通信制高校の私立と公立は何が違うの?学費・授業など徹底比較 更新時間 2022.11.15
全日制高校と同じように、通信制高校にも「公立」と「私立」があります。
どちらも高卒資格を取得する条件に違いはありませんが、学費や学習スタイル、サポート体制、設備などはまったく異なります。
進学や編入にあたって、公立と私立にどのような違いがあるかを理解おくことは重要です。
本記事では、公立と私立の違いを徹底比較しながら、それぞれのメリット・デメリットをご紹介していきたいと思います。
学校選びに悩んでいる方、通信制高校の仕組みについて知りたい方はチェックしてください。
【公立と私立】通信制高校の6つの違い
ここからは、公立と私立の通信制高校の違いを解説していきます。
2つの大きな違いは以下のような項目があげられます。
- 1.学費
- 2.スクーリング回数
- 3.授業内容
- 4.卒業率
- 5.メンタルサポート
- 6.入学・編入・転入時期
では、両者の違いを具体的にみていきましょう。
学費の違い
公立と私立の通信制高校では、学費が大きく異なります。
以下は、当社が調べた公立と私立の学費平均の内訳をまとめたものです。
(※学校やコース、都道府県によって差額が生じます)必要な費用 | 公立 | 私立 |
---|---|---|
入学金 | 500円 | 1~5万円 |
授業料 | 1~3万円程度(年間) | 20万円~(年間) |
※1単位300円~1,000円 | ※1単位6,000円~ | |
授業料以外の費用 | 1.5万円程度(年間) | ネットコース3万円〜(年間) |
登校コース10万円〜(年間) | ||
合計 | 2~6万円程度 | 24万円~ |
公立の場合、3年間で卒業できれば10〜15万円ほどで高卒の資格が得られます。
一方、私立の学費は3年間で70万円以上になり、公立との差が明白です。
どうしてこれほどの差額が生じるのかについては、読み進めていただくと理解できるでしょう。
スクーリング回数
通信制高校とは、その名の通り「通信教育で学ぶ高校」を指します。
何らかの事情で毎日登校できない人に対し、教育を受けさせる目的で設立されたのが、通信制高校の始まりです。
しかし通信教育でも、登校が一切不要ということではありません。
公立通信制高校の場合は、毎月2回程度のスクーリングが義務付けられています。
さらにスクーリング日と期末試験の日程が学校によって決まっており、きちんと守らないと単位を習得できません。
病気やケガ、不登校などの問題を抱えている人にとっては、決まった日にスクーリングすることがむずかしいケースもあるでしょう。
私立の通信制高校では、月に1回、もしくは年に3〜5回のスクーリングで卒業できる学校も多く、自分の都合に合わせて計画を立てることが可能です。
また「通信制高校だけど毎日登校したい」という生徒に対しては、週5日のスクーリングを設けている学校もあり、要望に対して柔軟に対応できる体制を整えています。
通信制高校のスクーリングについて詳しく知りたい方は是非 「卒業するためには絶対必要?通信制高校のスクーリングとは!」を参考にしてみてください!
授業内容
公立通信制高校の授業は、全日制高校と同じような基本的な学習内容です。
通信制高校を卒業するには、「必履修科目を含む74単位以上の単位取得」をクリアする必要があります。
必履修科目とは国語や地理、数学、理科などで、全日制や定時制高校も同じように定められており、もちろん公立も私立も変わりません。
そして74単位から必履修科目を引いた残りの単位は、各学校で設けている選択科目から選ぶ仕組みになっています。
公立であれば古典や政治・経済、情報科学、ビジネス基礎などがありますが、私立では選択科目以外にさまざまなコースを設けていることが多いです。
以下は、私立通信制高校の専門コースの一例です。
- 芸能コース
- スポーツコース
- 美容コース
- 進学コース
- ペットコース
- 個別指導コース
私立の通信制高校では、卒業に必要な学習を進めながら国家資格が取得できたり、スポーツや進学に専念できたりするような体制が整えられています。
高校生活において、自分の目標や夢に近づけるような取り組みがされているのが特徴です。
卒業率
公立の通信制高校にとって大きな課題になるのが、「卒業率の低さ」といっても過言ではないでしょう。
通信制高校は自主学習のため、全日制高校と比べても本人の意思や努力が必要不可欠です。
しかし公立通信制高校の卒業率は40%前後で、3年間で卒業できる生徒は20%にも及びません。
一方で私立の場合、100%に近い卒業率の学校も多く、最短で卒業するための徹底したサポートが行われています。
公立の学費がどんなに安くても、卒業までに何年もかかっていては意味がありません。
