例年、司法試験と予備試験において「出題趣旨」が法務省から公表されます。
出題趣旨について何となく知っている方は多くとも、上手く活用出来ている方は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では「司法試験と予備試験における出題趣旨の概要や、活用すべきタイミング、見方のポイント」について、初学者向けにご紹介します。
いつ・どのように出題趣旨を予備試験の学習に役立てれば良いのか、具体的な活用法を理解できる内容となっています。
予備試験に初めて挑戦する方や、予備試験の学習方法を見直したい方は、ぜひ最後までお読み下さい。
司法試験予備試験の出題趣旨とは?
出題趣旨の見方や活用法をご紹介する前に、まずは「司法試験と予備試験における出題趣旨がどのようなものなのか」についてご紹介します。
そもそも「出題趣旨」とは、司法試験と予備試験の論文式試験において、出題者が受験者に求めていた解答の方向性や、解答する上で検討すべき論点を記載したものです。
例えば、令和3年度の予備試験における出題趣旨において、以下のような記載があります。
- 広告物掲示が認められない点について着目した検討が望まれる
- 表現活動に対する事前抑制ではないかも論点となる
- 判決の基準を参考にすべきであろう
上記のような論点や基準を明記した内容から、過去の出題趣旨を読み解くことで、採点基準や解答のコツを掴めることが分かります。
そのため、出題趣旨を用いた対策は予備試験を突破する上で、効果が期待できる方法と言えるでしょう。
後述にて、出題趣旨を活かす方法について解説しますので、併せてご確認下さい。
出題趣旨はいつどこで公表される?
司法試験と予備試験の出題趣旨は、それぞれ法務省のページにて公表されます。
ただし、公表されるタイミングやページの場所が異なるため、注意しなければなりません。
こちらの項目では「司法試験と予備試験それぞれの出題趣旨が、いつどこで公表されるのか」についてご紹介します。
間違えることがないように、それぞれしっかりとご確認下さい。
司法試験の出題趣旨はいつどこで公表?
まず「司法試験の出題趣旨」が公表されるタイミングと、公表ページについて以下の表にてまとめました。
公表されるタイミング | 11月頃 |
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公表ページ | 法務省公式ページにおける「司法試験の結果について」の 該当する年度ページ |
司法試験の論文式試験が7月中旬に実施され、出題趣旨は論文式試験から4ヶ月ほど経過したタイミングで毎年公表されています。
また、司法試験の結果が掲載されるページでは、年度に対応した過去の出題趣旨も確認できます。
過去問の理解を深めるためにも、各年度の出題趣旨も一緒にご活用下さい。
予備試験の出題趣旨はいつどこで公表?
次の「予備試験の出題趣旨」が公表されるタイミングと、公表ページについて以下の表にてまとめました。
公表されるタイミング | 2月頃 |
---|---|
公表ページ | 法務省公式ページにおける「司法試験予備試験の結果について」の 該当する年度ページ |
予備試験の論文式試験は9月上旬に行われ、出題趣旨は論文式試験から4ヶ月ほど経過したタイミングで毎年公表されています。
「論文式試験から数えて4ヶ月程度」という公表スケジュールは司法試験と同じですが、発表される月は異なりますので、司法試験の出題趣旨とお間違えのないようにご注意下さい。
また、予備試験における過去の出題趣旨も、「各年度の予備試験結果ページ」にて確認可能です。
出題趣旨の活用方法は?いつ読むべき?
