弁護士、検察官、裁判官を法曹三者と呼びますが、その実務に就くために受験しなければならないのが司法試験です。
2011年の司法試験制度改革により実施されるようになった司法試験予備試験も含めて、受験時に問われる試験科目は多岐に渡ります。
当記事では広範な試験範囲を理解して効率的に司法試験に対応するために、試験科目や科目免除の有無、司法試験と予備試験の試験科目の違いについてご紹介します。
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受験を検討されている方や司法試験について興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
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司法試験の受験資格
司法試験の試験科目を知る前に、まずは「試験とは何なのか」について簡単にご説明します。
司法試験の受験資格や試験形式を知ることで、下記でご説明している予備試験との試験科目の違いや試験形式の違いがわかりやすくなるでしょう。
現在の司法試験では2つの受験資格が設けられています。
- 法科大学院を修了する
- 司法試験予備試験に合格する
司法試験は受験資格を満たさなければ受験することができないため、受験を検討している方はまず上記のどちらかの受験資格を満たす必要があります。
受験資格①法科大学院を修了する
各大学の法科大学院(ロースクール)に入試合格し、2年(既修コース)か3年(未修コース)のカリキュラムを修了することで、受験資格を得ることが出来ます。
また、2023年からは法曹コースができ、大学1年または2年※のタイミングで、条件を満たしている学生は大学法学部と法科大学院を最短5年で修了することができるようになりました。
※文部科学省「認定連携法曹基礎課程を置く学部 3+2法曹コースの実態調査」
法科大学院を修了して司法試験に挑むのが、最も一般的なルートです。
受験資格②司法試験予備試験に合格する
司法試験予備試験(予備試験)は、その名の通り本来は司法試験の予備として実施が始まった試験で、年齢制限がなく高校生や学部生でも受験をすることができます。
予備試験に合格すれば法科大学院に通わなくても司法試験の受験が可能になるため、最短で司法試験への合格を目指すことができます。
ただし、予備試験の合格率は1.0~4.0%ほどと非常に低く、司法試験と同様の難易度を求められるので合格は決して簡単ではありません。
上記の通り、予備試験を学部生時代に早めに対策をすれば、不合格だったとしてもそのまま法科大学院の入試対策に移行できるので、法曹を目指す学生はどちらも対策をするケースが多いです。
司法試験の出題形式は大きく分けて2種類
司法試験の短答式試験と論文式試験は4日間かけて実施され、最初の3日間は論文式試験、最後の1日で短答式試験が行われます。
司法試験は論文式試験から行われますが、採点に関しては短答式試験から先に行われるという特徴があります。
短答式試験が不合格になってしまうと論文式試験は採点すらしてもらえない足切り制度を採用しているため、短答式試験が行われる最後の1日まで集中力を切らさずに試験に挑むことが大切です。
司法試験の試験形式である短答式試験と論文式試験について、もう少し詳しく解説していきます。
①短答式試験
司法試験の短答式試験は択一式で行われ、「憲法」「民法」「刑法」の3科目が出題されます。
短答式試験は175点満点で、例年の合格基準点は100点前後を推移しているため、合格には6割程度の得点率が求められます。
上記でお伝えした通り、司法試験の短答式試験は不合格になると以降の論文式試験を採点してもらえない足切り制度があるため、確実に6割以上得点できようにしっかり対策する必要があるでしょう。
②論文式試験
司法試験には短答式試験の他に論文式試験があり、こちらがメインとなる最難関試験です。
論文式試験は、法律基本7科目と呼ばれている「憲法」「行政法」「民法」「商法」「民事訴訟法」「刑法」「刑事訴訟法」から出題されます。
それに加えて「倒産法」「租税法」「経済法」「知的財産法」「労働法」「環境法」「国際関係法」の中から1科目を選んで解答する選択科目があるなど、短答式試験に比べて試験範囲がかなり広いところが特徴です。
論文式試験では全ての科目で六法全書が貸与され、六法を参照しながら2時間の試験時間内に最大8枚の解答用紙に答案を書き上げます。
提示された選択肢を選ぶ短答式試験と比べて、勉強した各法律の知識や過去判例をしっかり理解・応用して実際に論証が立てられるかを問う実践的な試験といえます。
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司法試験の出題形式別の配点形式
①短答式試験の配点形式
短答式試験では、マークシート形式で出題が行われます。
科目 | 問題数 | 試験時間 | 配点 | 最低ライン(40%) |
