難関資格として知られている社労士ですが、一般常識科目の対策で苦労する受験生は多いです。
社労士試験には「足切り」という厄介な制度があるため、苦手だからといって一般常識科目を捨てることはできません。
そのため、社労士試験の合格を目指す人の中には、「一般常識の対策方法を知りたい!」と考えている人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では社労士試験の一般常識科目の勉強法や、いつから対策を始めるべきか解説していきます。
社労士の合格を目指している人に役立つ内容となっているため、是非最後までご覧ください。
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社労士試験の一般常識は難しい?
社労士試験には「一般常識」という科目があり、一般常識は下記の2科目に分かれています。
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
社会保険労務士は、その名の通り社会保険や労務の専門家です。
そのため、社労士試験においては、一般的な「世間常識」ではなく社会保険や労務に関する常識が問われます。
一般常識は難しい!
結論からお伝えすると、社労士試験の一般常識はかなり難しいです。
雇用保険法や健康保険法など、一般常識以外の科目は、出題範囲がある程度決まっています。
しかし、一般常識で問われる内容は非常に広く、対策が難しいためです。
社会保険や労務の分野から出題されますが、「一般常識」と言いつつもマニアックな論点から出題されることも少なくありません。
対策が不十分だと、後述する「足切り」に引っかかってしまい、不合格になってしまう可能性が高まります。
実際、一般常識は多くの社労士受験生を悩ませている科目なので、効果的な対策や勉強時間の確保は必須です。
一般常識科目に足切り点はある?合格ラインはどのくらい?
社労士試験には、合格基準が設けられています。
各科目の点数が一定以下の場合、「足切り」に引っ掛かって不合格が確定するので、注意が必要です。
社労士試験の出題形式
まずは、社労士試験の出題範囲と出題形式について見ていきましょう。
社労士試験は、午前中に行われる「選択式試験」と午後に行われる「択一式試験」に分かれています。
なお、各試験の出題科目と出題数は下記の通りです。
〈選択式〉
労働基準法・労働安全衛生法 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
---|---|
労働者災害補償保険法 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
雇用保険法 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
健康保険法 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
厚生年金保険法 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
国民年金法 | 1問(5ヶ所の穴埋め) |
合計 | 9問(40点) |
〈択一式〉
雇用保険法7問
労働基準法 | 7問 |
---|---|
労働安全衛生法 | 3問 |
労働者災害補償保険法 | 7問 |
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 | 6問 |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 5問 |
社会保険に関する一般常識 | 5問 |
健康保険法 | 10問 |
厚生年金保険法 | 10問 |
国民年金法 | 10問 |
合計 | 70問(70点) |
選択式は、文章の中に虫食いとなっている5ヶ所に当てはまる語句や数値を、20ある候補から選択する形式です。
悩ましい数値や紛らわしい語句が出てくるため、正確に語句やデータは把握する必要があります。
択一式は、5つの選択肢の中から適しているものを選ぶ形式で、こちらも紛らわしい選択肢が用意されているので正確に知識を習得する必要があります。
社労士試験の合格ライン
社労士試験は、合格率が5%前後の難関試験として知られています。
なお、社労士試験には、下記のように合格する「前提」となる基準点が定められています。
- 選択式:各科目3点以上
- 択一式:各科目4点以上
これらの基準点をクリアした上で、毎年の試験結果を鑑みて発表される合格点を上回っている必要があります。
例えば、2023年の選択式の合格点は26点・択一式の合格点は45点で、2022年の選択式の合格点は27点・択一式の合格点は44点でした。
出典:(一財)安全衛生普及センター 令和5年(第55回)社労士試験の結果と総括
このように、毎年社労士試験の合格点は変動しており、明確な合格点は定まっていません。
とはいえ、選択式でも択一式でも、7割近く得点できれば合格の可能性は高いと言えます。
苦手科目を作らないようにして、各科目で安定して得点できるように勉強することが重要です。
社労士試験の足切りとは?
