実務者研修の資格は必要?資格取得のメリットについてご紹介 更新時間 2023.10.20
介護職の魅力を最大限に引き出し、プロとしての技術を磨くためには、介護福祉士実務者研修の資格取得が不可欠です。
この研修は、広範で多様な利用者に対する介護スキルや医療的ケアの知識を身につけるチャンスを提供しています。
介護福祉士の受験資格としてだけでなく、サービス提供責任者になるための資格要件としても注目されている実務者研修は、介護職においてキャリアを築くうえでの重要なステップです。
本記事では、介護職への転職や就職を考える方々、そしてキャリアアップを目指す方々に向けて、資格取得のメリットや概要、費用、カリキュラムなどを丁寧に解説していきます。
資格取得を通じて、あなたの介護スキルを飛躍的に向上させ、充実したキャリアを築く第一歩を踏み出してみませんか。
介護福祉士実務者研修ってどんな資格?
そもそも実務者研修とは、どのような資格なのでしょうか?
介護未経験の方、これから資格を取得しようと考えている方は、実務者研修について深く理解しましょう。
実務者研修について
介護福祉士実務者研修は、さまざまな介護サービス利用者に対する基本的な介護の知識や技術と、医療的ケアに関する知識・技能の習得を目的とした資格です。
かつてのホームヘルパー1級資格に相当していますが、その枠を超え、介護福祉士養成校の到達目標と同等の水準を有しています。
「介護のプロ」としてのキャリアを進むための、非常に重要な研修です。
さらに、この資格が生まれた背景には、「介護福祉士 資格取得方法の見直し」があります。
介護福祉士の資質向上を図るため、国家試験としての介護福祉士を受験するには、「実務経験3年以上」に加えて、「6カ月以上の実務者研修の受講と修了」が義務付けられました。
さらに、たん吸引や経管栄養の実務も、この実務者研修の中で学ぶことができます。
介護福祉士の受験資格である
かつての介護福祉士受験資格は、実務経験3年と介護福祉士実務者研修、または介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修の修了でした。
その後、基礎研修が廃止され、現在は実務者研修が必須条件です。
介護福祉士実務者研修修了者は、介護福祉士国家試験の実技試験が免除される特典もあります。
初任者研修の上位資格
介護職員初任者研修は、2013年に設立された介護の入門資格で、誰でも取得可能な公的資格です。
厚生労働省は、「介護業務に必要な最低限の知識・技術と考え方を身につけ、基本的な介護業務を遂行できるようになること」を目的としています。
実務者研修のカリキュラムには、初任者研修で学ぶ内容が含まれており、初任者研修の資格を取得していれば一部のカリキュラムを省略できます。
なお、介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の修了がなくても受講可能です。
初任者研修との主な違いは、以下の通りです。
初任者研修 | 実務者研修 | |
受講期間 | 130時間 | 450時間 |
研修科目 | 9科目 | 20科目 |
受講期間(目安) | 2カ月程度 | 6カ月程度 |
終了期間 | あり | なし |
喀痰吸引等研修 | 免除なし | 基本研修が免除される |
介護職の資格についてもっと幅広く知りたいという方は 「介護職のおすすめ資格は?種類や受講費用、期間などをご紹介」もチェックしてみてくださいね。
介護業界で働くには実務者研修資格が必要?
実務者研修資格の概要について説明しましたが、介護職員として働くには資格は必須なのでしょうか?
資格を持つ意味や実態について、詳しく解説していきます。
未経験・資格なしでも介護職員として働ける
介護職に就くためには、未経験や資格なしの方でも働けるケースがあります。
介護業界は需要が高まっており、人手不足は重要な社会問題です。
求職者に対する求人倍率も高く、積極的に雇用を進めている状態といえます。
資格がなくても採用されるケースはありますが、仕事にスムーズに慣れるためにも研修を受講しておくことがおすすめです。
実務者研修を受講することで、未経験者でも職場に馴染みやすくなります。
実務者研修の前に初任者研修を取るべき?