毎年の学費が積み重なり、卒業できたときには私立と同じくらいの学費を払っていたいというケースも少なくないでしょう。
不登校児童に対するサポート体制
そもそも通信制高校に通う生徒は、何かしらの事情を抱えていることが多いです。
その多くが、中学時代の不登校や学業不振であり、同じような理由で全日制高校から転入・編入してくる生徒も少なくありません。
しかし公立通信制高校では教員数が限られており、きめ細かいフォローができていないのが現状です。
そんな中、私立通信制高校では専門家によるきめ細かいフォローや個別学習などを設け、生徒一人ひとりをサポートできる体制を整えています。
カウンセラーが常駐している学校もあり、精神的なフォローや友だち作りのサポートなど、自立に向けたフォローアップが徹底されているのが特徴です。
入学・編入・転入時期
全日制高校や定時制高校へ入学・編入できるのは、基本的に4月のみです。
しかし通信制高校では4月と10月の年2回の入学を受け入れており、学校によっては随時受け入れ可能なところもあります。
ちなみに「編入」と「転入」の違いですが、編入は「前の高校を中退したあと空白期間を経て再入学すること」を指します。
転入は「中退せずに在学中に転校すること」を指し、転入に関しては全日制や通信制高校を問わず、随時受け入れている学校がほとんどです。
私立通信制高校が多くの生徒に選ばれている理由
ここまでを読んで、公立と私立の大きな違いについての知識が深まったと思います。
公立は学費の安さが、私立は自由度の高さが魅力といっていいでしょう。
しかし実は、多くの生徒が私立通信制高校を選んでいることをご存知でしょうか?
本章では、学費が高い私立の方が人気の理由について解説したいと思います。
わずか30年で私立通信制高校の数は10倍に!
少子化の流れに伴い、日本の高校総数は減少傾向です。
とくに全日制・定時制の高校数は、ここ30年で600校ほども減少していました。
高校生の人数も減っているので、当然といえば当然のことです。
以下に、文部科学省のデータをもとに、高校数の変化をまとめました。
全日制・定時制 | 通信制 |
---|---|
公立 私立 合計 | |
平成2年 5,506 | 67 17 84 |
平成7年 5,501 | 68 25 93 |
平成12年 5,478 | 69 44 113 |
平成17年 5,418 | 76 99 175 |
平成22年 5,116 | 72 137 209 |
平成27年 4,939 | 77 160 237 |
令和2年 4,874 | 78 179 257 |
ご覧の通り、通信制高校の中でも私立だけが増え続けており、30年ほどで10倍に増えていることが分かります。
私立の通信制高校は生徒一人ひとりに対するサポートがきめ細やかで、いろんな悩みや要望に対応できるということで需要が高まっているようです。
また私立の場合、本校が自宅から遠くても、地方に分校を構えているケースが少なくありません。
「ときどきは登校したい」「高校で友だちを作りたい」と思っている人にとっては、無理なく通える距離に分校があるのも人気の秘訣と言えるでしょう。
サポート校による卒業サポートが手厚い
私立の通信制高校は、卒業率が高いことも人気の理由です。
そして、その卒業率の高さは、「サポート校」の存在も大きいと思われます。
サポート校とは、通信制高校に通う生徒が3年間で卒業できるよう、単位取得やメンタルサポートを行う民間の教育機関です。
言うなれば「学習塾」や「予備校」のような存在で、勉強はもちろんプライベートの相談にも応じてくれます。
サポート校は法的な学校ではないため、通信制高校と同時入学しなくては卒業資格を得ることはできません。
そのため、通信制高校とダブルで授業料がかかることになります。
サポート校の学費を合わせると年間100万円を超える学校もあるので、「3年間で卒業しよう」という意欲も高まるでしょう。
通信制高校のメリット、デメリットについて詳しく知りたい方は是非 「今知っておくべき!通信制高校の現実|8つのメリットとデメリット」を参考にしてみてください!
公立?私立?どっちの通信制高校がおすすめか
同じ通信制高校でも、公立と私立でまったく違うことが理解できたと思います。
どちらかの学校を選ぶとき、何を基準に決めたらいいのでしょうか?
学費の安さを重視するなら公立1択
公立通信制高校は、全日制の公立と比べても「学費の安さ」が突き抜けています。
「出来るだけお金をかけずに高卒の資格を取りたい」と考えるのであれば、公立の一択になるでしょう。
しかし卒業サポートは期待できないので、学習にストイックに取り組める意志が重要になってきます。
きめ細かいサポートを希望するなら絶対私立!
