わないためです。
会社法は行政書士試験の科目の中でも費用対効果が低いため、「どこまで勉強するか」という線引きをすることをおすすめします。
行政書士試験に合格するためには、会社法よりも民法・行政法の勉強に時間を割いた方が効果的です。
「会社法は2~3問正解できれば十分」というくらいの気持ちの余裕を持って勉強すれば十分でしょう。
インプットに時間をかけない
会社法に多くの時間を割く必要はなく、特にインプットに時間をかけないことを意識することも大切です。
テキストや参考書を頻出分野だけ2~3回読む程度に止め、過去問題集などを用いたアウトプットを中心に行うと良いでしょう。
そうすることで実際に問題を解いていくうちに「このような問題が出てくるのか」「この分野は重点的に勉強する必要がある」などの判断ができるようになります。
過去問題だけで不安な場合は模擬試験や予想問題なども活用し、必要な知識を習得することをおすすめします。
理解できなかったら捨てる判断をしてもOK
前述してきたように、会社法は基本的に頻出ポイントだけでも勉強するのがおすすめです。
しかし勉強しても理解できない場合は「会社法を捨てる」という判断をしても問題ありません。
会社法は行政書士試験における重要科目ではないため「絶対に得点源にする」必要はありません。
もしテキストの読み込みや過去問演習を行って「どうしても理解できない」と感じた場合は、民法や行政法を得点源にできるように勉強することをおすすめします。
会社法を勉強するときのおすすめテキスト
最後に、行政書士試験の会社法対策を行う際におすすめテキストを紹介していきます。
利用者からの評判が高く効率よく勉強できる教材を厳選したため、ぜひ参考にしてみてください。
2024年度版 みんなが欲しかった! 行政書士の教科書
引用:TAC出版
『2024年度版 みんなが欲しかった! 行政書士の教科書』は、非常に人気がある行政書士のテキストです。
4色フルカラーで図表とイラストが豊富に用いられているため、視覚的にも理解しやすい設計になっています。
会社法の頻出範囲もわかりやすく学ぶことができるため、じっくりとテキストを読めば会社法で得点できるようになるでしょう。
また適宜一問一答の確認問題も収録しているため、インプットとアウトプットを効率良く行うことができます。
行政書士 しっかりわかる 講義生中継 商法・会社法 TAC出版
引用:TAC出版
『行政書士 しっかりわかる 講義生中継 商法・会社法』はTAC人気講師の講義を再現したテキストです。
受験生が疑問に思う箇所を中心に会社法の要点を押さえ、効率良く頻出論点を理解できる構成となっています。
特に重要な箇所は朱書きで強調され図表も多く用いられているため、押さえておくべきポイントが一目でわかります。
また各章の章末には「確認テスト」を収録しているため、間髪入れずにアウトプットをこなせる利便性も魅力です。
国家試験受験のためのよくわかる会社法
引用:自由国民社
『国家試験受験のためのよくわかる会社法』は、会社法の全体像をつかめるテキストです。
具体的な設例を通じて会社法の仕組みがスムーズに理解できるため、会社法の勉強で苦労している方におすすめできます。
重要ポイントが的確に把握できる構成になっており、会社法の教養書としても試験勉強の読本としても使える便利な1冊です。
行政書士の会社法まとめ
行政書士試験において、会社法を捨てても合格を目指すことは可能です。
しかししっかりと勉強すれば得点できる可能性が高いこと、また行政書士としての実務に影響が出ることを考えると会社法を捨てるのはおすすめしません。
頻出の分野や覚え方のポイントを押さえれば2問程度の正解は見込めるため、捨てるのはもったいないと考えれます。
またこちらの記事で紹介したテキストや参考書を読むと会社法の理解が深まるため、会社法の勉強で苦労している方はぜひ参考にしてください。