実務者研修を受講する際、まずは初任者研修を取得するべきかどうかは重要な選択です。
初任者研修は、基本的な介護スキルを学び、資格を取得するための初歩的なステップとなります。
しかし、初任者研修をスキップして実務者研修に進むことで、時間や費用を省くことが可能です。
介護スタッフとしての実務経験があり、基本的な介護の知識を身につけている方は、初任者研修を省いても問題ありません。
しかし、介護未経験でゼロから丁寧に指導を受けたい方は、初任者研修から受講することが望ましいでしょう。
選択肢を検討する際には、自身のキャリアプランや将来の目標を考慮し、最適な研修プログラムを選ぶことが重要です。
介護資格別の平均給与や資格手当
介護職にはさまざまな資格があり、それぞれの資格によって給与や手当が異なります。
厚生労働省の調査によると、介護職員の保有資格別の平均給与は以下のとおりでした。
資格取得を検討する際には、将来の収入面や職場での評価にも着目して選択すると良いでしょう。
実務者研修は未経験でも受けられるの?
結論からお伝えしますと、無資格・未経験でも実務者研修を受講することは可能です。
実務者研修は介護経験がない方はもちろんですが、学歴や年齢は一切不問で、誰でも受講が可能な資格です。
実務者研修は無資格の人でも受講できる!
介護福祉士実務者研修は、未経験者でも受講ができます。
厚生労働省が提示しているキャリアアップのルート上では、初任者研修の上位資格と位置付けられているのですが、初任者研修を修了していない方でも受講が認可されています。
受講料は10〜15万円が一般的
実務者研修を受講する際の一般的な受講料は、10万〜15万円程度必要になります。
ただし、他の介護資格を持っている場合に限り、研修時間や受講費用を抑えて資格を取得することができます。
スクールによっては、支払いの分割や助成金制度が用意されているパターンもありますので、サイトを使って確認してみると良いでしょう。
実務者研修は無資格だと6ヶ月以上かかる
無資格から実務者研修を受講する場合は、通常では6ヶ月以上の期間を要します。
働きながら受講する場合は、無理なく修了まで続けられるスケジュールを立てましょう。
スクールを選ぶ際には、振替制度があるか、通学しやすい場所や環境かなどを考慮したうえで選択することが大切です。
実務者研修と初任者研修はどちらを取るべきか
実務者研修は、初任者研修の上位資格として位置付けられています。
そのため、介護未経験や無資格の方は、どちらの資格にチャレンジすべきか悩む方も少なくはありません。
どちらの資格を選ぶかは、あなたの状況や経験によって異なります。
実務者研修と初任者研修の違いは?
どちらの資格を取得するか決める際には、実務者研修と初任者研修の違いがあるところからしっかりと認知していきましょう。
初任者研修は介護の初心者向けであり、基本的な介護スキルや知識を身につけることが一番の目的となっています。
一方で実務者研修は、初任者研修を修了していない人でも受講可能で、初任者研修よりも高度な介護スキルで知識を習得できるプログラムです。
この違いを理解した上で、自分自身がどちらの資格から取得すべきかを考えて決断しましょう。
初任者研修を取得すべき人
実務者研修は、介護関連の資格がない人や介護業界未経験の人でも受講することが可能です。
ただし、内容は初心者向けではなく、難易度が高いため充分な理解と注意が必要になります。
実務経験がない、もしくは浅い場合は、初任者研修を受講して基本的なスキルを身につけてから受講を検討すると良いでしょう。
実務者研修を取得すべき人
介護の実務経験がある方は、介護についての基礎知識やスキルもすでに備わっていると考えられます。
その場合は、わざわざ初心者向けの初任者研修を取得する必要はほとんどありません。
すでに3年以上の介護経験をお持ちであれば、介護福祉士の受験要件も満たしているのでそちらの受講を検討するのも良いかもしれません。
介護福祉士国家試験を最も早く受験したい場合は、実務者研修からスタートすることを検討しましょう。
実務者研修にかかる費用やカリキュラムについて
実務者研修にかかる費用や学習時間、カリキュラムについて詳しく解説します。
実務者研修の授業は450時間
実務者研修は、介護職に必要な実践的なスキルを身につけるための重要なプログラムです。