---|---|---|---|---|
民法 | 30問~38問 | 75分 | 75点 | 30点 |
憲法 | 20問~25問 | 50分 | 50点 | 20点 |
刑法 | 20問~25問 | 50分 | 50点 | 20点 |
短答式試験は3科目から出題され、試験時間・配点はそれぞれ上記の通りとなっています。
また、各科目には得点の最低ラインが設けられており、全ての科目で配点の4割以上を得点しないと不合格になってしまいます。
論文式試験と比較して、マークシート式なので暗記がものを言うという訳ではなく、思考力も問われる問題が出題されます。
②論文式試験の配点形式
論文式試験は、その名の通り記述形式で出題されます。
※下記の形式は、令和4年度試験のもの
科目 | 問題数 | 試験時間 | 配点 | 最低ライン(25%) |
---|---|---|---|---|
公法系科目 (憲法・行政法) |
2問 | 240分(1問につき2時間) | 100点 | 25点 |
民事系科目 (民法・商法・民事訴訟法) |
3問 | 300分(1問につき2時間) | 300点 | 75点 |
刑事系科目 (刑法・刑事訴訟法) |
2問 | 240分(1問につき2時間) | 200点 | 50点 |
選択科目 | 1問 | 180分 | 100点 | 25点 |
論文式試験では1問あたり8枚の解答用紙が用意され、答案を作成していきます。また、選択科目以外は、1問につき2時間の制限時間を設けられています。(選択科目は全体3時間)
各科目で満点の25%以上を得点できないと、その時点で不合格となってしまいます。
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司法試験の短答式試験科目
司法試験の短答式試験は足切り制度がある試験ですが、各科目の内容や勉強のポイントはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、短答式試験の試験科目である「憲法」「民法」「刑法」の3つにわけて、それぞれの内容や勉強でのポイントを詳しくご説明していきます。
①憲法
短答式試験の憲法は、分野別にすると「総論」「人権」「統治」の分野から出題されます。
憲法は非常に高い知識レベルが求められる問題が多く出題されるため、苦手とする受験生が多い試験範囲です。
とはいえ憲法は日本という国の法律の基礎となるため、これから法曹として働いていく上で避けては通れない大変重要な試験範囲です。
あまり馴染みのない条文が多いため、すぐに過去問に取り掛かるのではなくしっかり六法や参考書を使ってインプットをしてから問題集に移行する勉強がおすすめです。
〔第1問〕(配点:3)
外国人の人権に関する次のアからウまでの各記述について,bの見解がaの見解の根拠となって
いる場合には1を,そうでない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[No.1]か
ら[No.3])
ア.a.国は,在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極
的な事情としてしんしゃくすることができる。
b.外国人に対する憲法の基本的人権の保障は,外国人在留制度の枠内で与えられているに
すぎない。[No.1]
イ.a.憲法第93条第2項の「住民」と,憲法第15条第1項の「国民」とは統一的に理解さ
れるべきであり,憲法第93条第2項の「住民」は,日本「国民」であることがその前提
となっている。
b.地方公共団体の政治・行政は,国の政治・行政と互いに関連しており,地方公共団体が
国の事務を処理することもある。[No.2]
ウ.a.憲法第22条第2項は,「何人も」との文言を用いているため,国籍離脱の自由は,我
が国に在留する外国人にもその保障が及ぶ。
b.憲法による基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解
されるものを除き,我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ。[No.3]
②民法
短答式試験の民②題が出題されるなど、単純に記憶をしただけの知識では対応できない問題も出題されます。
そのため短答式試験の民法では、選択肢がある程度絞り込めるくらいの知識をインプットしてから問題演習でさらに知識をブラッシュアップする実戦で覚えていく勉強がおすすめです。
民法は試験範囲がかなり広いため、どこから手を付けて良いかわからないという方は論文式試験と試験範囲が被っている範囲から勉強を進めていくことも効果的です。
〔第1問〕(配点:2)
胎児に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わ
せたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.1])
