宅建士はどんな職業?資格の基本情報と独占業務について詳しく解説! 更新時間 2023.11.10
宅建士は不動産取引において重要な役割を果たす国家資格保有者であり、独占業務を行う専門家です。
資格試験の受験者は毎年20万人前後を誇ることから、その人気ぶりが伺えます。
しかし、宅建士の具体的な仕事内容や資格について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、資格取得から独占業務の内容、さらには他の職業との関連やキャリア展望まで、幅広く紹介します。
宅建士資格が持つメリットや活躍の場についても詳しく掘り下げていますので、宅建士を目指す方や興味がある方はぜひ読んでみてください。
宅建士(宅地建物取引士)とは?
宅建士の正確な名称は「宅地建物取引士」で、不動産取引に関する専門家です。
ここでは、宅建士の資格や不動産鑑定士との違いについて紹介します。
宅建士の定義
宅建士とは、「宅地建物取引業法」に基づき、試験に合格し都道府県知事の資格登録を受け、宅地建物取引士証を交付された者のことを指します。
不動産取引において契約の仲介や相談、法的なアドバイスなどを行う専門家であり、不動産業界の法令や倫理規定を遵守して業務を行います。
不動産取引を専門とする国家資格
宅地建物取引士は、国土交通省の規定に基づき、事務所や業務内容に応じて専任の宅建士を配置する必要があります。
彼らは宅建業法第35条で定められる重要事項の説明や重要事項説明書への記名、また契約書等への記名など、不動産取引における重要な業務を専門的に行います。
これにより、不動産取引の安全性や適正な取引が守られることに役立っています。
不動産鑑定士との違い
宅建士と不動産鑑定士は、どちらも不動産業界における専門家ですが、役割や資格の内容に違いがあります。
宅地建物取引士と不動産鑑定士の最大の違いは、「独占業務」の内容です。
独占業務とは、資格を持たない者が行うことが禁じられている業務のことを指します。
不動産鑑定士は、不動産の適正な価格を鑑定評価する資格を持っているのが特徴です。
国や自治体、裁判所、銀行、個人などから依頼を受け、不動産の価値を評価する業務を独占して行います。
一方、宅地建物取引士は不動産の売買・賃貸借契約などの取引において「重要事項の説明」「説明書面への記名・押印」「契約書への記名・押印」を独占して行うのが特徴です。
このように、不動産鑑定士は主に価値評価に関する業務を担当し、宅地建物取引士は不動産取引における契約関連の業務を担当する点が異なる点です。
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宅建士だけができる独占業務
宅建士の独占業務について、詳しい業務内容を解説します。
①契約締結前に行う重要事項の説明
宅建士が行う独占業務の一つに、契約締結前に行う重要事項の説明があります。
ここでいう重要事項とは、不動産取引において契約者にとって重要な情報や条件のことです。
具体的には、不動産の所有者情報、広さや設備、権利関係の公示、取引条件の詳細、手付金やローン条件、そしてキャンセル時の対応などが含まれます。
②要事項説明書面(35条書面)への記名
重要事項を説明した後、宅建士は別途作成された要事項説明書面、通称「35条書面」に記名し、押印する義務があります。
この35条書面は、説明内容を記載しており、契約者に説明を行った責任を示す重要な書類です。
記名と押印をすることで、宅建士が説明を行った事実を証明することができます。
③契約内容を記した書面(37条書面)への記名
最後に、契約内容を記した書面である「37条書面」への記名と押印も、宅建士の独占業務の一部です。
この書面は、契約に関する重要事項や条件を記載し、契約締結時に必要な書類です。
不動産取引において契約書への記名と押印は、宅建士だけが行うことができます。
これにより、取引に関するトラブルを未然に防ぎ、適切な契約の締結をサポートする役割を果たします。
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宅建士になるには?