この研修の授業時間は通常450時間とされており、広範で実践的な内容がカリキュラムに組まれています。
実務者研修の受講科目と時間を一覧にまとめました。
領域 | 科目名 | 時間数 |
---|---|---|
人間と社会 | 人間の尊厳と自立 | 5時間 |
社会の理解Ⅰ | 5時間 | |
社会の理解Ⅱ | 30時間 | |
介護 | 介護の基本Ⅰ | 10時間 |
介護の基本Ⅱ | 20時間 | |
コミュニケーション技術 | 20時間 | |
生活支援技術Ⅰ | 20時間 | |
生活支援技術Ⅱ | 30時間 | |
介護過程Ⅰ | 20時間 | |
介護過程Ⅱ | 25時間 | |
介護過程Ⅲ | 45時間 | |
こころとからだのしくみ | 発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 |
発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 | |
認知症の理解Ⅰ | 10時間 | |
認知症の理解Ⅱ | 20時間 | |
障害の理解Ⅰ | 10時間 | |
障害の理解Ⅱ | 20時間 | |
こころとからだのしくみⅠ | 20時間 | |
こころとからだのしくみⅡ | 60時間 | |
医療的ケア | 医療的ケア | 50時間 |
合計 | 450時間 |
大きく4つの領域に分かれ、実践的な介護の知識やスキルを磨きます。
日常の介護業務に必要な知識や技術を効果的に習得できる構成です。
実務者研修の資格取得にかかる費用
無資格の状態から介護福祉士実務者研修を受講する場合、受講料は10万〜20万円ほどが目安です。
ただし、ハロートレーニング(職業訓練)や給付制度を利用すれば、全額もしくは一部の受講料が免除されます。
また勤務先によっては、費用の一部を企業が負担してくれる教育制度もあるので、どのような制度が利用できるか確認してみましょう。
受講料は金額も大きいため、支払い方法や分割払いの制度も利用して、無理なく受講することがおすすめです。
実務者研修の受験資格
介護福祉士実務者研修の受講要件はありません。
介護経験がなくても、誰でも受講可能です。
初任者研修の上位資格になるため、「初任者研修の資格がある人しか受講できない」と思われているかもしれませんが、無資格でも大丈夫です。
ただし、受講時間が450時間と長いため、「モチベーションの維持」と「無理のない学習計画」が不可欠でしょう。
介護資格があれば一部免除が可能
実務者研修の学習時間は450時間ですが、既に介護関連の資格を持っている方は、カリキュラムの一部を免除されることがあります。
免除可能なカリキュラムは資格により異なり、受講時間は以下のように削減されます。
受講時間に伴い必要な費用も変わってくるので、所持している資格と研修機関の方針を確認しておくと良いでしょう。
実務者研修の難易度や合格率
実務者研修のカリキュラムはどのくらい難しいのでしょうか?
難易度や合格率について詳しくみていきましょう。
実務者研修の難易度
介護福祉士実務者研修は、それほど難易度が高い内容ではありません。
多くの受講者が合格できる研修といえます。
明確な修了試験は設定されていませんが、各講義における課題や出席日数の不足が修了の妨げになることがあります。
授業の都合で欠席や課題の不備があった場合は、振り替えや補習を受講して不足がないようにしましょう。
自分のペースで研修修了を目指す際には、受講先の方針を確認し活用することが大切です。
実務者研修の合格率
実務者研修の修了試験合格率は、受講するスクールによって異なります。
実際、実務者研修のゴールは、全てのカリキュラムを修了することです。
修了試験の実施は義務ではなく、スクールごとにその有無や難易度が異なります。
注目すべき点として、実務者研修の合格率はほぼ100%の近いと言われています。
その理由として、各スクールでは追試などの救済措置が用意されているためです。
ただし、救済措置があるとしても、必要な受講や課題提出が不足すれば当然不合格となります。
将来のためにしっかりと準備を整えて臨みましょう。
初任者研修についてもっと知りたい方は 「初任者研修のカリキュラムは?通信と通学の違いを徹底解説」を参考にしてみてください!