ア.AがBの母Cとの間で締結した、Aの所有する甲土地をBに無償で与える旨の第三者のため
にする契約は、その成立の時にBが胎児であったとしても、そのためにその効力を妨げられな
い。
イ.胎児の父が胎児を認知するには、胎児の母の承諾を得なければならない。
ウ.胎児を受贈者として死因贈与をすることができる。
エ.胎児が不法行為により損害を受けたときは、胎児の両親は、出生前に胎児を代理して加害者
に対し損害賠償請求をすることができる。
オ.胎児の母は、認知の訴えを提起することができない。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ オ 5.ウ エ
③刑法
短答式試験の刑法は対象の条文から満遍なく出題されるため、試験範囲は民法同様広いです。
しかし刑法は比較的ひっかけのないシンプルな問題が多く、しっかり対策すれば重要な得点源にもなり得る試験範囲です。
また短答式試験の刑法の試験範囲は多くの部分が論文式試験と重複しているため、両方の試験範囲を共通して勉強することができます。
刑法は「判例がどのような立場に立ったものであるか」を意識して解いていく問題が多いため、インプットや問題演習の時間で「判例の立場」を良く整理してから解いていく勉強がおすすめです。
判例集を使って様々な判例に触れることも効果的です。
〔第1問〕(配点:4)
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合
には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.1]から[No.5])
ア.甲は、客観的にわいせつ性を有する書籍につき、その内容を確認して理解したものの、この
程度では刑法上のわいせつな文書には該当しないと考え、同書籍を多数の者に販売した。この
場合、甲にわいせつ物頒布罪は成立しない。[No.1]
イ.甲は、A方前路上に置かれていた自転車を、Aの所有物と認識して持ち去ったが、実際には
同自転車は捨てられた物であり、誰の所有にも占有にも属さないものであった。この場合、甲
に遺失物等横領罪が成立する。[No.2]
ウ.甲は、男性Aが、酩酊して暴れ回る女性Bを介抱するために取り押さえているのを見て、A
がBに対し無理矢理わいせつ行為に及ぼうとしていると誤信し、Bを助けるため、自己の暴行
の内容を認識しつつAに暴行を加え、傷害を負わせた。甲の暴行の程度が、甲が認識した急迫
不正の侵害に対する防衛手段としての相当性を超えていた場合であっても、甲に傷害罪は成立
しない。[No.3]
エ.甲は、乙に対し、A方に侵入して金品を窃取するように唆したところ、乙は、犯行を決意し、
A方に侵入しようとしたが、施錠を解錠できず、犯行を断念した。帰路において、乙は、B方
に侵入し、Bから金品を強取した。甲の教唆行為と乙のB方における住居侵入及び強盗との間
に因果関係が認められない場合であっても、甲に住居侵入罪及び窃盗罪の教唆犯が成立する。
[No.4]
オ.甲は、乙が窃取したバッグを、これが盗品かもしれないがそれでも構わないと思って購入し
た。この場合、甲に盗品等有償譲受け罪が成立する。[No.5]
司法試験の論文式試験科目
司法試験の論文式試験は司法試験の中でも1番の山場と言われるほど多くの受験生が苦手としている試験です。
そのためしっかり得点することができれば、受験生の中で大きな差別化を図ることができます。
論文式試験には「公法系」・「民事系」・「刑事系」といった系統別に分かれた必須科目と8科目から1科目を選んで解答する「選択科目」の全4科目から出題されます。
ここではそれらの試験の内容を科目別に詳しくご説明します。
①公法系(憲法・行政法)
司法試験の論文試験では、憲法と行政法の2科目が「公法系」に該当します。
公民系の論文試験では、「弁護士が弁護依頼当事者の利益を実現する立場で案件を理解して起案すること」が問題として出題されます。
具体的には、受験生は問題文中の当事者の意見が「違憲」を主張することであれば、それを立証して起案する答案を執筆していくことが必要です。
つまり、問題文中の当事者(弁護依頼者など)が何を求めているかを理解し、それを法的な知識と観点で起案する力が問われます。
②民事系(民法・商法・民事訴訟法)
司法試験の論文試験では、民法・商法・民事訴訟法の3科目が「民事系」に該当します。
民事系の問題の最大の特徴は事案が複雑であるところです。
一件に訴訟が複数提起されているような問題もあれば、当事者や関係者が多数登場する事例が問題になることもあります。
民事系の問題に取り組む場合は、問題文を焦らずにしっかり理解して当事者の関係図を書きながら頭の中を整理するなどの工夫が必須です。
そのため民事系の論文式試験で高得点の答案を作成するためには、問題文中の事実事項を整理した上で問題に当てはまる正確な法律に則して論じていく力が必要になってきます。
