社労士資格は公務員の仕事とも相性がよく、転職や独立が目指せる資格です。
加えて、社労士試験には公務員であれば一部科目を免除できる制度があります。
公務員特例免除を利用すれば合格率が上げられるでしょう。
しかし社労士になるための試験は難易度が高く、合格までに時間がかかることもあるので注意しましょう。
この記事では、社労士資格や公務員特例を詳しくまとめました。
特に、社労士試験に合格したい公務員におすすめの内容です。
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社労士資格と公務員の相性がいい理由3選
社労士の資格と公務員は、以下の理由からとても相性が良いです。
- 公務員特例として社労士試験の一部免除制度がある
- 公務員の業務に社労士の資格や勉強内容が役立つ
- 公務員から社労士への転職にも有利
それぞれの理由を確認しましょう。
理由①公務員特例として社労士試験の一部免除制度がある
社労士試験では、公務員に対して一部科目の受験免除制度があります。
公務員特例は、公務員を含む「労働社会保険法令に関する施行事務」が受けられる制度です。
一部科目の試験が免除されれば、他の勉強に時間がかけられます。
試験勉強が効率よく進められるでしょう。
理由②公務員の業務に社労士の資格や勉強内容が役立つ
公務員としての仕事に、社労士の近くや知識が役立つ場面が多くあります。
公務員の業務は医療保険や介護保険、年金制度といった社労士業務と関連するものが多いです。
「公務員としてさらにキャリアアップしたい」と考える人にも、社労士試験への挑戦はおすすめです。
理由③公務員から社労士への転職に有利
公務員から社労士へ転職すると、業務経験が活かせることが多いです。
また、転職活動は実務経験がある人の方が有利になるでしょう。
元公務員であれば、実務経験がない人よりも社労士への転職に有利ですね。
雇用主によっては、即戦力と判断される可能性があります。
社労士試験で公務員が免除を受けられる条件・科目
最初に公務員が免除を受けられる条件と科目について解説していきます。
公務員になればすぐに免除を受けられるという訳ではなく、さらに免除科目も人によって異なるようです。
自分がどの科目を免除してもらえるのか、よく調べてみて下さい。
公務員が免除を受けられる条件
公務員が免除を受けられる主な条件を以下に示します。
- 免除科目に関する職に10年以上従事していた経験を持っていること
- 免除科目に関する職の中で特定の職に5年以上従事していた経験を持っていること
どちらか一つの条件を満たしていれば、その経験がある試験科目は免除制度を受けることが出来ます。
例えば、労働基準法と労働安全衛生法の免除を受ける場合、以下のような条件を課せられます。
- 国家公務員として労働基準法、労働者災害補償保険法又は労働安全衛生法の施行事務に従事した期間が通算して10年以上になる者
- 労働保険審査会の委員の職にあった期間が通算して5年以上になる者
一つ目のポイントは、「従事していた期間は通算でカウントされる」という点で、現在その部署にいなくても、何度か異動を繰り返していても条件を満たすことができます。
二つ目のポイントは、免除科目の内容に近い仕事をしているほど、免除の条件に課せられる従事期間が短いという点です。
これらのことを踏まえて自分の免除科目を選んでみて下さい。
公務員が免除を受けられる科目
公務員が社労士試験で免除を受けられる科目は人によって異なりますが、免除科目自体は全ての科目が対象になっています。
つまり、公務員として社労士試験に関係する職に10年以上就いていれば、何らかの免除は受けられる可能性が高いです。
ですので少しでも関係性がある職場に勤めていたのであれば、ダメ元でも科目免除の申請をしてみて下さい。
公務員が社労士試験を受けた場合の優遇(免除)措置
公務員が社労士試験の科目免除を受けた場合、免除された科目は満点換算される訳ではなく、公式が発表している計算式に基づいて点数が算出されます。
そのため免除を受けたからといって点数が大幅に上昇することは無いようです。
ここでは免除科目の点数の計算方法と、免除科目を受けた場合の公務員の合格率をご紹介していきます。
免除科目の点数算出方法
免除科目の点数を「免除加算点」と言い、免除加算点は選択式と択一式それぞれの「総得点の合格基準点」が計算に使用されます。
具体的な計算式を以下にご紹介します。
- 選択式免除科目の計算式
総得点の合格基準点 ÷ 40点 × 免除科目の満点 - 択一式免除科目の計算式
総得点の合格基準点 ÷ 70点 × 免除科目の満点
社労士試験の合格基準点は総得点と科目ごとに用意されており、基本的に総得点の合格基準点は満点の7割、科目ごとの合格基準点は満点の6割となっています。
上記の計算式から免除科目の点数は免除科目の満点の7割程度になると予想されるので、科目ごとの合格点より少し高い点数になると考えられます。
稀に免除科目の点数が各科目の合格基準点を下回ることがありますが、その時は合格基準点と同じ点数が免除加算点になります。
科目免除を利用した公務員の合格率
以下に令和5年度の社労士試験全体の合格率と、合格者のうちの公務員が占める割合を以下の表にまとめました。
受験者 | 合格率 |
---|---|
受験者全体 | 6.4% |
公務員 | 8.8% |
結果的に、公務員の合格率は受験者全体と比較して高いことが分かります。
公務員が社労士試験で免除を受けるための方法
公務員が社労士試験で免除を受ける場合、自動的に免除科目が設定されるのではなく自分で申請する必要があります。
ここではその申請方法について解説していきます。