「不登校気味で決められた日に登校できるか不安」
「卒業までに社会性を身に付けたい」
「中学1年から学習をやり直したい」
このような要望がある場合は、きめ細やかなフォローが行き届いている私立通信制高校がベストです。
学校にカウンセラーや社会福祉士が常駐していることも多いので、親御さんも安心して通学させられるでしょう。
私立の学校は今も増え続けており、革新的な授業や学びを提供する高校も続々とでています。
最先端のオンライン授業を展開したり、バーチャル遠足やバーチャル英会話を楽しんだりと、全日制よりも充実した学習が受けられるのも魅力です。
私立の通信制高校の学費を抑える方法
「私立に通いたいけど学費が高い」と悩んでいませんか?
ここでは学費を重視している方に向けて、「学費を抑えて私立通信制高校に進学する方法」を解説していきます。
スクーリングが少ない学校・コースは学費が安い
自宅学習をメインにするか、通学をメインにするかで、私立通信制高校の学費は大きく変わります。
スクーリング回数を増やすと学習サポートが強化されるため、学費は必然的に高くなると覚えておきましょう。
通学回数ごとの、私立の年間学費の目安をご覧ください。(※当社調べ)
学習スタイル | 年間学費 |
---|---|
通信コース(自主学習型) | 約25万円~ |
週3日進学コース | 約45万円~ |
週5日進学コース | 約75万円~ |
通学回数によって、学費に3倍ほどの差額が生じています。
できるだけ学費を抑えるためには、通学回数を絞って自主学習に励むことが重要です。
国や自治体の制度を利用する
スクーリング回数を調整する以外にも、通信制高校の費用を抑える方法があります。
- 1.就学支援金
- 2.奨学金
- 3.特待生制度
では、3つの制度内容を詳しく解説します。
1. 就学支援金
令和2年4月から、私立の通信制高校でも「就学支援金制度」が利用できるようになりました。
就学支援金制度により、多くの世帯が「授業料が実質無償化」されています。
世帯年収ごとの就学支援金の支給額は、以下の通りです。
世帯年収 | 公立 | 私立 |
---|---|---|
590万円未満 | 336円/単位(授業料は実質無償化) | 最大12,030円/単位(授業料は実質無償化) |
590万円~910万円未満 | 336円/単位(授業料は実質無償化) | 4,812円/単位(負担分は自己負担) |
就学支援金制度は国が学費の一部を負担してくれる制度で、卒業しても返済の必要がありません。
ただし、以下に該当する方は利用できないので注意しましょう。
- 高校などを一度卒業した人
- 高校などに通算36ヶ月より多く在籍している人
また就学支援金は、入学金や教材費といった授業料以外の費用には利用できない決まりになっています。
2. 奨学金
奨学金制度とは、進学にお金が必要な学生に向けて、学費の付与や貸与を行う制度です。
就学支援金との併用が可能なので、経済的な余裕がない方でも私立の通信制高校に行ける可能性が高まるでしょう。
奨学金にもさまざまな種類があり、都道府県や地方自治体が実施している制度は無利息で借り入れられるものが多くなります。
- 生活福祉資金・・・低所得・障害者・介護を要する高齢者のいる世帯を対象にした制度
- 高校生等奨学給付金・・・授業料以外の教育費(教科書・教材費など)が受け取れ返済不要
- あしなが育英会・・・親を亡くしたり重度後遺障害で働けなかったりする家庭の子どもを支援
ご自身が利用できる制度がないか、お住まいの地域の奨学金について調べてみましょう。
3. 特待生制度
「特待生」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、特待生制度とは特定の分野で成績が優秀な生徒の学費を免除・減免する制度のことです。
通信制高校でも、スポーツ・芸術・学力などにおいて、特待生制度を設けている学校があります。
特待生に選ばれる基準は、入学試験の結果や内申書、学校に定められた審査に合格することです。
ただし特待生として入学したあと、1年間の成績や成果が思わしくなかった場合は、特待生制度から外されてしまう可能性もあるので注意しましょう。
自分の目的に合わせて公立or私立の通信制高校を選ぼう
通信制高校の私立と公立の違いについて、さまざまな角度から徹底比較しました。
学費だけをみれば公立1択ですが、大切なのは「卒業資格を得ること」、そして卒業したあとの「進路」です。
就職する、進学するなどの選択に対し、どのようなサポートをしてくれるかを考えたとき、自分に必要な教育機会を与えてくれるのはどんな高校かを考えてみましょう。
また学校生活が少しでも充実した時間になるよう、あなたが輝ける場所を入念に選ぶことも大切です。
どちらを選択するにしても、後悔のない高校生活が送れるよう前向きに行動してください。
通信制高校の後悔しない選び方について詳しく知りたい方は是非 「通信制高校の後悔しない探し方は?選ぶときのポイントを徹底解説」を参考にしてみてください!