③刑事系(刑事法・刑事訴訟法)
司法試験の論文試験では、刑事法と刑事訴訟法の2科目が「刑事系」に該当します。
刑事系の論文式試験では問われている法律的な論点は基本的なものが多く、過去の判例によって規範が確立しているものがほとんどであるため、多くの受験生が正確に論証を書き出してくることが予想されます。
そのため司法試験でよく言われる「あてはめ」の部分の説得力や精度が最も論証の評価に差が出やすい科目です。
問題となっている要件の事実を的確に書き出す「事実の摘示」と、その事実がなぜ要件を満たすのかを論じる「事実の評価」をわかりやすく書き分けるのが高評価をもらえる答案の書き方です。
④選択科目
司法試験の論文式試験には選択科目があり、受験生は計8科目の中から1科目を選択して解答します。
- 倒産法
- 租税法
- 経済法
- 知的財産法
- 労働法
- 環境法
- 国際関係法(公法)
- 国際関係法(私法)
論文式試験の選択科目では、自分が得意な科目や一般的に合格率が高いと言われている科目を選び、試験勉強の時点で戦略を練っていくことが大切です。
ここからは各法律科目の特徴についてご説明していきます。
倒産法
倒産法とは破産法、(会社法による)特別精算、民事再生法、会社更生法の総称で、倒産法という法律はありません。
司法試験では上記のうち破産法と民事再生法が試験範囲となり、各1問ずつ出題されます。
倒産法は民事系科目と関連している法律のため、民事系科目が得意な受験生から人気があります。
また破産法と民事再生法は共通点が多いため、勉強では破産法を中心に民事再生法との違いも意識しながら過去問演習をしていくことが効果的と言えるでしょう。
租税法
租税法は、所得税法を主軸として法人税法と国税通則法から出題されます。
租税法は受験生から人気があまりない科目ですが、試験範囲が比較的狭いというメリットもあるため、使い方次第では試験を有利に進める存在となります。
租税法では所得税法の中でも所得分類が良く出題されるため、基本的には所得税法を勉強していきましょう。
法人税法との違いや判例を使った勉強も効果的です。
経済法
経済法は、主に独占禁止法に関する問題が出題されます。
人の生命や身体、財産などを保護する他の法律と違い、市場の競争機能という抽象的な概念を扱う法律であることが最大の特徴です。
経済法では、どのような事業活動が独占禁止法の対象となるかどうかを「条文に該当するか」「市場に悪影響を及ぼすか」の2つの視点から勉強することが重要になってきます。
知的財産法
知的財産法は特許法・実用新案法・意匠法・著作権法・商標法などの総称を指しており、司法試験では特許法と著作権法が試験範囲となります。
知的財産法は「特許権に基づいて差止請求ができるか」「特許侵害による損害賠償請求が認められるか」という視点から問題が出題されることが多いため、様々な判例を使って勉強していくことが重要です。
労働法
労働法は民法の特別法ということもあり、民法的な発想や債権法的な発想が要求される試験範囲です。
また労働法は選択科目の中で1番人気がある科目であり、特に教材が充実しているところも特徴です。
しかし労働法は試験範囲が広いため、「みんな選んでいるから」という理由で選択するのは少し危険です。
労働法では予備校などが出している論証集などを暗記し、あてはめによる「考慮要素」と「相場感」に磨きをかけるという勉強方が効果的です。
環境法
環境法は環境基本法をはじめとする環境10法が試験範囲となり、選択する受験生が少ないところが特徴です。
しかし、環境法は環境10法の知識を問う問題というよりは適切な条文を環境10法の中から牽引できるかどうかを問う問題が多いため、インプットはそこまで大変ではありません。
そのため環境法では環境10法の基本構造を理解するとともに、過去問を使って問題が「どこの法律の条文を指しているか」をしっかり理解して適切な条文を牽引する勉強が効果的です。
国際関係法(公法)
国際関係法(公法)は国際法・国際経済法・国際人権法の3法から出題され、国家間で起こる紛争や国家規模の問題に対する解決策が問われます。
国際関係法(公法)はインプットが多い範囲ですが、過去問から似たような出題が多い範囲でもあるため、国際法に関する基本知識をしっかり理解しながら過去問演習を何周も繰り返す勉強法が効果的です。
国際関係法(公法)は基本知識さえしっかり押さえておけば、過去問を解くことで合格レベルの答案は作れる穴場科目と言えるでしょう。
国際関係法(私法)
国際関係法(私法)は個人間における国際紛争の解決に利用される法律であり、司法試験では準拠法選択の問題や国際民事手続法が試験範囲として出題されます。
国際関係法(私法)は受験生から根強い人気がある選択科目で、教材や予備校の講義は比較的充実しています。
国際関係法(私法)では条文の趣旨がしっかり答案に反映されているかという点が重要視されるため、各条文の趣旨までしっかり勉強することが求められます。
