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企業内弁理士の転職は難しい?仕事内容や年収は?

更新日:2024-03-05

企業内弁理士の転職は難しい?仕事内容や年収は?

弁理士とは特許権・商標権などといった知的財産に関する業務を行う八士業の一つです。

主に特許事務所に就職し、特許出願の申請代行をするケースが多いですが中には一般企業で知的財産保護に携わる方もいます。

資格を持っていれば独占業務に携わることができるので、キャリアアップとして企業内弁理士を目指される方もいるでしょう。

この記事では企業内弁理士の仕事内容・役割や転職難易度について解説していきます。

企業内弁理士の役割とは?

弁理士と聞くと個人事務所を開業したり、どこかの知財関係の事務所に勤めているとイメージする方が多いかもしれません。

一方で、企業内弁理士とはその名の通り自分が所属している企業の知的財産に関わる案件を取り扱う職業です。

その役割は企業の規模によって差があるため、この記事では大企業・中堅企業・中小零細企業に分けて解説していきます。

大企業の企業内弁理士

自社内の知的財産(特許、商標等)の申請を行政に対して行います。

大企業では企業内弁理士の人数が多く、特許分野・商標分野と同じ知的財産を扱う仕事でも分野が細かく分かれていることが多いです。

幅広くカバーするというよりは特定の分野に特化した業務を行うので、自分の専門性を磨くチャンスがあります。

中堅企業の企業内弁理士

大企業と違い、特許の申請は専門の特許事務所などに依頼していることが多いです。

中堅企業の企業内弁理士は一部の特許申請業務を自社で行います。

中小・零細企業の企業内弁理士

小さい規模の会社では商標に関わる案件が中心となります。

特許申請を自社で行うには大きな労力がかかる為、人数の少ない中小・零細企業では外部に業務を委託している場合が多いです。

また知的財産に関わる専門部署が設置されているケースは少なく、弁理士は総務部などに所属し弁理士以外の総務業務にも携わる可能性があります。

企業内弁理士になるメリットとデメリット

弁理士は専門的な業務内容から特許事務所などに所属して依頼者と特許庁の間をつなぐ役割を担います。

しかし弁理士の資格を持ちながら一般企業に就職し、「企業内弁理士」として働く方も多くいるのが事実です。

実際に、企業内弁理士になるとどのようなメリット・デメリットがあるのか具体的に解説していきます。

メリット① 企業内で専門家としてポジションを確立できる

弁理士の資格は合格率一桁台の難関資格の一つです。

弁理士の資格を持ち、知的財産権に関わる知識を有している方は企業にとって重宝する人材となります。

企業としては高額な報酬を払って外部の弁理士に依頼するより、自社の従業員が特許申請などを全てまかなうことでコストダウンにつなげることができるでしょう。

そのため、弁理士の独占業務に対応できるということを強みに会社内での昇給・昇進に有利に働く可能性があります。

メリット② 企業の経営戦略に携わるチャンスがある

特許事務所などに勤める弁理士は顧客の案件に応じて行政に必要な申請や手続きを行いますが、企業内弁理士は知的財産を通して経営戦略に関わるチャンスがあります。

他社の特許の出願状況を調査し、自社で特許申請できそうな技術をピックアップ・特許申請することで他社よりも経営上有利に立つことができます。

このように企業の経営戦略に携われることは企業に属している企業内弁理士ならではのメリットです。

デメリット① 経験できる業務が限られている

特許事務所などに勤める弁理士はあらゆる分野の案件に携わることができる為、特定の分野に偏らず幅広い業務を経験することができます。

一方で企業内弁理士は自社の技術以外の分野に関わる事が難しい為、必然的に経験できる業務の幅が狭まってしまう可能性があるでしょう。

まずは特許事務所で幅広く業務を経験してから企業内弁理士に転職する方がキャリアアップに有利となる可能性があります。

デメリット② 弁理士以外の業務も対応する必要がある

特許事務所などに勤める弁理士は、基本的に知的財産権に関わる仕事に集中しやすい環境にあります。

しかし企業内弁理士は会社の規模によっては専門の部署がなく、他の総務系の業務と掛け持ちになる場合があるでしょう。

特に中小・零細企業の場合、特許や商標に関わる案件が頻繁にあるわけではない上に、他の業務に人手が足りていない場合があります。

そのような場合、自分の専門とは関係のない業務を担当することがあり、弁理士としての仕事だけにこだわる方にはデメリットと感じるかもしれません。

企業内弁理士への転職は難しい?

企業内弁理士には、企業内だからこそのメリットやデメリットがあるという事をご紹介しました。

実際に働いてみるとメリットも非常に多く、また企業内弁理士になることを望んでいる弁理士資格取得者も多数いらっしゃるようです。

が、その分「企業内弁理士へ転職するのは難しい」という声もよく聞きます。

弁理士として企業内弁理士へ転職するのが難しいと言われる理由は何なのでしょうか?

