社会福祉士は、「ソーシャルワーカー」とも呼ばれており、高齢者から子育てまで幅広い分野において、福祉のサービスを必要とする方や、生活上さまざまな困難を抱える方々を支援するプロフェッショナルとして、近年ますます需要が高まっている国家資格です。
しかし、「給料が安いのでは」「資格を取っても需要がないのでは」といった声も聞こえてきます。
そこで当記事では、社会福祉士について関心がある方向けに、気になる年収や、資格の将来性などについてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
社会福祉士はどんな資格?
まず、社会福祉士という資格について、その概要と、仕事の内容、取得の方法について簡単にご紹介します。
社会福祉士の概要
社会福祉士は、社会福祉業務に携わる専門職の国家資格であり、「社会福祉士及び介護福祉士法」で位置づけられています。
社会福祉士資格は「名称独占」であるため、資格を持っている人だけが「社会福祉士」を名乗れます。
福祉や介護・医療に関する相談援助に必要な専門知識やスキルを持つ者として、平成31年現在では245,181人の社会福祉士が登録されており、福祉の幅広い分野で活躍しています。
「社会福祉士及び介護福祉士法」によると、社会福祉士とは以下のように記載されています。
専門的知識及び技術をもって、身体上もしくは精神上の障害があること、または環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連携及び調整その他の援助を行うことを業とする者
社会福祉士の仕事の内容
具体的な仕事の内容としては、身体及び精神に障害のある方、生活困窮者、ひとり親の家庭など、心身や環境上の理由によって日常生活を送るのに支障がある方々を対象に、様々な相談に対応したり、必要な援助を提供する仕事です。
社会福祉士の支援の対象者は、高齢者から子供まで幅広く、その分だけ活躍の場も多くなっています。
特に近年では、少子化・高齢化や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により家庭で過ごす時間が増えたこともあり、児童虐待、高齢者虐待の増加などが、解決困難な社会問題として報道されるようになっています。
こうした問題に対応する行政機関や、各自治体にある社会福祉協議会あるいは様々な民間の福祉関係の支援団体などでは、社会福祉士が必要とされています。
社会福祉士の取得の方法
厚生労働大臣の指定試験機関である「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」が運営する「社会福祉士資格試験」で合格する必要があります。
試験時間は240分で、5肢択一形式を基本に、18科目群という幅広い分野の中から、合計150問が出題されます。
受験資格は法律で定められており、学歴や実務経験などによって受験資格が違います。
福祉系大学を卒業した方と、一般大学を卒業した方では取得方法が違いますし、相談支援機関での支援実務経験や、専門の社会福祉士養成機関に入学する必要がある場合もあります。
詳細は、社会福祉振興・試験センターの公式ホームページの「受験資格(資格取得ルート図)をご覧ください。
社会福祉士の年収は低い?
社会福祉士の取得を考えている方にとって、どうしても気になるのが年収の水準です。
果たして年収は高いのでしょうか、低いのでしょうか?
社会福祉士の年収に関する唯一の公式統計調査として、「社会福祉士・介護福祉士就労状況調査」(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)があります。
直近の結果は平成27年調査でデータが古いのですが、ひとつの目安としてご紹介します。
(なお、令和2年度に最新調査が行われており、結果は後日公表されるとのことです。)
社会福祉士の平均年収 | 全体の平均年収 | |
---|---|---|
全体 | 377万円 | 420万円 |
男性(正規職員) | 454万円 | 521万円 |
女性(正規職員) | 380万円 | 276万円 |
20代 | 295万円 | |
30代 | 346万円 | |
40代 | 408万円 | |
50代 | 475万円 | |
60代以上 | 348万円 |
全体の平均(正規職員、非正規職員全体の単純平均)は377万円ですので、月額の給料に換算すると、30万円を少し超えるくらいの水準です。
つまり、これらのデータから以下のようなことが分かります。
- 全体の平均年収に比べると、社会福祉士の全体年収は低い
- 女性の社会福祉士正規職員の場合、全国の女性平均年収より高い傾向にある
- 男性の社会福祉士正規職員の場合、全国の男性平均年収より低い傾向にある
- 社会福祉士で全体の平均年収より高くなるのは50代
なお実際は、民間の福祉関係の事業所で働くのか、それとも公務員として働くのか、管理職なのか一般職員なのかによっても給料や年収に違いがあります。
一定の勤務年数を重ねていくと給料アップも期待できますし、社会福祉士の資格を持っているなどの厚生労働省が定める条件を満たすと、特別養護老人ホームの施設長になることが可能になるなど、キャリアアップによる年収増の期待できます。
社会福祉士の資格に需要がないって本当?
社会福祉士については、インターネット上で「食えない資格だ」「仕事を探すのが難しい」といった書き込みがあるので、不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
仕事の範囲は幅広く、ひとり暮らし高齢者、子育て家庭、障害者や生活困窮者などを対象に、窓口などで各種の相談に対応し、日常生活を支援するのが仕事です。
特に高齢化がさらに進む日本では、社会福祉士の活躍の場がますます増えていきますし、人とのコミュニケーションが重要な仕事なので、AIに取って代わられるような類の仕事とは質が異なるものといえます。
仕事はとても忙しいので、大変ではあるのですが、その分やりがいが大きい仕事です。
つまり、社会福祉士は、これからますます需要が高まる「食える資格」なのです。
たくさんの仕事があり、就職先に困ることを心配する必要はありません。
社会福祉士の平均年収や他業種との比較まとめ
社会福祉士は、ますます需要が高まる福祉のプロフェッショナルです。
行政機関のほか、民間の介護福祉関係の事業所などで、多くの社会福祉士が活躍していますが、まだまだ人材が足りないとさえ言われています。
一般的な給与所得者と比較すると多少給料は少ない傾向にありますが、同レベルの給料はもらえますし、長く勤めてキャリアを重ねると給料アップも期待できます。
将来性のある資格ですので、人とのコミュニケーションが好きで、福祉の世界で活躍したいとお考えのある方は、ぜひ挑戦してみてください。