実務者研修の資格を取得する4つのメリット
資格を取るには、時間や費用もかかり、プライベートの時間を避けなくてはいけません。
そのため、「わざわざ大変な思いをして資格を取る必要があるのか?」と考える人もいるでしょう。
そんな方に向けて、実務者研修の取得で得られる4つのメリットを紹介したいと思います。
仕事の幅や選択肢が広がる
実務者研修の資格取得は、介護職での仕事の幅や選択肢を大きく広げる重要なステップです。
修了することで、より幅広い利用者に対応できるスキルが身につきます。
さまざまな介護施設や事業所でのキャリアパスが開け、自分のスキルや興味に合った仕事を選ぶことができます。
サービス提供責任者になる際に有利
サービス提供責任者は、訪問介護事業所のリーダー的な役割です。
ケアマネジャーと協力し、計画作成・ヘルパーの指導・管理などを担当します。
訪問介護事業所では、サービス提供責任者の配置が法的に必須です。
サービス提供責任者になるためには、介護福祉士、介護福祉士実務者研修、旧ホームヘルパー1級のいずれかの資格が必要です。
以前は、初任者研修修了者で3年以上の介護業務実績がある者も含まれていましたが、2018年の制度改正によりその要件から除外されました。
つまり、実務者研修を修了することで、マネジメント業務にも携われる重要なポジションに就くことができるという訳です。
給与や待遇面で優遇される
実務者研修の資格を持つことは、給与や待遇面での優遇を受ける可能性が高まります。
資格取得によって、自身のスキルや専門知識が認められ、給与アップやキャリアアップの機会が増えるでしょう。
これにより、より充実した働き方や豊かな生活が期待できます。
たん吸引・経管栄養の知識を学べる
実務者研修では、たん吸引や経管栄養などの特定のケア技術や知識を深める機会があります。
これによって、高度な医療的ケアに対応できるスキルが身につきます。
将来的には、より専門的な分野での活躍が期待できるでしょう。
他にも役立つ資格が多くあり「介護資格の種類はどのくらいあるの?スキルアップに取るべき資格を徹底解説!」から詳しく見ることができます。参考にしてみてくださいね。
介護職の給与アップの条件について
介護職員処遇改善加算を算定している事業所は就業規則等のキャリアパス要件で定められています。
実務者研修の取得や介護福祉士の資格取得をキャリアパス要件に組み込んでいる事業所は多く設置されており、そのような事業所では実務者研修の取得や介護福祉士の資格取得がキャリアアップ及びキャリアアップに伴う給与アップに繋がります。
資格手当5h>
実務者研修の取得や介護福祉士の資格取得を条件に資格手当の支給を実施する事業所も数多くそんざいしております。
役職に就く5h>
介護事業所では介護主任等の役職を定められている場合、役職に就くことで給料が上がります。
勤続年数5h>
勤続年数による昇給制度を導入している事業所では、勤続年数に応じて昇給する仕組みが整っているため、長く務めることで給与アップに繋がります。
介護職でキャリアアップを目指すなら実務者研修の資格を取ろう!
実務者研修の資格取得は、介護職でのキャリアアップに不可欠です。
この研修を修了することで、仕事の幅や選択肢が広がり、さまざまな介護施設でのキャリアパスが開けます。
将来的にサービス提供責任者としてリーダーシップを発揮したり、給与や待遇面で優遇される可能性も高まりでしょう。
また、実務者研修ではたん吸引や経管栄養などの専門的な知識や技術を学ぶことができ、高度な医療的ケアにも対応できるようになります。
この資格を取得することで、介護のプロフェッショナルとしてのスキルが向上し、より充実した働き方やキャリアを築くことができるでしょう。
介護職での成長とステップアップを目指すなら、実務者研修の資格取得は最良の選択と言えます。
将来への投資として、しっかりとスキルを身につけて、キャリアをより一層充実させていきましょう。