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予備試験の試験科目(司法試験との違い)
次に、予備試験の選択科目について解説をしていきます。
基本的に、予備試験の試験科目は、司法試験と多くの部分で重複しています。
ただし、下記の試験科目は、予備試験にのみ用意されており、司法試験にはない内容です。
※2022年から予備試験に選択科目が導入され、司法試験と同様の選択科目が追加されました。それに伴い、以前は予備試験にのみあった一般教養科目が廃止されました。
実務基礎科目
予備試験では論文式試験の科目に法律実務基礎科目が追加されます。
法律実務基礎科目はより実践を想定した試験科目となっており、民事系と刑事系の2科目があります。
民事系では主に要件事実・準備書面問題・法曹倫理が問われることに対し、刑事系では、刑事手続・事実認定・法曹倫理を問う問題が出題されます。
口述試験
予備試験には、前述した法律実務基礎科目を口述形式で問う口述試験があります。
口述試験は予備試験独自の試験で、試験官の質問に口頭で即座に答える試験形式になっています。
口述試験の合格率は約95%と非常に高く、短答式試験と論文式試験に合格してきた受験生からするとそこまで難易度は高くない試験と言えるでしょう。
司法試験の科目別合格ライン
短答式試験の合格ライン
試験年度 | 合格者平均 | 最低ライン(足切り) | 満点 |
---|---|---|---|
令和5年 | 126.1点(72.0%) | 70点(各科目の40%以上) | 175点 |
令和4年 | 123.3点(70.4%) | ||
令和3年 | 126.4点(72.2%) | ||
令和2年 | 118.1点(67.4%) | ||
令和元年 | 129.3点(73.8%) |
短答式試験の合格ラインは上記の通りとなります。
合格者平均を見ると毎年7割程度が合格ラインとなっています。論文式試験と比べても点数に差が出にくいので、まずは7割を獲得することを目標にしましょう。
論文式試験の合格ライン
試験年度 | 合格者平均 | 最低ライン(足切り) | 満点 |
---|---|---|---|
令和5年 | 392.01点(49.0%) | 70点(各科目の25%) | 800点 |
令和4年 | 387.16点(48.3%) | ||
令和3年 | 380.77点(47.5%) | ||
令和2年 | 393.50点(49.1%) | ||
令和元年 | 388.76点(48.5%) |
論文式試験の合格ラインは、およそ50%前後が合格者平均となっています。
また、論文式試験の得点の算定方法は、受験者の点数(素点)を、試験委員の採点結果の平均点から数値(偏差値)を算定して、得点とします。
なお、採点をする試験委員は、科目によって異なる場合が多いです。
受験者をX、採点委員をYとした場合、数式で表すと下記のようになります。
得点₌(採点委員YのX素点-採点委員Yの採点答案全体の平均点)÷採点委員Yの採点答案全体の標準偏差※×(該当設問の満点×0.1)∔(該当設問の満点×0.5)
※標準偏差₌√{(採点委員Yが採点した該当設問のX素点-採点委員Yの採点答案全体の平均点)²の総和÷(採点委員Yの採点受験者数-1)}
令和6年度 司法試験の試験日程
令和6年(2024年)の司法試験の実施日程は下記の通りです。
願書交付 | 3月8日(金)~4月2日(火) |
---|---|
願書受付 | 3月19日(火)~4月2日(火) |
試験実施 |
|
短答式試験成績発表 | 8月1日(木) |
合格発表 | 11月6日(水) |
各試験の日程と時間配分は、下記の通りとなります。
日程 | 試験内容 | 試験科目 |
---|---|---|
7月10日(水) | 論文式試験 |
|
7月11日(木) |
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|
7月13日(土) |
|
|
7月14日(日) | 短答式試験 |
|
計4日間の長丁場なので、体調面も整えて、集中力を切らさずに試験へ臨む必要があります。
司法試験の試験科目の特徴・違いを事前に把握しておこう
ここまで司法試験の試験科目や予備試験との違いについて解説してきました。
重要なポイントをもう1度おさらいします。
- 司法試験は短答式試験と論文式試験がある
- 司法試験に試験科目の免除制度はない
- 予備試験は実務基礎科目や口述試験がある
- 2022年度から予備試験の一般教養科目が廃止された
司法試験は膨大な試験範囲から高レベルの問題が出題され、短い試験時間の間に答案を作成しなければなりません。
しかし上記でお伝えした試験科目をしっかり理解することで、勉強しなければならない科目や合格までの道筋が見えてくるため、受験を検討している方はこの記事を司法試験合格の対策として役立てていただければ幸いです。