企業内弁理士への転職難易度

企業内弁理士への転職は結論からいうと「容易ではない」です。

日本弁理士会の会員数は11,903名となっていますが、実際に企業内弁理士として働いているのは2,000名ほどと言われています。

これはつまり弁理士の資格を持っている方の人数に対して求人数が少なく、競争率が非常に激しいと言えるでしょう。

知的財産の専門部署を持つ企業は大企業が多く、中小企業では部署そのものがないといったケースも多いです。

中小企業で企業内弁理士として働きたい方は総務部門に転職し、その企業が行っている特許申請を内製化できることをアピールしてみてはいかがでしょうか?

企業内弁理士の仕事内容

ここからは企業内弁理士の具体的な仕事内容について解説していきます。

特許事務所に勤める弁理士との違いなどにもついて解説しますので、企業内弁理士への転職を目指している方は是非参考にしてみてください。

企業内弁理士の業務は大きく分けると下記の3つに分けられます。

企業内弁理士の仕事内容

権利化業務

権利化業務とは自社の知的財産を行政に申請し、保護する業務です。

わかりやすいのは特許の申請で、特許庁に提出が必要な書類の準備や手続きなどを行います。

自分の所属する企業の技術の中で特許が申請できるものを調査、または他部署から依頼を受けて特許庁へ申請します。

また企業によっては社の知的財産を使った戦略の立案に企業内弁理士が携わることもあり、特許事務所では経験できない経営に関わる業務を担うことができる可能性があるでしょう。

ライセンス管理

自社が特許を持っている以上、他社はその技術などを無断で使用することができません。
もし企業同士の合意のもと、特許技術を他社に貸す場合は申請を行う必要があります。

この技術の貸し借りに関わる申請や管理などを企業内弁理士が担います。

企業同士のトラブルに発展しないように専門知識を有する企業内弁理士が契約書の作成などを担当します。

知的財産権の管理

自社が持つ特許などの知的財産権を管理し、他社が無断で自社の技術などを使用していないか監視することも企業内弁理士の業務の一つです。

状況によっては相手に対して訴訟を起こすこともあり、弁護士と連携を取りながら自社の知的財産権を守ります。

企業内弁理士の年収はどのくらい?

士業と言えば年収が高いというイメージを持っている方が多い傾向にあります。

実際に企業内弁理士の年収は他の士業などと比べてどの程度の水準なのかまとめてみました。

企業内弁理士の年収

企業内弁理士の平均年収は20代で約500万円、30代で約650万円、40代で約820万円、50代で約1,100万円とされています。

日本人の平均年収は433万円なので平均より給与水準は高くなっています。

これは弁理士という職業が資格の必要な専門職である事や企業内弁理士を置く企業に大企業が多いことが要因になっていると考えられます。

他の士業と年齢別の平均年収を比べると下記の通りです。

20代 30代 40代 50代
企業内弁理士 500万円 650万円 820万円 1100万円
司法書士 290万円
〜480万円
450万円
〜560万円
510万円
〜710万円
650万円
〜760万円
弁護士 632万円 722万円 987万円

弁護士よりは年収が低い傾向にありますが、司法書士よりも年収は高くなっており給与水準の高い職業と言えます。

企業内弁理士への転職はどのようにして行う?

企業内弁理士は転職が容易ではないということをご紹介しましたが、実際にどのように転職活動を行えば良いのでしょうか?

他の職業でも言えることですが年齢や経験によって転職方法は変わってくるので、しっかりとキャリアプランを練って転職活動を行いましょう。

企業内弁理士への転職方法

企業内弁理士へ転職するにはまず当然のことながら弁理士の資格を取得する必要があります。

弁理士の試験は年に1回の実施で、合格率6~8%台の難関資格なので計画的な勉強が必要となるでしょう。

弁理士の資格を取得したあとは弁理士を募集している企業の求人に応募します。

企業内弁理士は知的財産に関する部署で働いている方が勤めながら弁理士の資格を取るというケースが主流ですが、近年は資格を得てから就職するパターンも増えてきているようです。

20代であれば資格持ちの未経験でも採用される可能性が高まりますが、30代以上の方は厳しい選考が予想されるので、まずは特許事務所などに就職し経験を積んでから企業弁理士を目指した方が良いかもしれません。

今までの経歴と弁理士としての経歴や知識を掛け合わせて、面接の場でアピールしていきましょう。

企業内弁理士の仕事内容や年収についてまとめ

この記事では企業内弁理士の仕事内容や年収などについて解説してきました。

記事の内容のまとめは下記の通りです。

  • 企業内弁理士は企業の知的財産権を守る仕事で特許の申請や管理などを行う
  • 企業内弁理士は他社の調査・特許出願を行う技術のピックアップなど経営戦略に関わる仕事に携わるチャンスがある。
  • 企業内弁理士は特許事務所などの業務に比べて自社の技術のみを扱うため、専門分野が狭くなる傾向にある。
  • 企業の求人数に対して弁理士の人数が多く転職難易度は高めである。
  • 企業内弁理士の平均年収は日本人の平均年収に比べて高水準である。

企業内弁理士になるには高いハードルがありますが、給与水準が高く会社内でも専門的なポジションに就けるので魅力がある仕事です。

国際特許の出願件数は年々増加しており、国際化が進む現代において企業内弁理士の重要性はますます高まってくるでしょう。

弁理士としての知識や経験を積み、企業内弁理士として転職成功を目指していきましょう。