もう一度、社労士試験の合格基準を見てみましょう。
- 選択式:各科目3点以上
- 択一式:各科目4点以上
つまり、選択式であれば「2点以下」、択一式であれば「3点以下」だと、足切りに引っ掛かってしまいます。
例えば、選択式問題で35点近く取れたとしても、1つでも3点未満の科目があれば、不合格になるということです。
1つでも苦手な科目があると足切りに引っ掛かってしまう可能性があることから、社労士試験の合格をつかみ取ることはできません。
特に、一般常識は対策が難しく、勉強が後手後手に回ってしまう受験生も多いです。
そのため、十分な一般常識対策が取れずに本番を迎えてしまう人も少なくありません。
社労士試験は、そもそもの問題難易度が高いため、勉強不足の人は足切りにことごとく引っ掛ってしまいます。
この足切り制度が、社労士試験の合格率を低くしてしまっている大きな要因と言えるでしょう。
得点補正とは?
社労士試験には、得点補正という仕組みがあります。
得点補正とは、試験の得点分布や過去の社労士試験の公平性などを鑑みて、合格基準を調整することです。
例えば、難易度が高く得点が例年よりも低い場合などに得点補正が行われ、合格基準点が「3点以上→2点以上」「4点以上→3点以上」となります。
実際に、試験センターも「合格基準点については、各年度毎の試験問題に難易度の差が生じることから、試験の水準を一定に保つため、各年度において、総得点及び各科目の平均点及び得点分布等の試験結果を総合的に勘案して補正を行う」としています。
とはいえ、得点補正はあくまでも「おまけ」のようなもので、アテにするのは危険です。
安定して7割程度得点できるように勉強し、一般常識を含めて各科目に苦手意識を持たないようにすることが大切です。
社労士試験の一般常識の出題範囲や問われる内容とは?
社労士試験の一般常識は、非常に出題範囲が広いという特徴があります。
労務管理その他の労働に関する一般常識であれば労働経済白書から、社会保険に関する一般常識であれば厚生労働白書、主要科目以外の周辺法令から出題されます。
労一の労働経済白書
労務管理その他の労働に関する一般常識の対策で有効なのは、労働経済白書です。
労働経済白書とは、雇用・失業情勢や賃金の動向など、労働経済を分析した政府の刊行物です。
本試験では、失業率や有効求人倍率などのデータや、労務管理用語に関する出題がされます。
また、労働移動の概況など、時事にも関連した範囲からの出題実績もあります。
つまり、語句の正確な定義を理解しつつ、時事に関連した資料も含めて多くのデータを知識としてインプットしなければなりません。
社一の厚生労働白書
社会保険に関する一般常識の対策で有効なのが、厚生労働白書です。
厚生労働白書とは、厚生労働行政の現状や今後の見通しなどをまとめている政府の刊行物です。
本試験では、医療・福祉サービスの提供や子育て支援などの施策に関する出題がされています。
また、社会保険の適用範囲の拡大など、最新の時事に関連した出題もあります。
厚生労働白書では、福祉関連の現状や今後の見通しはもちろん、人口動態や外国人材の活用などのデータが載っているため、厚生労働白書の読み込みは有効な試験対策です。
主要科目以外の周辺法令
主要科目以外にも、社労士の一般知識で問われる法令は多くあります。
具体的には、下記の法令に関しては出題頻度が高いため、対策は必須です。
- 労働組合法
- 最低賃金法
- 職業安定法
- 高年齢者雇用安定法
- 男女雇用機会均等法
- 育児介護休業法
- 国民健康保険法
- 介護保険法
- 児童手当法
- 社労士法
他にも、確定給付企業年金や確定拠出年金などの出題実績もあります。
各法令の制定目的は必ず押さえつつ、重要語句を中心に知識を習得するのが効果的です。
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社会保険労務士の一般常識科目の適切な勉強法とは?