宅建士は、資格試験に合格するだけでなれる訳ではありません。
ここでは、宅建士になるステップについて1から詳しく解説します。
宅建試験に合格する
宅建士になるためにはまず、宅建試験に合格することが必須です。
宅建試験は、不動産取引や法律に関する知識を試す国家試験であり、合格することで次のステップに進めます。
都道府県知事による資格登録
宅建試験に合格した後は、各都道府県の知事による資格登録が必要です。
資格登録には、以下の3つの要件を満たしている必要があります。
①宅建試験に合格する
②過去10年以内に、宅地又は建物の取引に関し実務経験が2年以上あるか、もしくは国が実施する登録実務講習を修了すること
③欠格事由に該当していないこと
②の項目に関しては、2年以上の実務経験がない場合は、国が実施する「登録実務講習」を受講し修了する必要があります。
「2年以上の実務経験を有する者と同等以上の能力を有する者」と認められ、ようやく宅建士として登録することが可能です。
登録実務講習はTACやLEC、日建学院といった、国土交通大臣の登録を受けた機関で受講できます。
通信講座の教材を利用して、1ヶ月ほどの自己学習に取り組み、2日間のスクーリング(講師による講義)を経て、2日目に実施される修了試験で80%以上の正解率を達することで合格となります。
また、③項目目に関しては、以下に該当していないことが登録の条件です。
上記は概要のみ記載していますので、詳細は「宅地建物取引業法第18条」で確認しましょう。
3つの要件を満たしたら、合格証明書や必要書類を提出し、登録手続きを行う必要があります。
都道府県知事の資格登録を受けることで、正式に宅建士として活動することができます。
宅建士証の交付
最後に、都道府県知事から宅建士証が交付されます。
この宅建士証は、宅建士としての資格を証明する重要な書類であり、不動産取引業務を行う際には必ず提示する必要があります。
宅建士証を受け取ることで、正式に宅建士としての活動を開始することができます。
宅地建物取引士資格試験(宅建試験)の概要
続いて、宅建試験の難易度、合格率といった情報を紹介します。
宅建試験の受験資格
宅建試験に特別な受験資格はなく、年齢、学歴などを問わず誰でも受験することが可能です。
もちろん実務経験も不要で、不動産業界へのキャリア形成を目指す方や関心を持つ方が受験対象となります。
宅建試験の難易度・合格率
宅建試験は非常に高い難易度を持ち、合格率も比較的低い傾向にあります。
不動産適正取引推進機構が公開したデータによれば、2023年度の合格率は17.2%でした。
試験の構成は、「宅建業法」が20問、「民法等の科目」が14問、「法令上の制限」が8問、「その他関連知識」が8問の計50問で構成されています。
合格点は設定されておらず、毎年の合格基準点によって合格者が決まるのが試験の特徴です。
昨年の合格率も17%ということから、宅建試験は高いハードルを持つ資格試験であると言えるでしょう。
宅建士の資格を持つ5つのメリット
宅建士は難関な国家資格であることから、勉強なしでチャレンジできるような試験ではないことが理解できたかと思います。
その上で、宅建士の資格を持つことには、どんなメリットがあるのか解説してきましょう。
独占業務がある
宅建士の資格を持つ最大のメリットは、独占業務を行えることです。
重要事項の説明や契約書の記名・押印など、不動産取引における特定の業務を宅建士だけが担当することができます。
これは信頼性や専門性を高める一方で、キャリアの幅も広げることができます。
就職や転職で活かせる
宅建士の資格があることで、就職や転職で非常に有利になります。
求人サイトなどを参考にすると分かりますが、宅建士の資格取得者を優遇する企業は少なくありません。
資格を持つことで、選考において他者に大きな差をつけることができるでしょう。
さまざまな業界で活躍できる
宅建士の資格は、不動産業界だけで活かせる訳ではありません。
例えば、金融機関や保険会社、建設会社などでも、不動産に関連する業務に従事する際に、宅建士の知識とスキルは重宝されます。
「宅地建物取引士証」は5年ごとの更新が必要ですが、宅建士の資格登録は一生ものです。
簡単な資格試験ではないため、あなたが努力できるタイプであること、勤勉であることなどを選考でアピールする材料にもなり得るでしょう。
ダブルライセンスで仕事の幅が広がる
宅建士資格を持つことは、他の資格とのダブルライセンスを取得する可能性を秘めています。
例えば、不動産鑑定士や不動産投資アドバイザー、ファイナンシャルプランナーなどの関連する資格を取得することで、さらに幅広い不動産業務に携わることができます。
ダブルライセンスやトリプルライセンスを持つことで、仕事の選択肢やキャリアの可能性が広がることはもちろん、年収アップも見込めるでしょう。
性別や年齢を問わず長く働ける
宅建士資格を持つことで、性別や年齢に関係なく長く働くことができるメリットがあります。
とくに女性から人気の資格であり、他の職種と比較して、女性の宅建士は勤続年数が3.6年長い傾向があるようです。
事務職として働いたり、パートやアルバイトで働いたりと、ライフステージに合った働き方ができます。
長期的なキャリアプランを考える上で、宅建士資格は有利な要素となるでしょう。
転職で資格をとりたい方は「転職で役に立つおすすめ資格!理由や難易度を徹底解説!」から詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください
宅建士資格が活かせる職場は不動産業界だけじゃない!
宅建士は、不動産取引において重要な役割を果たす専門家です。
契約締結や重要事項の説明など、不動産取引における専門知識を活かし、信頼性の高いプロフェッショナルとしての地位を築いています。
宅建士という職業は、性別や年齢に関係なく長期的に活躍できる点も魅力です。
不動産業界以外でも幅広く活かせる価値ある資格であり、さまざまな職場で宅建士としての専門知識を活用し、キャリアを築いていくことができます。
また、ダブルライセンス取得や他業種での活躍が可能なため、キャリアの選択肢が広がるのも魅力の1つでしょう。
宅建士は一生物の資格です。
安定した職業や収入を手に入れたい方、どんな場所でも活躍できる強みを持ちたい方は、ぜひ宅建士の資格取得にチャレンジしてみてください。