自分が免除を受けられるかどうか確認する
まず最初に自分が科目免除を受けられるかどうか確認する必要があります。
社会保険労務士試験オフィシャルサイトにある「様式及び送付状」をダウンロード、印刷して必要事項を記入した後、試験センターに送りましょう。
すると免除を受けられるかどうか電話で1週間以内に回答があるので、平日の09:30~17:30の間は電話に気を配っておいてください。
また、科目免除を受けられない可能性もあるので、自分の勉強時間を調整するためにも早めに事前確認を行うことをお勧めします。
免除科目申請をする
自分が科目免除を受けられることが分かった場合、免除科目の申請を行います。
これは受験申し込みと同時に行い、審査の結果は受験票とは別の用紙で郵送で届きます。
免除科目の選択については、免除科目の申請の時に決定し、その後変更することは出来ません。
科目免除制度が必ず公務員と相性が良い訳ではない
科目免除制度を利用した公務員の合格率は非常に高く、科目免除制度を利用することが得策であるのは間違いありませんが、万人に対して必ず相性が良い訳ではありません。
社労士の合格基準点を見ていくと、
総得点の合格基準点の割合 > 科目ごとの合格基準点の割合
となっていることが分かります。
つまり科目ごとの合格基準点を取るだけでは足りず、自分の得意科目でさらに点数を獲得し、総得点の合格基準点に届かせる必要があるということです。
そして免除科目に該当する科目は、その人が長年従事していた経験を持つ得意科目である場合が多く、免除することで総得点が伸び悩む可能性があります。
免除対象科目でも高得点が狙える自信がある場合は、あえて免除しない方が合格の可能性が高くなるかもしれません。
公務員から社労士に転職するメリット
ここからは公務員から社労士に転職するメリットを解説していきます。
社労士試験において公務員が優遇されているのは、合格率や免除科目制度から明らかですが、それ以外にもメリットはあるのでしょうか?
メリット①公務員時代の経験を活かしやすい
社労士の主な仕事は保険や年金に関する書類作成や、行政官庁へそれを依頼者に代わって提出することが挙げられます。
この時その書類を受け取って処理するのは公務員の方なので、そういった仕事の経験があれば社労士に近い実務経験を積んでいることになります。
さらにその実務経験は社労士になった後に活きるだけではなく、条件に当てはまれば試験合格後の事務指定講習も受講せずに済むかもしれません。
また、書類を受け取る側の内情を知っているということであれば、社労士として書類を提出する側になった時に働きやすくなるのは間違いないでしょう。
メリット②年収の大幅アップを狙うことができる
国家公務員と地方公務員、そして社労士の平均年収を以下にご紹介します。
国家公務員 | 地方公務員 | 勤務社労士 | 開業社労士 | |
---|---|---|---|---|
平均年収 | 約600万円 | 約550~650万円 | 500~600万円 | 0~1,000万円超 |
勤務社労士と公務員を比較すると、平均年収はほとんど変わらないことが分かります。
しかし、公務員の方が職が安定しており、長く勤めていれば公務員は退職金も多く貰うことが出来ます。
すると公務員のままの方が生活が安定するように思えますが、社労士は独立開業できる士業なので、成功すれば年収1,000万円を超えることも可能です。
その場合は公務員のままでいるより生活が豊かになると考えられます。
メリット③仕事の面白味が増える
公務員の仕事は民間の仕事と比較してつまらないと言われることがあります。
それは、新しいことに挑戦しづらく、仕事ではとにかくマニュアル通りに昨年と同じ動きを繰り返すことが求められるからです。
その方が失敗も少なく済みますし、税金を使用している以上大きな変革は難しいですよね。
すると、仕事に対して「モチベーションが上がらない」「成長を感じられない」といった不満が多く出るそうです。
そこで、公務員時代の経験を活かしやすい社労士に転職すれば、失敗も多くなりますが仕事の裁量が増え、やりがいを感じられるようになるでしょう。
メリット④高卒者でも社労士試験を受けることができる
社労士の受験資格は、「学歴」「実務試験」「試験合格」によって与えられます。
学歴はその名の通り卒業した学校で、実務経験は職場、試験合格は司法試験などの決められた試験に合格していることを指します。
そして社労士試験の学歴による受験資格は、大学卒と専門学校卒、高等専門学校(5年制)卒にしか与えられておらず、通常高卒者は受験することが出来ません。
しかし、公務員になった後で社労士試験を受験する場合、公務員として働いた経験が「実務経験」の条件を満たし、受験資格を得ることが可能です。
これには公務員として3年以上勤めた経験が必要になります。
社労士試験は公務員の次のキャリアを考えている人におすすめ
この記事では、社労士試験の公務員が優遇されるという話について、免除科目や相性、公務員と一般受験者の合格率の違い、転職するメリットなどなどを解説しました。
公務員は基本的に社労士試験に関係する部署で10年働いていれば、その実務経験に応じて試験科目の中から免除科目を選択することができます。
その場合の点数は、総得点の合格基準点によって算出されるため満点扱いにはなりませんが、科目免除を受けた場合の合格率は通常の3倍以上高くなっています。
さらに、社労士として働いていく中で公務員時代の経験を活かしやすいですし、上手く独立すれば年収の大幅なUPも期待できるでしょう。
科目免除は必ず行えばよいというものではありませんが、ほとんどの場合試験で有利になりますし、公務員は社労士試験で優遇されているという話は間違いないようです。