社労士試験の中でも、一般常識科目は対策が難しいです。
しかし、先述したように、社労士試験には足切りという厄介な制度が存在します。
一般常識科目の適切な勉強法を実践することで、着実に合格へ近づけるでしょう。
ここからは、社会保険労務士一般常識科目の勉強方法についてご紹介します。
広く浅く学ぶ
一般常識の対策は必須とはいえ、膨大な出題範囲をすべて網羅するのは非効率です。
そのため、「広く浅く」勉強することを心掛けましょう。
労働経済白書や厚生労働白書の全てを暗記するのではなく、要所だけ押さえておくイメージです。
「全く知らない状態」よりも、「多少は知っている状態」であれば正解できる可能性はグッと高まります。
テキストや過去問題の解説はしっかりと読んでおき、できるだけ幅広く知識を仕入れておきましょう。
頻出分野の対策は必須
市販のテキストや過去問では、頻出度や重要度を「A〜C」など、段階的に示している教材が多いです。
この中でも、頻出度や重要度が「高い」「普通」レベルの分野は対策が必須です。
基本的な勉強スタンスは、先述したように「浅く広く」で問題ありません。
しかし、国民健康保険法や介護保険法など、頻出分野や法令に関しては多少踏み込んで勉強することをおすすめします。
白書の対策方法
厚生労働白書は500ページ以上に及び、労働経済白書は200ページ程の分量があります。
もちろん、時間に余裕があればじっくり読んでも構いませんが、一般常識に注力するあまり、他の科目がおろそかになるのは問題です。
白書を読む際には、重要なポイントを押さえながら勉強する意識を持ちましょう。
具体的には、高齢社会白書、男女共同参画白書、女性労働白書の概略や高齢化率・要介護認定率などのデータが挙げられます。
なお、統計やデータに関する出題では細かい数字が出てきますが、完璧に覚える必要はありません。
例えば、「高齢者率が36.7%」というデータが出てきた場合、「高齢者率が30%台中盤」といったように、大雑把に把握すれば十分です。
また、両方の白書には「概要版」という箇所があります。
概要版では、白書が主に伝えたい内容をまとめているため、こちらも必ず読んでおきましょう。
法令の対策方法
法令分野では、国民健康保険法や介護保険法など、出題頻度の高い法令を中心に対策しましょう。
選択式の問題では、法令の目的条文や理念条文、責務条文がそのまま出題されるケースもあります。
そのため、まずは法令が制定された目的や背景を理解し、重要語句や重要な数字を覚えていきましょう。
特に、過去2〜3年で改正が行われた法令は、本試験でも狙われやすい傾向にあります。
改正内容や改正された背景を含めて、しっかりと対策しておきましょう。
社労士試験の一般常識科目はいつから始めるべき?
一般常識の対策を始める時期としては、6月頃を目処にするのがおすすめです。
試験までの約2ヶ月の間に一般常識を中心に勉強し、模試を通じて苦手分野の克服に努めましょう。
社労士試験の勉強を進める中で、一般常識は後回しにされがちです。
しかし、2ヶ月程度の勉強時間を設ければ、合格できるレベルの知識を習得できます。
繰り返しになりますが、社労士試験には足切りがあるため、全ての科目で安定的に得点できるようにする必要があります。
社労士試験に合格するためには800~1,000時間程度の勉強時間が必要と言われていますが、一般常識には80~100時間程度を割くイメージを持つと良いでしょう。
また、他の主要科目を仕上げてから一般常識の対策をしようとすると、十分な勉強時間が確保できない恐れがあります。
6月の段階で主要科目の出来が不十分でも構わないので、6月頃を目処に一般常識の対策に着手するスケジュールを組みましょう。
社労士試験の一般常識とは?勉強方法や足切りについてまとめ
社労士試験の一般常識は、多くの受験生を悩ませている難易度の高い科目です。
社労士試験には厄介な足切り制度があるため、「一般常識は難しいから捨てる」ということはできません。
どうしても一般常識の苦手意識が払拭できない場合は、「選択式は最低でも3点取れるようにする」「択一式は最低でも4点取れるようにする」と割り切ってしまうのもアリです。
しかし、6月に入ったら一般常識の対策に着手し、しっかりと勉強時間を確保しましょう。
労働経済白書・厚生労働白書・統計資料などをチェックすれば、合格基準点はクリアできるようになります。
また、テキストや過去問で頻出度をチェックし、出題頻度が高い分野や法令に関しては、踏み込んで対策すれば得点力は鍛えられるでしょう。
一般常識は多くの受験生が苦手意識を持っていますが、計画的に対策を行い、社労士試験の合格をつかみ取りましょう。