実際のところ、それぞれの試験対策において出題趣旨はどのように活かすべきなのでしょうか。
こちらの項目では「出題趣旨の活用法」について、以下の2つのタイミング別にご紹介します。
- 学習初期
- 過去問の取り組み後
それぞれのタイミングで出題趣旨を適切に活用できれば、学習精度を大きく上げることが出来ます。
過去問演習の質を向上させたい方は、それぞれご確認下さい。
学習初期に出題者の意図を読み取るために読む
1つ目の活用タイミングと活用方法は「学習初期に出題者の意図を読み取るために読む」です。
学習の初期段階で出題趣旨を読むことで、「どのような事が求められているのか」と、問題や正解基準に対する理解が深まります。
同時に解答のインプットも増えるため、「この形式の問題ではこう書くべき」といったように、類似問題に対する解答パターンを自然と身に付けることも出来ます。
学習の初期段階では「何となくこういう事が求められている」のだと、出題の傾向と解答プロセスを簡単に理解出来ると良いでしょう。
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過去問を解いた後には必ず読む
2つ目の活用タイミングと活用方法は「過去問を解いた後には必ず読む」です。
過去問を解いた後には必ず、自身の回答と出題趣旨に記載されている内容と大きなズレがないか確認すべきです。
例えば、解答に至るプロセスで必要となる知識分野や、重要な論点や解釈の記載があれば、その都度メモやマーキングを行い整理しながら読むことをおすすめします。
過去問と併せて学習する際には、学習初期段階よりも細部までインプットすることを意識することが重要です。
過去問と出題趣旨は切っても切れない関係であるため、時間が限られている場合でも必ず過去2年分は一読すると良いでしょう。
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出題趣旨の見方は?押さえるべきポイント
出題趣旨は、ただ眺めるだけでは効果が今一つ見込めません。
こちらの項目では「出題趣旨を見る際に押さえるべきポイント」について、以下の4つをご紹介します。
- 科目・分野ごとに答案の書き方を理解する
- 参考答案とあわせて読む
- 難しい部分は一度飛ばし、インプットに戻る
- 完璧を目指し過ぎない
出題趣旨を最大限に活用し、効率良く学習を進めましょう。
科目・分野ごとに答案の書き方を理解する
1つ目のポイントは「科目・分野ごとに答案の書き方を理解する」ことです。
ある程度正解となる答案には、記述すべき内容や記述方法におけるルールがあります。
例えば、令和2年度の出題趣旨における「民事系科目」において「契約不適合責任 が認められるかについては,契約当事者が特に合意した内容及び取引上の社会通念に照らして 判断される」といったように、抽象論の記載を求める解説が多く見受けられます。
また、「甲社の取締役会の承認がないことを指摘した上で,取締役会の承認がない間接取引の効力について,判例を踏まえて検討することが求められる」といった記載から、判例や条文を用いた論じ方が示されています。
このように各科目において記述する上で重視すべき内容や、論証の構造を迅速に見分け、アウトプットしていくことで出題者が求める答案を作ることが可能になります。
参考答案とあわせて読む
2つ目のポイントは「参考答案とあわせて読む」ことです。
出題趣旨だけを見ても明確にどういった解答が求められている文章なのか、理解が難しい部分も少なくありません。
一方で、参考答案では出題趣旨に基づいた「実際の答案」が収録されています。
中には、各答案が「上位・中位・下位不合格レベル」で分かれており、答案同士の順位比較を踏まえて高い評価が得られる解答のポイントが理解出来るものもあります。
そのため、出題の意図が記載された「出題趣旨」と、解答の具体例が記載された「参考答案」とを見比べて読むことで、解説の理解度が深まるでしょう。
なお、参考答案は、「LEC東京リーガルマインド」や「伊藤塾」などの大手資格対策スクールから公表・出版されているものが、解答例の解説等も充実しているためおすすめです。
出題趣旨と参考答案とを併せて読むことで、解答の質を上げましょう。
難しい部分は一度飛ばしてインプットに戻る
3つ目のポイントは「難しい部分は一度飛ばしインプットをやり直す」ことです。
何度読んでも分からない場所や、理解が出来ない箇所については、そもそものインプットが足りていない可能性があります。
例えば、「本問は,匿名表現の自由の制約(規制1),結社の自由,団体とその構成員の表現の自由・ プライバシーの権利の制約(規制2)の可否を問うものである」といったように、各設問の冒頭にて「記述する上で必要となる前提知識や条文の理解」が記載されています。
そのため、上記のような出題概要で理解できない内容があれば、論述に落とし込むことは不可能であるため、関連する知識を再度見直さなければなりません。
理解が難しい部分は一度飛ばし、再度議論についてインプットし直すというのも、確実に得点に繋げる上で重要な方法の1つです。
完璧を目指し過ぎない
4つ目のポイントは「完璧を目指し過ぎない」ことです。
出題趣旨と参考答案は言わば「正解」ですが、100%完璧に一致させる必要はありません。
「出題趣旨と書き方が違うから不正解」と決めつけるのではなく、指摘されている要点を押さえて書けるようにすることが重要です。
また、直近3年間の出題趣旨は40ページを超えるような非常にボリューミーなものですので、学習箇所においても優先順位を決めることをおすすめします。
例えば、受験する年度に関連性が高い内容や、得点源に繋がる重要度の高い問題などは重点的に確認すると良いでしょう。
出題趣旨を用いる時間に偏りすぎないように、計画的に学習スケジュールを組む必要があります。
司法試験予備試験の出題趣旨を活用して理解を深めよう
今回、司法試験と予備試験の出題趣旨が公表されるタイミング、学習段階に合わせた活用法、効果的な見方について解説しました。
出題趣旨とは「出題者の意図が記載された解説文」の一つで、解答の方向性や科目ごとの論述方法を理解できます。
学習初期段階において出題者の意図を簡単に把握し、過去問を解いた後にも記載内容とのズレを確認するといった、二段階での活用がおすすめです。
なお、司法試験の出題趣旨は「11月頃」、予備試験の出題趣旨は「翌年2月頃」に公表されます。
今回ご紹介したように、出題趣旨と参考答案とを併せて活用し、答案の精度を高めましょう。